IGRT今後の展開

2024.02.22

 

エレクタ Unityの装置導入
と1年半の臨床経験


 

1)東北大学病院 放射線治療科
2)東北大学病院 診療技術部
角谷倫之 1)、田中祥平 1)、佐藤清和 2)、新井一弘 1)、高橋紀善 1)、梅澤 玲 1)、神宮啓一 1)

はじめに

 MRIとリニアックを一体化した高精度放 射 線 治 療 装 置 で あ る エ レ ク タ 社 製Unityは既に国内外で60台が稼働し、当院ではそのUnityを使ったMR画像誘導即時適応放射線治療(Online ART)を2022
年2月に開始した。本執筆では、その導入までの流れと約1年半の使用経験について、UnityによるOnline ARTの特徴などを紹介しながら報告する。

装置導入と治療開始まで

 Unityの装置据付から治療開始までの流れは基本的には通常のリニアックの導入の流れと同じである。装置据付に約5か月、受入試験から治療開始まで約3か月というスケジュール感で当院では導入を 行 った。ま ず 具 体 的 な 装 置 搬 入 は、2021年7月から始まった。図1のように最も大きな部品であるガントリー部分を、クレーン車を使って治療室に搬入していくことから始まった。そのほかの部品の搬入や調整を含めて約5か月間の装置据付期間があり、11月末に終了した。この後、治療装置の受入試験(エレクタではDevice Acceptance Tests: DATと呼ぶ)が、11月29日から12月3日の1週間で実施された。これは受入試験なので、エレクタが主体となって施設側が機械の動作や性能を確認する。その一例としてDAT時にのみ使用する専用機材を使ってのガントリー角度ごとの出力変化の測定を紹介する。図2にその測定時の風景(図2aと図2b)、測定結果(図2c)、実際の結果記載シート(図2d)を示す。図2aと図2bに示すように、電離箱と二次元検出器を挿入しながら回転できる専用機材を使ってガントリー角度依存性を確認する(ベンダー許容値は6%以内で、当院では1.6%)。また、その他の測定例として、放射線治療アイソセンタの変位量測定があり、ボールベアリングが設置された専用機材を使って0度、90度、180度、270度の4方向から照射して確認した(ベンダー許容値は0.5mm以内で、当院では0.35mm)。通常のリニアックよりアイソセンタのずれは小さいと感じた。

 アクセプタンスの後に、コミッショニングを実施した。具体的にはビームデータ測定、ビームモデリング、MR画像関連の測定・検証、線量校正用のデータ取得などが挙げられる。コミッショニングで行う項目も通常のリニアックでのコミッショニングと大きく変わらないが、kV画像に関する部分(二次元画像やCBCTなど)の代わりにMR装置に関係する部分が追加となる。また、何かのパラメータなど を 調 整 す ると いうことで は な い が、Online ARTを安全に効率よく実施できるような臨床ワークフローの手順決定・確認も追加で必要となり、この部分は想像以上に時間を要した。ただ、臨床を開始するとこの部分の事前確認がかなり大事であったことを強く感じ、この点は医師・技師・物理士でどの作業をどのように行うかをきちんと協議して開始したほうが良いであろう。

前立腺癌に対する
Online ART

 当院では最初に前立腺癌に対する定位放射線治療(SBRT)から開始した。低・中リスクでは36.25Gy/5Fr、高リスクでは40Gy/5Frで9門のstep and shoot IMRTを実施した(UnityではVMATは対応しておらずstep and shoot IMRTのみに対応)。全体の臨床ワークフローを図3に示す。

 まず、Unityを使ってシミュレーションMR画像として撮影時間が約2分のT2強調画像を取得する。MR画像における線量計算を行うため、シミュレーションCT画像も同日に撮影する。そのMR画像における線量計算法は、CT画像上の標的や各リスク臓器などの輪郭内の平均電子濃度を計算し、MR画像上の対応する輪郭内の電子濃度として置き換える方法である(Unityでは原則この方法が採用されている)。PTVマージンは、全方向5mmとしている。

