ASTRO2012見聞記

2012.12.03

2012年10月28~31日、ボストンで開催されたASTRO2012の参加報告を、唐澤久美子先生にご執筆いただきました!
ASTRO2012見聞記
放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院 治療課
唐澤久美子

図1 アキュレイのブースでのサイバーナイフの新型発表
図2 ビューレイのブースでのワシントン大学Sasa Mutic先生
はじめに
 2012年10月28〜31日まで、マサチューセッツ州ボストンのBoston Convention Centerで開催された第54回米国放射線腫瘍学会(ASTRO)に参加した。
 ボストンでのASTROは2008年9月にも開催されている。そのときの状況を思い出し、天候に翻弄されながらも4年間での自分や社会、放射線治療の環境の様々な変化を感じた参加であった。
 出発前から、ハリケーンが来て雨になるらしいとの予報は見ていた。しかし、今回こそはBoston Duck Tours(ボストン出身のJeff先生のお勧めの水陸両用バスのツアー)に行きたいなどと甘く見ていた。JALの直航便のお陰で昼に到着した土曜日は晴れて穏やかであった。ところが、日曜には雨が始まって風も吹いてきた。数日後に数百万戸の停電や地下鉄の冠水でニューヨークの都市機能を麻痺させ、ニューヨークとニュージャージー州で数万人以上が家を失うなど総額数百億ドルの被害を出す、スーパーハリケーンサンディの襲来であった。
 日曜の朝は6:30からInternational Attendee Welcome Breakfastに参加するため、地下鉄とバスでまだ真っ暗な中を会場に向かった。地下鉄と思って改札を入ったシルバーラインが地下鉄でなく、地下のトンネルを走るバスであったことが驚きで、なぜかトトロの猫バスを思い出して嬉しくなった。朝食会はさながら日本からの参加者の情報交換会のようで、日頃見知った顔に混じりボスに連れられた若い先生も多く、日本からの参加者数は今年益々増加したようであった。日本からの演題数も増加しており、名古屋市立大学からは19演題が採択されたと聞き驚いた。採択演題数が全体として多かったことを考えても凄い数である。日本からの口演発表は、昨年は全体で2演題であったが、今年は14演題で、放医研からは2演題が選ばれた。世界における日本放射線腫瘍界の質の向上と勢力拡大を感じた。
 
Presidential Symposium~放射線腫瘍学のInnovationについて~
 Presidential Symposium は放射線腫瘍学のInnovationに関してであった。10年くらい以前までは、日曜はみんなでPresidential Symposiumに参加するのがお決まりのようになっていたが、ここ数年の参加者はそうでもないようである。放射線治療がより高度化・専門化して、参加者共通の興味を引き出す題目の決定が難しく、話題が今ひとつ魅力的に感じられないこともあるかもしれない。特に今回のような大きなテーマは演者を誰にするかによりに、内容がかなり左右される。私の個人的感想としては、今年は聴講して特に印象に残ったことがなかった。
 
機器展示会場の印象
 午前中から展示会場に行ったところ、アキュレイの方からサイバーナイフとトモセラピーの新型のお披露目があるのでぜひお越し下さいと声をかけていただいた。サイバーナイフがMLC搭載になったことは画期的で、スループットの向上に寄与するであろう(図1)。各社共に機器の更新やバージョンアップを発表しており、進化がまだまだ続く勢いであるのは楽しみである。数年前のASTROから「間もなく臨床開始」と言われていた超伝導のシンクロトロンによる小型陽子線治療装置 Mevion Medical Systemsのワシントン大学の1号機はまだ稼働していなかった。MRIガイドの治療装置であるViewRay Systemはだいぶ製品らしくなっていたが、ここでもワシントン大学が臨床開始に深く関与しており、Sasa Mutic先生がブースで講演していた(図2)。Eric Klein先生はASTRO Fellowにも選ばれ、医学物理の老舗大学の強さを感じた。

続きは「Rad Fan」1月号(2012年12月28日発売)にてご高覧ください。