キヤノンメディカルシステムズ株式会社(本社:栃木県大田原市、代表取締役社長:瀧口登志夫氏)は、令和6 年度(第57 回)市村賞(主催:公益財団法人市村清新技術財団)において、「被ばくを低減し心臓を高画質で画像化するCT 装置」の開発業績で「市村産業賞 功績賞」を受賞した。

市村賞は、わが国の科学技術の進歩、産業の発展に顕著な成果をあげ、産業分野あるいは学術分野の進展に多大な貢献をされた個人またはグループを表彰する。市村産業賞、市村学術賞、市村地球環境産業賞、市村地球環境学術賞の4 つのカテゴリーで構成され、市村産業賞は優れた国産技術を開発することで、産業分野の発展に貢献・功績のあった技術開発者に贈呈される。
開発の背景
心臓の筋肉に血液を供給する動脈(冠動脈)が狭くなったり詰まったりする虚血性心疾患は、近年増加傾向にある。従来のX 線CT 装置による心臓検査(心臓CT 検査)は、心臓の拍動によるブレがCT画像に表れることや、被ばくを減らすためにX 線量を少なくするとCT 画像にノイズが表れることがあった。
そのため、高画質なCT 画像と被ばく低減の両立を実現することが大きな課題だった。
開発技術の概要
心臓が収縮と拡張の動作を繰り返す中で、被検者の心電図情報から心臓の動きが遅い期間を推定し、その期間でCT 画像の生成に必要なX 線投影データを収集するX 線照射を行い、それ以外の期間でX 線照射を停止または低減するX線CT 装置を開発した。また、被検者ごとに異なり経時的にも変化する心臓の動きに対応するために、被検者の心電図情報から決定される条件を基にX 線制御を行う技術も開発した。これらの技術により、高画質なCT 画像と被ばく低減の両立を実現した。開発技術の実用化とX 線CT装置の基本性能の向上を通じて、心臓CT 検査の被ばく量を従来の14mSv(ミリシーベルト)から1~3mSv まで減らすことが可能となった。
開発技術の特徴と効果
高画質と被ばく低減の両立というニーズは国内外にて共通で、本開発技術を用いた心臓CT 検査は、全世界で広く普及している。2005 年の実用化を契機に国内での心臓CT 検査数は急速に伸び、2018 年には従来の主要な検査として行われていた心臓カテーテル検査の数を上回った※。また、虚血性心疾患の診断ガイドラインでは心電図同期撮影を行うことが推奨されており、本技術は虚血性心疾患の正確な診断に貢献している。
受賞者
キヤノンメディカルシステムズ株式会社 IVD 開発センター 尾嵜真浩氏
キヤノンメディカルシステムズ株式会社 CT 開発部 津雪昌快氏
お問い合わせ先
キヤノン株式会社 広報部 / キヤノンメディカルシステムズ株式会社 広報室
03-5732-8265