GE ヘルスケア、プリズマティック・センサー社の株式取得によりフォトンカウンティング CT の技術革新を目指す

2020.12.04

 GE ヘルスケア(以下、GE)は最先端 CT 技術における独自の取り組みへの投資として、フォトンカウンティング CT(以下、 PCCT)のディープシリコン検出器技術におけるリーディングカンパニーであるプリズマティック・センサー社の全株式を取得する。
 2020 年 11 月 20 日―GEは、フォトンカウンティング検出器を専門とするスウェーデンのスタートアップ企業であるプリズマティック・センサー社の買収を発表した。このテクノロジーには、腫瘍学、心臓病学、神経学、ならびに他の多くの臨床用 CT アプリケーションにおける臨床成績が大幅に向上される可能性が見込まれている。
 PCCT は臓器構造の精密な視覚化、組織の特性評価の向上、より正確な物質密度測定(または定量化)とともに、より低線量での撮影など、従来の CT の臨床能力をさらに増強させることが期待されている。プリズマティック・センサー社は、ディープシリコン、及びエッジオンテクノロジーにより、多くの技術的課題を克服していて、またそれらの特許を取得している。これにより、検出器は非常に高いエネルギーのフォトンを吸収するのに十分な構造を以て CT の数億のエネルギーフォトンを吸収し、それを瞬時に検出し定量化することが可能になった。 同社はスウェーデン・ストックホルムにある KTH 王立工科大学のスピンオフとして 2012 年に設立された。
 GE社長兼 CEO のキーラン・マーフィーは、次のように述べている。「この技術によって、CT の画像診断における大きな前進が見込まれ、世界中の何百万人もの患者さんに恩恵をもたらすことができると確信しています。X 線機器にはじまり PCCT に至るまで、GE ヘルスケアはプレシジョン・ヘルスの実現化を目指し、生活の向上にむけて次世代技術のパイオニアとして全力で取り組んでいます。このディープシリコンによる最先端のアプローチと、その臨床における可能性に大いに期待しています」。
 また、プリズマティック・センサー社の CEO であるマッツ・ダニエルソン博士は、次のように語った。「私たちは研究によって、ディープシリコン検出器が PCCT にとって臨床的要件を満たす最適なソリューションであることを見出しました。カドミウムベースをはじめとした他の素材は、CT のX線検出器素材としての制約がありますが、シリコンは最も純粋な素材であり、シリコンベースの検出器はカウント率や空間分解能を犠牲にすることなく、優れたスペクトル分解能を可能にします。GEとのコラボレーションは非常に生産的であり、一緒に作業することで 急速な進歩を遂げてきました。ディープシリコン検出器を備えた PCCT を市場に投入するといった次の段階に向けて、1つのチームとして一丸となって取り組むことを楽しみにしています」。
 50 余年もの間、CT は癌や心臓の状態をはじめ、その他大小の疾患を検出するために臨床医に欠かせない画像診断ツールであることが実証されている。CT の臨床有用性と診断能力は、ボリューム撮影や、より早い回転速度、逐次近似画像再構成法や AI ベースの画像再構成、デュアルエネルギー、そして線量低減などの技術とともに急速増強されてきた。昨年米国では、推定 9,140 万回の CT 撮像が行われ、過去最高を記録している。今回の CT におけるイノベーションへの取り組みにより、PCCT テクノロジーは、今後幾年にもわたり、次世代型 CT として新しい性能基準を塗り替えるものになるとされている。
 スタンフォード大学名誉教授であるノーバート・ペルク放射線科医師は次のように述べている。「CT ならびに X 線画像診断がフォトンカウンティング検出器から、大いに恩恵を受ける可能性は、何十年も前から予見されていました。課題は、優れたエネルギー分解能を提供し、空間分解能を維持または向上させながらも、高出力 X 線管からの膨大なフォトンを処理することが可能な検出器の開発です。もちろん検出器は妥当なコストを保ちなが らの製造が可能でなければなりませんでした。プリズマティック・センサー社の科学者やエンジニアは、これらを達成しました。フォトンカウンティング検出器は CT 分野にとって大きな影響がもたらされると私は考えます。特に低線量での検査や組織性状評価、物質弁別などが一例としてあげられます。CTでは空間分解能が大幅に改善される度に、その実用性が向上してきました。このディープシリコン検出器の高い空間分解能が得られる時、このよ うな高次レベルでの前進の可能性はここ何十年もなく、これはとても素晴らしいことです」。
 GE の研究者は、1993 年に PCCT の研究を開始し、2006 年にカドミウムベースの検出器を使用した世界初の PCCT プロトタイプを発表している。この技術を基に GE は 10 年間、核医学における技術の業界リーダーであり、臨床医と患者さんに優れたアウトカムをもたらしてきた。この度、GE はディープシリコン検出器を使用し、従来の CT よりはるかに高いカウントレートの要求に対応する PCCT のためのより良いソリューションを特定し、それによって臨床医に多くの情報を提供しようとしている。
 スウェーデンのカロリンスカ研究所の脳神経イメージング臨床医であり、カロリンスカ大学病院のシニアコンサルタントでもあるスタッファン・ホルミン医学博士は、次のように説明している。「臨床医は CT などの医用画像から得る情報を頼りにして、患者さんを正しく診断し、症例を観察して治療を決定します。PCCT 技術が非常に期待されている点は、より高い空間分解能とコントラスト分解能を可能にすることです。この技術により、微細な血管も画像化できるようになります。血管、血管の病状、および治療において、より効果的とされる悪性の変化を早期に確認できるようになります。特に小児患者にとっては、被ばく線量が大幅に減少されることも重要な点です。 PCCT は、今日 CT が使用されている全臨床アプリケーションの新標準になる可能性があります」。
 GEはプリズマティック・センサー社の株式譲渡を 2021 年 1 月には完了させる予定である。GEとプリズマティック・センサーは協力して、近い将来臨床システムの提供をするとしている。

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