バイエル、骨転移のある前立腺癌の治療薬として塩化ラジウム-223の販売承認申請を日本で提出

2015.04.24

バイエル ヘルスケア社は、骨転移のある前立腺癌の治療薬として塩化ラジウム-223注射液の製造販売承認申請を厚生労働省に提出した。
同社の経営委員会メンバーでグローバル開発責任者のヨルグ・メラー氏は次のように述べている。「近年、日本の前立腺癌の患者数は徐々に増加していますが、進行期の患者さんの治療選択肢は多くはありません。特異的な作用機序を有し、臨床試験でベネフィットの認められた塩化ラジウム-223は、現在治療選択肢が限られている患者さんに向けて、革新的な癌治療薬の開発に全力で取り組む当社の姿勢を表す製品の一つです」

今回の承認申請は、ピボタル第III相臨床試験であるALSYMPCA(ALpharadin in SYMptomatic Prostate CAncer)試験のデータおよび日本人の患者さんを対象に塩化ラジウム-223の安全性および有効性を評価した試験データに基づいている。ALSYMPCA試験の中間解析では、塩化ラジウム-223は全生存期間(OS:overall survival)を有意に延長し[HR=0.695(95% CI 0.552 ~0.875)、p=0.00185]、標準的治療下で塩化ラジウム-223を投与した群では全生存期間中央値が14.0カ月であったのに対して、標準的治療下でプラセボを投与した群では11.2カ月だったという。また、この中間解析では、プラセボ群との比較において、塩化ラジウム-223群では症候性骨関連事象の初回発現までの期間延長が認められた。盲検解除後に実施した最新の解析では、塩化ラジウム-223群ではプラセボ群との比較において、OSにさらなる延長が認められ、OS中央値はそれぞれ14.9カ月、11.3カ月だったという[HR=0.695(95% CI 0.581~0.832)]。
ALSYMPCA試験の塩化ラジウム-223群で発現頻度の高かった有害事象(10%以上で発現)は、悪心、下痢、嘔吐、末梢性浮腫であった。発現頻度の高かった血液学的臨床検査値異常(10%以上で発現)は、貧血、リンパ球減少、白血球減少、血小板減少、好中球減少だという。

ALSYMPCA試験について
ALSYMPCA試験は、症候性の骨転移を有する去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の患者さんを、標準的治療下で、塩化ラジウム-223を投与した群とプラセボを投与した群に無作為に割り付けた二重盲検によるプラセボ対照国際第III相臨床試験だ。本試験には19カ国の100以上の施設から、921名の患者さんが参加。本試験では、4週間の間隔をおいた最大6回までの塩化ラジウム-223あるいはプラセボの静脈内投与が実施された。
主要評価項目はOS。重要な副次評価項目の一つは、症候性骨関連事象の初回発現までの期間であり、症候性骨関連事象は、骨症状を緩和するための外照射療法(EBRT: external beam radiation therapy)の実施、新たな症候性病的骨折、脊髄圧迫の発現、または腫瘍に関連した整形外科的介入と定義された。

去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)と骨転移について
前立腺癌は、世界の男性における癌の中で2番目に多く、2012年には世界中で111万1千人が前立腺癌と診断され、30万7千人が死亡したと推定されている。日本では2013年、4万7千人が罹患し、1万2千人が死亡したと推定されている。前立腺癌は、世界の男性の癌における死因の第5位であり、日本では第6位となっている。
CRPCは進行した状態の前立腺癌です。CRPC患者さんの多くが症候性の骨転移を有しており、これにより痛みや、骨折、脊髄圧迫などの骨関連事象、生存期間の短縮が生じることがある。実際に、骨転移はCRPC患者さんにおける身体障害や死亡のリスクを増加させる。

塩化ラジウム-223について
塩化ラジウム-223は、アルファ線を放出する治療用医薬品であり、骨転移に対して抗腫瘍効果を発揮する。塩化ラジウム-223はカルシウムと同様に、骨塩(ヒドロキシアパタイト)複合体を形成することにより、骨、特に骨転移巣を選択的に標的とする。高LET(線エネルギー付与)放射線であるアルファ線は、腫瘍細胞に対して高頻度でDNA二本鎖切断を誘発し、強力な殺細胞効果をもたらす。また、アルファ線の飛程は100 μm未満であるため、周辺正常組織へのダメージを最小限に抑えるという。
塩化ラジウム-223は、欧米を含む世界40カ国以上でXofigoR *の製品名で承認を取得している。

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