FNCA放射線治療プロジェクトについて

2012.02.06

FNCA放射線治療プロジェクトについて

放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院
唐澤久美子

2011年度WS集合写真
 皆様は、FNCAをご存知だろうか。おそらくあまり知られておらず、私も放射線医学総合研究所(以下、放医研)に異動することになってはじめて知った。これは文部科学省が主体となり放医研と原子力安全研究協会が協力して行っている国際協力の取り組みであり、日本が放射線治療の領域でこのような国際協力事業を行っていることを皆様に知っていただきたくご紹介する。
 Forum for Nuclear Cooperation in Asia(アジア原子力協力フォーラム http://www.fnca.mext.go.jp/index.html)とは、近隣アジア諸国との原子力分野の協力を効率的かつ効果的に推進する目的で日本が主導する原子力平和利用協力の枠組みである。現在、日本を含む核不拡散条約(NPT)加盟の12カ国、オーストラリア、バングラデシュ、中国、インドネシア、カザフスタン、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、タイ、ベトナムが参加し、放射線利用開発(産業利用・環境利用、医学利用)、研究炉利用開発、原子力安全強化、原子力基盤強化の4分野で協力活動を行っている。
 その歴史は、1990年3月の「第1回アジア地域原子力協力国際会議(ICNCA)」にはじまる。これは、地域間協力の進め方について原子力開発利用を担当する大臣クラスが意見を交換する会合であったが、1999年3月に開催された第10回会議で、効果的かつ組織的な協力活動のために新たな枠組みである「アジア原子力協力フォーラム FNCA」への移行が合意され、コーディネーター、プロジェクト・リーダーによる体制が発足した。現在、放射線育種、バイオ肥料、電子加速器利用、放射線治療、研究炉ネットワーク、中性子放射化分析、原子力安全マネジメントシステム、放射線安全・廃棄物管理、人材養成、核セキュリィ・保障措置の10プロジェクトが活動しているが、ここではその中で放射線治療のプロジェクトについて紹介する。
 「放射線治療プロジェクト」は、ICNCA 時代の1993年から放医研の辻井博彦先生をプロジェクトリーダーとして活動を開始、かつて放医研に在籍していた中野隆史先生、加藤真吾先生、大野達也先生などをコアとして活発な活動を継続して各国から大きな評価を得ている。その目的は、放射線療法および化学放射線療法に関する国際的な多施設共同臨床試験を行いその治療成績を評価してアジア地域に適した標準的な治療方法を確立すること、そしてこれらの疾患に対する放射線治療技術および治療成績の向上を図ることである。そのために以下の活動を行っている。

・放射線腫瘍学ワークショップ
・多施設共同臨床試験
・現地放射線治療施設の視察と指導
・放射線治療の物理学的品質保証/品質管理(QA/QC)
・公開講座
・出版、広報、その他

※続きは「RadFan3月号」(2012年2月下旬発売)にてご高覧ください。