シーメンスヘルスケア、新製品の発売にともなう、最新のハイブリッド手術室に関するセミナーを開催

2017.04.08
丸毛啓史氏
森 秀顕氏
ピーター・ザイツ氏
村山雄一氏
坂東 興氏
大木隆生氏

 シーメンスヘルスケア(株)(以下シーメンス)は、3月28日に東京慈恵会医科大学附属病院(東京都港区、以下慈恵医大病院)にて、最新のハイブリッド手術室に関するセミナーを開催した。シーメンスの新製品「ARTIS pheno」の発売にともなって行われたセミナーで、会場となった慈恵医大病院では国内1号機が稼働を開始している。
 最初に慈恵医大病院院長である丸毛啓史氏と、シーメンス代表取締役社長兼CEOである森 秀顕氏が挨拶をした。丸毛氏は「ARTIS phenoはシーメンスと共同でより良いものを作り上げる決意で導入した。新型のDSA装置を導入することで、より一層治療に効果が現れることを期待している」と述べた。森氏は「シーメンスは安心安全な医療の提供をサポートするソリューションを送り出している。ARTIS phenoはより低侵襲かつ安全、そして短時間な検査や治療を可能にするだろう」と新製品へ期待を込めた。
 次に、シーメンスGmbH アドバンストセラピービジネスエリアシニアアドバイスプレジデント ピーター・ザイツ氏による「ARTIS pheno」の紹介が行われた。ハイブリッド手術室対応の多軸透視・撮影システム「ARTIS pheno」は、同社の既存製品からCアームといった装置の構造や寝台、デザインなど全てを一新した。高度な画像処理プロセスを持つ3D画像撮影機能「syngo DynaCT」やCO2造影画像を鮮明に描出する「StructureScout」といった新機能が、より少ない造影剤で最適な画像を提供する。
 また、大きな特長として、Cアームの内径が13cm広がり、アーム内のフリースペースが95.5cmまで拡大した。これにより、患者へのアプローチや器具の操作がしやすくなり、より複雑な手技を安全、確実、迅速に進めることができる。手台やヘッドクランプなどの周辺器具がCアームと接触する危険も減り、深い角度での透視撮影が可能となる。床置き式でケーブルレスとなった装置には抗菌、防水加工が施されており、一層清潔な術野を保つ。
 その後、「第二世代Hybrid ORが可能にする最新の低侵襲性手術」と題し、慈恵医大病院の村山雄一氏(脳神経外科)、坂東 興氏(心臓外科)、大木隆生氏(血管外科)が登壇。同院での「ARTIS pheno」導入後のメリットや症例などについて報告した。
 村山氏によれば、Cアームを回転させて作成したCTベースのナビゲーション画像により、開頭クリッピングの合併症がほぼなくなる一方、これまで使用していた装置ではCアームの幅が狭く、スペースが少ないという問題点があった。アーム幅が広くなった「ARTIS pheno」はスペースの確保や清潔環境が整い、そのような問題が改善。患者の所に自由自在にアームが動き、従来できなかったレベルの撮影ができるようなった。
 坂東氏の講演では、大動脈弁狭窄症(AS)に対する低侵襲手術として軽カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR/TAVI)などを紹介。少なくとも40%の重症AS患者が大動脈弁置換術(AVR)治療を受けていない(受けられない)現状で、新たな治療の選択肢として、比較的低侵襲なTAVR/TAVIがあげられる。坂東氏は「ARTIS pheno」について、「近い将来の心臓外科・循環器内科が実施する低侵襲/ハイブリッド手術に大いに役立つ可能性を秘めている。これを使いこなし、患者に負担の少ない手術を成功させるためには、成熟したHert TeamによるMultidisciplinary Approachが必要不可欠である」と述べた。
 大木氏は血管外科手術の際の「ARTIS pheno」の有用性について紹介。頸動脈内膜剥離術で皮切りの位置決めをする際、「ARTIS pheno」で事前に得た情報を術中に使用することができ、皮切り傷の縮小にも貢献する。また、大動脈瘤へのステントグラフト術では、フュージョン機能により術前の画像データと術中の透視画面を同期することで、カテーテルの位置が見えやすくなる。造影剤を減らし、線量を低減することで、患者への負担も減らすことができる。
 セミナー後にはハイブリッド手術室に設置された「ARTIS pheno」が公開され、大口径Cアームや、寝台とアームの距離を自動的に調整する機能などが実演を交えて紹介された。

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ARTIS pheno