日本IVR学会第12回夏季学術セミナー参加報告

2014.09.02

2014年8月9、10日に神奈川県中井町のテルモメディカルプラネックスで開催された日本IVR学会第12回夏季学術セミナーを、 東京都立墨東病院診療放射線科高橋正道先生にご執筆頂きました!

日本IVR学会第12回夏季学術セミナー参加報告
東京都立墨東病院診療放射線科
高橋正道

 2014年8月9、10日に日本IVR学会第12回夏季学術セミナーが開催された。神奈川県中井町のテルモメディカルプラネックスにおいて毎夏開催されている日本IVR学会主催のセミナーである。私は3年前に初めて参加する機会を得て、講師の方々の洗練された手技と受講者の方々のIVRに対する熱意に大いに感化された。受講を申請してもしばしば選に漏れることがあるという触れ込みにも納得であったが、幸運なことに昨年も連続して受講することができた。そして、今年のテーマは“Beads & PTA”であった。
 既に報じられている通り、今年1月に血管塞栓用ビーズが保険適用となり、切除不能・局所療法適応外の肝細胞癌に対する新たな治療選択肢が増えた。進行肝細胞癌の治療はIVRを行う放射線科医にとって重要なテーマであるから、私も薬剤溶出性ビーズを用いたTACE(DEB-TACE)は押さえておかなければいけない手技であると思ってはいたものの、実際に施行することには二の足を踏んでいた。率直に言ってよく分からない点が多かったからである。具体的には①ビーズのサイズの使い分け、②含浸させる抗癌剤の量、③実際の注入法、④塞栓のエンドポイント、さらには⑤治療後の肝機能の変化や塞栓後症候群の程度は従来型TACE(Lip-TACE)と比較してどうなのか、⑥永久塞栓物質を繰り返し肝動脈に注入しても血管荒廃などの問題は生じないのか、そもそもこれまでに経験の積み重ねがあるLip-TACEよりも⑦DEB-TACEの方が推奨されるのはどのような症例なのか、といったことが理解できていなかった。今回のセミナーは第一人者の講義を聴き、手技を見て、実際にやってみることでこれらの疑問点を解消するいい機会であると思った。
 もうひとつのテーマであるPTAは、もともと個人的に経験が少ない分野であったが、最近はEVARに関連してステントを扱う機会が少しずつ増えてきた。正確な知識の裏付けなしに何となくやってきた手技を、基本から見直して修正するいい機会であると思った。
 いい機会が2つ同時にやってきた、ということで今年も受講の申し込みをしたところ、幸運にも参加資格が得られ、こちらは幸運かどうか分からないが参加報告を書くというお役目までいただいた。これからセミナーの内容を振り返ってみたいと思う。

ビーズ(カテーテル室) 講師:髙橋正秀先生
・腎動脈に対するTAE
・Visible HepaSphere

 ディーシービーズ(300〜500μm粒)を用いてブタ腎動脈のTAEを行った。ビーズを使用する際のpitfallとして、塞栓物質同士が凝集することによっておこる近位塞栓がある。髙橋先生は、凝集を防ぐためには粒子間距離を保つこと、すなわちビーズを希釈して使用することが最も重要と強調されており、塞栓開始時には100倍希釈(10倍懸濁液2mL+造影剤18mL)のものから注入を始め、段階的に濃度の濃いものを使用していくとのことだった。

 Visible HepaSphereとは初めて聞く用語であったが、ヘパスフィアに高濃度のヨード造影剤を吸収させることによってビーズ自体を透視下で視認可能にしたもので、ビーズ逸脱の有無を確認する目的でAVMないしシャントを有する腫瘍を塞栓する際に使用するとのこと。選択したビーズのサイズが適切な場合、塞栓対象にビーズがスタックするのが視認でき、選択したビーズがシャント血管より小さすぎる場合には、シャントをすり抜けて静脈側へ飛んでいくビーズが確認される。その時はそれよりも径の大きなビーズに変更するか、コイルなど他の塞栓物質の使用を考慮することになる。実習では少量のVisible HepaSphereをDSA下にブタ上腸間膜動脈に注入したところ、ビーズが動脈末梢へと飛散し、同径の血管に達したところで停止する様子が視認できた。ビーズを扱い慣れていない私にとってAVMの塞栓にビーズを使用することはハードルが高いと感じるが、知っておくといつか役立つ時が来るかもしれないと思った。

ビーズ(実験室) 講師:関 明彦先生
・ビーズの取り扱い:ビーズに対する薬剤含浸法、希釈法の習得
・血管モデルを用いた注入練習:製剤毎の動態の違いを確認

 ここでは関先生が実際に行っているビーズ調整法を教えていただいた。ヘパスフィアは乾燥ビーズであり、膨潤させる液体により粒子径が変化する。乾燥時と比較してイオン性造影剤では2倍に、生食では4倍に、非イオン性造影剤では6倍の径に膨張する。過度に膨脹したビーズは硬度が低下し、再分布現象が頻繁に起こることによって塞栓のエンドポイントが見極めにくくなるため、関先生は50〜100μmのヘパスフィアを10%NaClと非イオン性造影剤の1:4混合液にて2.5倍に膨張させたものを使用しているとのことだった。
血管モデルへのビーズ注入では、時間当たりのビーズ注入量が多すぎると直ちに集塊となって近位塞栓を来すこと、そこから圧入してもいったんスタックしたビーズを押し込むことは難しいことが確認できた。濃度の高い10倍希釈液では、今回使用した血管モデルの流速においてはどれだけ緩徐に注入しても凝集による近位塞栓が避けられなかったが、40〜100倍に希釈したものでは凝集は起こりにくかった。添付文書上は推奨されていない、1.7Fr(最小内径0.017inch・430μm)のマイクロカテーテルを使用してディーシービーズ(300〜500μm)・ヘパスフィア(50〜100μm×2.5)を注入してみたが、40倍以上に希釈したものでは抵抗なく注入可能であった。

続きは「RadFan」10月号(2014年9月末日発売)にてご高覧ください。