 次に、Online ARTを実施する当日のフローを説明していく。なお、Unityで は、adapt-to-position(ATP)とadapt-to-shape(ATS)の2種類のARTフローが用意されている。Unityではカウチを動かしてのセットアップができないため、通常のリニアックのIGRTのように位置だけを修正して行う場合でもプランのアイソセンタ位置を修正する必要がある。この位置だけを修正する手法をATPと呼ぶ(この手法では当日のMR画像上での輪郭作成は不要)。一方で一般的にOnline ARTと呼ばれる腫瘍の形状も考慮したARTがATSとなる。当院では前立腺SBRTではほとんどのケースでATSを実施しているため、ここではそのフローを説明する。患者をカウチにセットアップした後、シミュレーションMRと同様のT2強調画像(pre-MR)を2分間で撮影する。その後、そのpre-MRをシミュレーションMRに一致するように剛体レジストレーションを行う。次に、シミュレーションMR上の輪郭をその当日のpre-MR上に非剛体レジストレーションを用いた輪郭プロパゲーションによって自動で輪郭を作成する。その後、必要に応じて医師・物理士がその輪郭を手動で修正する。その後に最適化計算を行い、治療計画が完成する。最適化計算は原則、シミュレーションMRで使った同一のコスト関数、目標線量、ウェイトを使用し、原則一回の最適化だけを行う。また同時並行で、その最適化計算中(約3分ほど)に確認用MR画像を撮影し、最初に撮影した状態から大きな体内変化がないかを確認する。ここで大きな変化が見られた場合にはもう一度輪郭作成からやり直すこととなる。治療開始後約半年間で約45%の症例でそのやり直し計画を実施していた。原因として寝台に寝た直後は少し緊張気味でお尻に力が入っているが、だんだん時間が経つにつれてその緊張がほぐれ、前立腺が背側に移動することが考えられた。そこで改善策として直径10cmくらいのボールをお尻の下に2~3個入れてセットアップすることで位置照合中のお尻の筋肉の緊張緩和による標的のずれを低減する方法を取り入れ、現在では再計画する症例は25%くらいに低減されている。最後に照射中はシネMR画像(0.2秒間隔)を撮影することができ、そのシネ画像上にはPTVを重ねて表示することができる。この機能使って、照射中に標的がPTVから外れた場合には、一旦ビームを手動でストップさせ、しばらくしても元の状態に戻らない場合には、ATPを再度実施して位置だけ修正して残りのMUを照射する。PTVから標的が外れた場合には自動でビームがオフされる機能があればさらに良いが現時点でのUnityではこの機能はない。ただ、この同期照射の機能は米国のFDA、欧州のCEマークが既に取得され米国や欧州ではこれらの機能が使える状態になっている(本邦ではまだ未承認)。

約1年半使用して

 2023年10月末時点での当院のUnityでの治療部位のサマリーを図4に示す。総治療患者数は215人、そのうち前立腺が75%と最も治療件数が多く、次いでリンパ節(8%)、肝臓(8%)、腎臓(7%)となっている。どの部位でも大きなトラブルもなく実施できており、治療時間は前立腺で約45分であった。

 また、今年の3月から、計画CTを撮影せずにMR画像だけを撮影して計画するようなワークフローに変更し、業務効率化を行っている。通常であれば、治療計画CTにおいて標的やリスク臓器(OAR)の輪郭内の平均電子濃度を事前に算出し、MR画像上の同一の輪郭内にその平均電子濃度を割り当てることで、MR画像だけで線量計算ができるような作業を行う。ただ、治療計画CTを取得しない場合にはその方法が使えないため、既に治療された20名の前立腺癌患者の治療計画CT画像から各臓器の平均電子濃度を決定し、その代表的な電子濃度を使うことでMR画像のみを撮影しても線量計算できるようなフローを採用している。なお、その代表的な電子濃度を使うことによる線量誤 差 は、CTV D98%、Rectum V18Gy、BladderV18Gyで1%程度であった。UnityによるOnlineARTが有用であった。

 

症例の提示

 まず前立腺癌においては、図5のような直腸ガスが照射中に前立腺領域まで降りてきて前立腺を押し出すような症例ではMR-Linacのリアルタイムに腫瘍をモニタリングできるという利点が最大限発揮された。具体的には、図5のように照射中に降りてきた直腸ガスによってPTVから前立腺が外れたら即座に照射を一時停止して、そのガスが通り過ぎてまた計画通りの位置に前立腺が戻ったら再度照射を開始することができた。この点はMR-Linacの有用性を大きく感じた一例であった。

 

 次に肝臓症例を図6に示すが、この症例ではシミュレーション時(図6a)に比べて治療時(図6b)では腫瘍体積が増大した。このような症例ではCBCTベースで のOnline ARTで は セ ッ ト ア ッ プ 用CBCT画像において腫瘍を正確に捉えることができない可能性がある。一方でMR-Linacでは図6のようにセットアップ時のMR画像でその腫瘍増大を把握できるので、Online ARTの治療計画(図6c)でその増大した腫瘍に合わせた治療計画が作成できた。

 最後に膵臓癌症例(40Gy/5fr)において、Online ARTを行うことによる線量分布的メリットを解析した一例を提示する(図7)。Online ARTを実施しない通常のIGRTを実施した場合の線量分布を図7bに示すが、この照射を実施した場合には十二指腸のD0.5cm3 が50Gy以上となってしまい線量制約を大きく逸脱してしまう(制約:D0.5cm3 < 38Gy)。一方で、OnlineARTを実施すると、図7cのようにOARの制約を満たしながらの治療計画に修正することができる。これにより、OARの許容値を満たしながら最大限標的に線量を投与することが可能となる。

最後に

 Unityを用いることで、当院において安全にOnline ARTを開始することができた。また、実際にOnline ARTを日々実施する中で、MR画像による優れた腫瘍描出能力による実現された計画中・照射中の体内の動きの “見える化” によって日々新たな気づきや発見がある。最近では、Unityを使った腫瘍内低酸素状態を可視化できるMR画像(T2スター画像など)を使ったOnline ART技術も積極開発されていると報告されている。 さ ら に、今 ま で はUnityはStep and shoot IMRTしか対応していなかったが、VMATに対応し、かつMLCでトラッキングする技術の開発も進んでいると報告されている。この治療装置を使うことで放射線治療はまた新たなステージに進むことが強く期待される。