小倉記念病院とGEヘルスケア・ジャパン、AI技術を活用した冠動脈内腔自動検出に向けた共同研究を開始

2018.09.20

 一般財団法人平成紫川会小倉記念病院(以下、小倉記念病院)とGEヘルスケア・ジャパン㈱(以下、GEヘルスケア)は、両者の経験・技術を融合することで、AI(人工知能)技術を活用した冠動脈内腔自動検出の実現のために共同研究契約を締結し、2018年8月28日より研究を開始した。

 近年、急速な高齢化に伴い心臓疾患の患者数は増加傾向にあり、多くの医療費を要している。特に、心臓に栄養を送る冠動脈が詰まる、急性心筋梗塞は日本における死因の上位をしめている。急性心筋梗塞は時間の経過とともに心筋が壊死してしまうため、病院到着から90分以内に正確な診断と速やかな治療を行う必要がある。冠動脈が狭くなる狭心症においても、心電図や採血、心臓超音波などの検査ではみつからず、心臓CT検査でなければ診断が困難な場合もある。現状では心臓CT検査の解析は、トレーニングを受けた医療従事者が行っても、数十分から1時間程度かかることもあり、また、心臓病は夜間や休日にもかかわらず発症するが、これらの時間帯では、解析が不可能である施設が大多数となっている。このため、急性心筋梗塞や、狭心症の診断に時間を要することが問題となっている。

 今回、小倉記念病院 循環器内科 山地杏平副部長とGEヘルスケアの共同研究チームは、AI技術の一つであるディープラーニング(深層学習)に分類される「畳み込みニューラルネットワーク(CNN)*1」の一手法であるU-Net*2を用いて、小倉記念病院に蓄積された過去4年間約2万件の心臓CT検査画像(図1)と冠動脈画像(図2)から、心臓の特徴を学習させることにより、冠動脈自動診断が可能と考えた。現状の手作業による心臓CT解析を自動化することで、より精度が高く、リアルタイムに診断が可能となる心臓病診断システムが期待される。
fig01

 共同研究には下記の項目の検討が予定され、今後、それぞれについて具体的な内容の協議を進めていく予定だ。

・心臓病診断の更なる効率化
・AIを用いた冠動脈の自動抽出
・血管内腔のより高精度な抽出
・手動解析でみられる診断エラーの解消

 今回の共同研究契約の締結により、冠動脈内腔自動検出の定量的な評価手法の実現に向けた研究に取り組む予定だ。今後、さらに検証を進め、臨床現場で医師の判断を支援する知能としての早期実用化を目指す。

*1: CNNとはニューラルネットワークに畳み込み操作を導入したもので、全結合層、畳み込み層、プーリング層など幾つかの特徴的な機能を持った層で構成されるニューラルネットワークのこと。

*2: U-Netとは医療画像のセグメンテーションのために提案され、CNNで分類した物を実画像上の位置に反映させるCNNの一種。形がUに似ていることからU-Netと呼ばれている。(U-Netモデル例:下図)
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