日本メドトロニック、新たな脳動脈瘤治療法を可能にする日本初のフローダイバーター治療「Pipeline Flexフローダイバーターシステム」を10月より導入開始〜治療困難な大型脳動脈瘤などに対する新たな治療の選択肢〜

2015.10.26

 日本メドトロニック(株)は、日本初となる治療困難な大型および巨大なワイドネック型の脳動脈瘤治療を目的とし「Pipeline Flex (パイプライン フレックス)フローダイバーターシステム」(以下、Pipeline Flex)を2015年10月より導入開始した。「Pipeline Flex」は、フローダイバーターと呼ばれる日本で初めての脳動脈瘤治療法を提供する製品。本製品の特長は、メッシュ状の筒型デバイスを脳動脈瘤のある動脈に留置し、元の動脈の血流を温存しながら、脳動脈瘤内への血液の流入を遮断し、脳動脈瘤内部の血栓形成を促進する点にある。また、遮断された脳動脈瘤のネック部(入口部)で内皮細胞を増殖させ新たな内膜の形成を誘引することにより脳動脈瘤の破裂リスクを低減させる新たなコンセプトの治療が可能となる。

Pipeline Flex フローダイバーターシステムの全体図
フローダイバーター本体の拡大図

 国内における「Pipeline Flex」の適応は、既存の治療方法を第一選択とした場合に治療が困難な脳動脈瘤症例で、「内頚動脈の錐体部から上下垂体部における大型(最大瘤径が10~25mm)、または巨大(最大瘤径が25mm超)かつワイドネック型(ネック長が4mm以上)の頭蓋内動脈瘤に対する血管内治療に使用される(破裂急性期を除く)」とされている。
 「Pipeline Flex」および第一世代製品である「Pipeline® Embolization Device」(国内未承認)は既に70カ国以上にて使用されている。フローダイバーター本体を標的部位まで送達するためのデリバリーシステムも、海外で販売されていた第一世代製品から改良が加えられ、「Pipeline Flex」では留置途中で再留置が可能となるなど、高度な手技を要する脳血管内治療において、精度と操作性を向上させている。
 脳動脈瘤は血管壁の脆弱化により脳動脈に瘤ができた状態で、脳動脈瘤の進行に伴い頭痛や視覚障害などの神経症状を伴うものも多く存在する。脳動脈瘤が破裂した場合、くも膜下出血などの出血性脳卒中を引き起こすことがあり、重度機能障害や死亡に至る危険性もある。現在、脳動脈瘤破裂に対し「外科的クリッピング術」、「瘤内コイル塞栓術」、「母血管閉塞術」などの予防的治療法があるが、脳動脈瘤の中でも特に最大瘤径が10mmを超える大型および巨大脳動脈瘤は、年間破裂率が4.38~33.4%と非常に高いことが知られている。一方で、日本では、大型および巨大脳動脈瘤は、治療を行っても脳動脈瘤内部へ流入する血液を十分に遮断できず根治しないケースや、脳動脈瘤破裂の予防効果を得られないため再治療が必要となるケースなど、これまで治療困難な脳動脈瘤として位置づけられていた。
 神戸市立医療センター中央市民病院脳神経外科部長坂井信幸氏は「「Pipeline Flex」の導入は、日本において脳動脈瘤治療の大きな前進であり、新たな治療の選択肢として期待されます。本機器は、熟達した治療技術が要求される手技を伴うため、時間をかけて術者教育を行うなど、より安全に手技が行われるよう、慎重かつ適切な導入を進めていくことが重要です。」と述べている。

※Morita A et al. The natural course of unruptured cerebral aneurysms in a Japanese cohort. N Engl J Med.366(26):2474-2482,2012

Pipeline Flex フローダイバーターシステム 実施医所属施設一覧
所定の認定を受けた医師(以下、実施医)のみがPipeline Flex フローダイバーターシステムを用いた手技の実施が可能とされている。2015年10月時点で実施医が所属する施設は以下の通り。

神戸市立医療センター中央市民病院
順天堂大学医学部附属順天堂医院
大阪医科大学附属病院
小倉記念病院

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日本メドトロニック(株)
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