ビードットメディカル、第2回メディアラウンドテーブル「誰でも陽子線治療を受けられる社会をどう実現するか」を開催。陽子線治療の現状と今後について語る。

2022.10.24

 株式会社ビードットメディカル(本社:東京都江戸川区、代表取締役社長:古川卓司)は東京都中央区日本橋ライフサイエンスハブにて10月19日、がん患者・医師・陽子線治療装置メーカーの3者を交えたラウンドテーブル、「誰でも陽子線治療を受けられる社会をどう実現するか」を実施した。

 初めに藤 浩氏(国立成育医療研究センター 放射線診療部 放射線治療科 診療部長)は、小児がんの放射線治療による大きな副作用である二次がんと、その二次がんを回避する放射線治療法である陽子線治療について、標的外臓器の被ばくを抑えるその有用性や、国内においてなかなか普及していない現状にについて語った。

   藤 浩氏(国立成育医療研究センター 放射線診療部 放射線治療科 診療部長)

 「東京都に陽子線治療装置を」のネット署名で活動されている江田麗奈氏(桐ヶ丘地区自治会連合 副会長)は、11人のお子様の6番目のお子様が小児がん(神経芽腫)に罹患し闘病中。また、ジャーナリストの金田信一郎氏も、ご自身ががんに罹患し闘病を経験。お二人は闘病のストーリーラインと共に、現状の国内での陽子線治療設備のある病院の少なさやそれによる医師の理解不足、正確な情報収集の困難さなど、「陽子線治療の選びにくさ」について訴え、有効である陽子線治療法が普及しない問題を訴えた。

           江田麗奈氏(桐ヶ丘地区自治会連合 副会長)
                金田信一郎氏

 続いて古川卓司氏(ビードットメディカル代表取締役社長)は「陽子線治療を受けられる社会実現への取り組み」について一番のボトルネックとなっている、大きすぎて導入に多額のコストがかかる陽子線治療装置の小型化の研究開発、メディア露出などの広報活動というビードットメディカルの取り組みについて話した。

         古川卓司氏(ビードットメディカル代表取締役社長)

 従来の陽子線治療装置は、高さだけでも12mと非常に巨大なため導入には建物から専用に建て替える必要があり、50~100億円を超える初期投資がかかっているという。この金銭的・立地的な条件がボトルネックとなり、現在の日本において陽子線治療装置が普及していないというのが現状だ。しかし、古川氏率いる同社により研究・開発された治療装置は高さが4m程度と、現在日本で放射線治療装置として普及しているX線装置との置き換えが視野に入る段階までの小型化を達成し、初期投資の想定が25億円程度まで低減した。

 また、政治的にも陽子線治療の導入を促す動きもある。医療保険適用の制度が変わり、8つの疾患における陽子線治療が保険適用となったことにより、患者としても治療の選択肢に入り、病院としても導入の価値が増した。世界的にもニーズが高まりつつあり、日本の輸出産業となる可能性についても期待されている。

 現在、ビードットメディカル開発の超小型陽子線治療装置は認可待ちの状態。正式に認可が下りるのは年度末と予想され、実際に導入・稼働するには2年程かかる見込みである。日本のがん治療の発展や医療ネットワークの充実のため、そして今現在・もしくはこれからがんと闘病する患者のためにも、認可・導入・稼働が待たれる。