富士フイルムと静岡県立静岡がんセンター、世界初の「類似症例検索システム」を開発 医師の画像診断をサポート

category:取材速報
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玉井光一氏
山口建氏
志村一男氏
遠藤正浩氏
 富士フイルム(株)と静岡県立静岡がんセンターは、人工知能の技術を用いて肺がんの画像診断を支援する世界初の「類似症例検索システム」を開発し、4月10日、東京ミッドタウンで共同発表会を行った。静岡がんセンターで蓄積された約1,000例のCT画像の症例データベースを利用し、医師が画像診断する際に類似した症例を検索できるシステムで、富士フイルムのPACS「SYNAPSE」を基幹システムとして使用する。同社は13日から開催される国際医用画像総合展(ITEM2012)で展示し、今年秋の発売を予定。価格は500~1,000万円を想定している。
 両者は、同社の画像処理能力と同センターの現場の経験に基づき、2005年2月から、国内初となる高度先端医療機関と企業間での包括的な共同研究契約を締結。次世代医療用画像診断ネットワークシステムの実用化に向けた研究に取り組んできた。検索システムは、日常の診療で蓄積される大量の検査画像や診断結果を活用し、医師の画像診断をサポートできるのではないか、というコンセプトの元に開発された。開発に当たり、静岡がんセンターの医療スタッフが現在使用しているSYNAPSEへの意見を反映したほか、富士フイルム側の開発関係者が医療現場に入るなど、相互協力を行った。
 発表会では、玉井光一氏(同社取締役常務執行役員メディカルシステム事業部長)、山口建氏(同センター総長)が、それぞれプロジェクトの意義や開発の経緯を説明した。玉井氏は「検査数、画像数などデータの増加が医師の負担を増加させている現状で、医療に対して企業ができる支援の形」とし、山口氏は「医療機関と企業の関係は“二重らせん型開発”ともいうべきもの。企業側も医療現場を知らなければ決していい物はできないという信念があった」と、新システムへの思いを語った。
 続いて、志村一男氏(同社メディカルシステム事業部担当部長)が、システムの概要を紹介。検索システムは、医師がPACS端末上で肺がんのCT画像の読影を行う際、症例データベースから病変の特徴が類似している症例画像を瞬時に検索し、似ている順に複数表示することができるのが特長。モニターには検査結果と症例が並んで表示され、医師は、類似性の高い症例から参考にしたいものを選択し、比較しながら画像診断を行うことができるため、短時間でより正確な診断が可能となる。また、導入した施設は、自施設で蓄積した過去の症例を追加登録することができるため、症例データのさらなる充実を図ることもできる。
 臨床の視点から、遠藤正浩氏(同センター画像診断科部長)が、開発された検索システムを利用した診断の進め方を実演した。遠藤氏は、利用によって「専門医以外の医師が診断の確信度を上げることができるほか、患者に診断の内容を説明する場面でも、安心や納得をしてもらえるのではないか」と語った。
 類似症例の比較は、肺がんの画像特徴を数値化して行い、肺がんの可能性のある画像の病変部分をクリックすると、画像特徴を数値化してデータベース中の症例との類似度を算出する仕組み。同センターの読影実験による検証では、類似症例の検索は、約9割の確率で適切な症例が表示された。表示された類似症例の画面に付帯する診断結果を元に、効率的に読影レポートを作成することが可能となっている。さらに、豊富な過去の診断症例や読影レポートを参照することで、研修医などの教育や自己学習にも役立つことが期待される。
 将来的には、肺がん以外の疾患の画像診断への活用、クラウド環境での提供も視野に開発を進めていくという。

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