一般社団法人ライフデータイニシアティブとNTT データは、日本初、次世代医療基盤法に基づく医用画像データの提供開始

2024.06.14

 一般社団法人ライフデータイニシアティブ(以下、LDI)と株式会社 NTT データ(以下、NTTデータ)は、PSP 株式会社(以下、PSP)と、次世代医療基盤法に基づき、匿名加工医療情報としてエックス線画像などの医用画像データの提供を 10 月から開始する。なお、本件に関する問い合わせの受け付けについては 6 月から開始する。これまで、次世代医療基盤法に基づく医用画像データの提供は国内で実施されておらず、日本初の取り組みになる。
 近年、世界的に AI を用いて医師の診断を支援するプログラム医療機器の研究・開発が進められているものの、日本では研究・開発に必要な医用画像データの不足およびデータ取得における手続きの煩雑さが課題になっていた。さらに、医用画像の活用にあたっては、秘匿性を考慮した高い匿名加工処理技術が求められてきた。これらに対し、PSP が医用画像データを取得し、LDI と NTT データが該当データを匿名加工し、プログラム医療機器を研究・開発する事業者などへ提供することで、簡便に医用画像データを活用できる環境を実現する。
 本取り組みを通じて、プログラム医療機器等の研究開発を支援し、より早期で精緻な診断や、医師の労働時間軽減による働き方改革など、日本の医療業界に貢献していく。

背景・経緯

 医用画像データとは、医療現場で実施される画像検査(エックス線検査、CT 検査、MRI 検査、超音波検査、内視鏡検査、病理検査など)から得られる画像データであり、疾病の発見から診断、治療効果の判定等に用いられている。
 これまでの画像検査は専門の医師が直接、対象の医用画像データを確認し診断していた。しかしながら、近年は AI などを活用して医用画像データを解析し、異常箇所を自動検出して医師に通知するなど、医師の診断を支援するプログラム医療機器の研究開発・普及が世界的に進んでいる。より高精度な診断を支援し、多忙な医師の働き方改革にも貢献するものとして期待されている。
 しかし、日本では MRI 検査やレントゲン検査など画像検査を行う医療機器の普及率は世界的にトップクラスである一方、プログラム医療機器の開発数、承認数は欧米に比べて非常に少ない状況である。その要因の一つとして、研究・開発に必要となる学習用・検証用の医用画像データの取得ハードルが高いことがあげられる。画像検査を支援するプログラム医療機器の研究・開発には、AI の分析精度を高めるために相当数の医用画像データを用いる必要がある。医用画像データは個人情報保護法における要配慮個人情報にあたるため、医療機関の協力・承認の元、原則として本人の同意を得たうえでデータ取得しなければならず、各研究・開発の目的ごとに複数の医療機関と調整し、患者の同意を得る必要がある。その手続きの煩雑さが課題となっていたことから、より簡便に医用画像データを取得できる手段が求められていた。さらに、要配慮個人情報であるため、秘匿性を考慮した高い匿名加工処理技術も求められてきた。

診断支援プログラム医療機器開発の流れと必要となるデータ

医用画像データ提供の概要

 LDI、NTT データは、次世代医療基盤法に基づき、医用画像データを 2024 年 10 月から提供開始する。なお、本件に関する問い合わせの受け付けについては 6 月から開始する。本件は、2024 年 3 月に医用画像データの取り扱いに関する申請を次世代医療基盤法の主務府省に届け出を提出し受理されている。
 両社は、これまで医療機関におけるリアルワールドデータとして、電子カルテ、保険請求データ、DPC 調査データの提供(千年カルテ二次利用サービス)を行っており、今回新たに医用画像データが加わる。これにより、簡便に医用画像データを活用できる環境を実現する。これまで次世代医療基盤法に基づく医用画像データの提供は実現されておらず、日本初の取り組みになる。
 医用画像データの提供は、次世代医療基盤法に基づく認定事業者である LDI、NTT データと、クラウド型医療用画像管理システム大手である PSP が連携して実施する。医療機関あるいは学会が持つ医用画像データを PSP が収集し、これを LDI、NTT データに連携する。LDI、NTT データは、次世代医療基盤法に基づき、画像に写り込んだ個人情報のマスキング、CT やMRI 検査の立体再構成による顔貌再現への対応など、適切に匿名加工し、医療分野の研究開発を目的に利用したい事業者・アカデミア等に提供する。
 患者に対し個別に同意を取得する必要がなく、医療機関等から患者に対する適切なオプトアウトを実施することで、データ利活用者は、LDI から医用画像データを得ることができる。そのため、データ利活用者側で医療機関や学会との個別の調整・契約などは不要になる。LDI は、次世代医療基盤法の認定事業者であるため、医療機関や患者は安心してデータを提供することができる。

取り組みイメージ
これまでの課題と本取り組みの利点

ユースケース

今回のサービス開始によって、以下のようなプログラム医療機器開発などの促進に寄与する。

1.がん検知支援プログラム開発への活用医療現場における課題として、がんは種類によって発見が難しく、進行が進んでから発見されると完治が難しい現状がある。これに対し、がんの可能性がある病変を検知し、これを指し示すプログラム医療機器が開発されれば、医師が早期にこれを精査するきっかけになる。このようなプログラムの開発に必要なデータとして、今回提供する医用画像データが活用できる可能性がある。

2.疾患の重症度判定支援プログラム開発への活用医療現場における課題として、患者主観によって重症度の評価を行っていることがあり、客観的な重症度評価ができない場合がある。そのような際、重症度に応じた柔軟な治療選択・変更が難しくなっている。これに対し、疾患の重症度に関連する数値を示すプログラム医療機器が開発されれば、該当の数値に基づき初回治療を選択できることや、特定の治療後の変化に着目し、柔軟に患者に合った治療法の探索が可能になる。このようなプログラムの開発に必要なデータとして、今回提供する医用画像データが活用できる可能性がある。

今後について

今後は、既存の電子カルテ、保険請求データなどの匿名加工医療情報と医用画像データを組み合わせて提供することで、より正確なリアルワールドエビデンスの創出や、より高精度な診断支援プログラム医療機器等の研究・開発が進むことが期待される。

問い合わせ

株式会社NTTデータ
製薬・化学事業部 尾本、田中
milkr_support@kits.nttdata.co.jp