ボストン・サイエンティフィックジャパン、経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)向け脳塞栓保護デバイス「SENTINEL™ Cerebral Protection System」日本初登場
ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社(本社:東京都中野区、代表取締役社長:森川智之氏)は、大動脈弁狭窄症の治療法の一つである経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)の手技中に使用し、脳卒中のリスクとなり得る病変の組織片や術中の血栓等の塞栓物質を捕捉、除去する日本初の脳塞栓保護デバイス「SENTINEL™ Cerebral Protection System」(以下、SENTINEL CPS)を1月21日より発売する。本製品は、2024年7月24日に薬事承認を取得し、12月1日に保険収載された。


大動脈弁狭窄症は、日本国内で60歳以上の約284万人が罹患していると推定されており、高齢化の進行に伴い患者数の増加が見込まれている。2013年に日本で導入されたTAVIは、開胸手術の代替として、低侵襲性と短い回復期間を特徴とする治療法で、現在では年間1万件を超える手術が行われていると推定されている。しかし、TAVI中に剥がれた塞栓物質が脳血管を塞ぐリスクが課題とされており、安全性向上が求められていた。TAVI治療後の脳卒中の発症は、患者さんのQOLの著しい低下を招く可能性があり、その予防が非常に重要となる。SENTINEL CPSは、このような脳卒中のリスクを低減することを目的としたデバイスである。
SENTINEL Cerebral Protection Systemの製品概要/特徴
本製品は、TAVI手技中に腕頭動脈と左総頸動脈の入口部に一時的にフィルタを留置することで、脳卒中のリスクとなり得る弁尖や石灰化病変の組織片、心筋筋組織、血栓等の塞栓物質を捕捉、除去する。1つのサイズで留置する動脈の多様な解剖に対応している 。また、これらの血管は脳への血流の主要経路を担っており、本製品のフィルタにより脳全体への血流の約90%を保護することで、TAVI手技中の塞栓物質による、術後の脳卒中リスクを低減できる可能性がある。
3つの特徴
1.簡便性
- 右上肢からの直径2mm程度の細い管(6Fシース)による低侵襲なアクセス
- 1つのサイズ、3つの操作でフィルタ展開が可能


2.操作性
- 独立したハンドルコンポーネントによりフィルタごとの操作が可能
- 角度調整シースによる多様な左総頸動脈にも容易に到達

3.有効性
- ほぼ全ての症例(99%)でいずれかのフィルタにデブリス(弁尖や石灰化病変の組織片、心筋筋組織、血栓塊 等)が捕捉
- 手技中の血管アクセスに関連する合併症の発生率は0.4%※2

PROTECTED TAVR 臨床試験
米国、欧州及びオーストラリアの51医療機関で大動脈弁狭窄症を有し、市販のTAVR機器を用いた治療を受ける患者を対象に、SENTINELの使用を評価する前向き市販後多施設共同無作為化比較対照試験を行った。経大腿動脈アプローチで治療を受ける患者を、市販のSENTINELを使用する被験群又はSENTINELを使用しない対照群のいずれかに1:1の割合で無作為に割り付け、計3,000例が登録された。PROTECTED TAVR臨床試験では、本製品を使用してTAVIの治療を受けた患者は、使用せずにTAVIの治療を受けた患者と比較して相対的に、全脳卒中のリスクが21%減少、障害の残る脳卒中のリスクが60%減少した※3。全コホート(3,000例)における主要評価項目に対する優越性検定において、TAVR手技後72時間又は退院時(いずれか早い時点)までの全脳卒中(障害を伴うもの又は伴わないもの、出血性、虚血性又は原因不明)とした主要評価項目は、主要解析対象集団であるIntent-to-treat(ITT)解析対象集団でSENTINEL群2.3%、対照群2.9%であり(p=0.2960)、主要評価項目は満たされなかった。特に、障害を伴う脳卒中はSENTINEL群(0.5%)の方が対照群(1.3%)よりも有意に少ない結果(p=0.0225)となった。


大阪警察病院院長澤 芳樹先生は「TAVI治療を受けた患者の99%において、塞栓の原因となると考えられる物質が観察されているものの、これまで本邦には臨床的に使用できる塞栓物質を捕捉するデバイスがなかったため、脳梗塞が発生した際には症状に応じた投薬ならびに経過観察等が実施されるのみで手技の時点で塞栓予防はできないという課題がありました。これにより、TAVI治療に不安を感じる患者さんやTAVIを患者さんに勧めることをためらう医師もいたかと思います。しかし、SENTINEL CPSが使用できるようになったことで、患者さんと医師の双方の不安が軽減されるとともに、患者さんのより良いQOLへ貢献できると期待しています」と述べている。湘南鎌倉総合病院心臓センター センター長齋藤 滋先生は「未だ黎明期であった頃から、TAVIの治療法を取りいれてきましたが、その当時と比べてTAVIに用いられる医療器具は大きく進歩し、さらにTAVIに関わる医学知識と医療技術は大きく発展してきたと感じます。しかし、日本では手技中に血栓等の塞栓物質を捕捉するデバイスがない状態が続き、TAVI後の脳卒中の発症が懸念となる場合がありました。SENTINEL CPSの登場で、脳卒中のリスクが減少し、より安心して治療を受けられることは患者さんにとって大きなメリットであると思います」と述べている。ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社代表取締役社長の森川智之は「SENTINEL CPSはこれまで海外の69か国で使用されてきましたが、今回、保険収載としては世界初となる導入が日本で実現し、より多くの患者さんへの治療提供が可能となりました。これまで日本では、TAVI治療時に発生する脳卒中の抑制に対して、塞栓物質を捕捉し脳血管内への侵入を阻止する方法がない状況でしたが、今回の製品導入により、多くの患者さんのより良い予後に貢献できることを願っています」と述べている。
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