日本メドトロニック、一定の条件下でMRI検査を可能にする日本初の条件付きMRI対応の植込み型心臓ペースメーカ「メドトロニック Advisa MRI®」と、心内膜植込み型ペースメーカリード「キャプシュアーFIX MRIリード®」の薬事承認を取得

2012.04.27
  日本メドトロニック株式会社(東京都港区)は、一定の条件を満たした場合に、MRI検査が可能となる「条件付きMRI対応」(*1)の植込み型心臓ペースメーカ「メドトロニック Advisa MRI®(アドバイザ エムアールアイ)」(以下「メドトロニック Advisa MRI®」)および条件付きMRI対応心内膜植込み型ペースメーカリード「キャプシュアーFIX MRIリード®(フィックス エムアールアイ リード)」(以下「キャプシュアーFIX MRIリード®」)の薬事承認を取得した。

 「メドトロニック Advisa MRI®」および「キャプシュアーFIX MRIリード®」は、メドトロニックが1997年より約10年かけて開発し、2008年に世界で初めて製品に導入した、条件付きMRI対応ペーシング・テクノロジー「SureScan®(シュアスキャン)」を採用している。ペースメーカ本体では、磁力の影響を受ける強磁性体の材質を最小化させたほか、電子回路をそれぞれ独立して配置するデザインによって回路間の干渉を防ぐなど、さまざまな工夫が施されている。またペースメーカリードでは、高周波の伝導を抑える新たなデザインを採用している。なお、本システムは、全身のどの部位の撮像についても安全性が確認されているため、全身のMRI撮像が可能となっている。

 「SureScan®」採用の機器を植込んだ患者がMRI検査を受けるためには、装置側にはMRI装置が1.5テスラのトンネル型であることなど、患者側には植込まれている植込み型心臓デバイスとリードが「SureScan®」採用の機器のみであることなど、一定の条件を満たしている必要がある。なお、すでに MRI非対応のペースメーカおよびリードが植込まれている患者は適応外となる。

 「条件付きMRI対応」ペースメーカおよびリードの市場導入により、従来はMRI検査が「原則禁忌」であったペースメーカに加え、「条件付きMRI対応」というMRI検査が可能な製品が登場することになる。この新たな状況に対応し、MRI検査時の患者の安全確保を目的として、「MRI検査についての全例の市販後調査」、「実施施設基準および実施者基準」、「MRI検査のための条件に関する医療従事者への研修と患者への教育」および「安全確保のための十分なサポート体制の構築」などの事項が薬事承認の条件として義務付けられている。日本メドトロニックは、これらの条件を満たした上で保険申請・収載を経て、導入を開始する。現時点で導入時期は未定。

 MRI検査は、人体の軟部組織の撮像において、超音波、X線やコンピュータ断層撮影(CT)検査などではとらえることができない情報が得られるため、疾患の早期検知、診断および治療のための標準的手段として非常に重要な役割を果たしている。しかし、MRI装置によって発生する磁力は自然界の磁場の磁力の3万倍(1.5テスラの場合)に相当するため、ペースメーカの動作への干渉、部品の損傷、ペーシング閾値(心筋を収縮させる最小の電流値)の変化といった影響がもたらされる可能性があり、従来のペースメーカ植込み患者にMRI検査を行うと、重篤な合併症が発生する恐れがあった。

 加齢とともに有病率が高まる脳卒中・がん・整形外科疾患などの診断を目的としたMRI検査は、65歳以上ではそれ以下の年齢に比べて、約2倍に必要性が高まると言われている(*2)。一方で、初めてペースメーカを植込む患者の平均年齢は日本では74歳と高齢であることも示されている(*3)。また、心臓ペースメーカや除細動器等の植込み型心臓デバイスを使用する患者のうち、50%~75%が植込み後にMRI検査が必要になると推定した報告もある(*4)。

 しかし、このようにMRI検査に対するニーズは高いと考えられるにもかかわらず、重篤な健康被害が発生することへの懸念から、ペースメーカ植込み患者のMRI検査は添付文書上の「原則禁忌」とされてきた。メドトロニックは、上記のような状況を鑑み、MRIの磁場の影響下でも正常に機能するMRI対応テクノロジーの研究・開発を行うとともに、MRI検査実施時の安全性を確保するための試験方法の確立や海外臨床試験も行ってきた。MRI対応のペーシング・テクノロジーSureScan® は2008年に欧州でCE マークを取得、2011年には米国FDAの承認を取得している。

*1 「条件付きMRI対応」とは、限定された種類のMRI装置を使用する、限られた設定下で撮像する、などの一定の条件を満たしたうえでMRI装置での撮像が可能になるデバイスを指す。
*2 National Cancer Institute April 2009. US estimated complete prevalence (including counts) by age on 1/1/2006. Based on November 2008 SEER data submission; DCCPS, Surveillance Research Program, Statistical Research and Applications Branch.
*3.メドトロニック調べ
*4. Kalin R, Stanton MS. Current clinical issues for MRI scanning of pacemaker and defibrillator patients. PACE. April 2005;28(4):326-328.

●問い合わせ先
日本メドトロニック(株)
広報グループ
TEL 03-6430-7034
http://www.medtronic.co.jp/