MYBOOKMARKNo.24 放射線治療における品質管理の統合プラットフォーム

2022.02.17

1)さいたま市立病院 中央放射線科

2)さいたま赤十字病院 放射線治療科

室井大志1)、日戸諒一2)

はじめに

 放射線治療は、強度変調放射線治療(IMRT:Intensity modulated radiation therapy)などの高精度放射線治療や画像誘導放射線治療(IGRT:Image guided radiationtherapy)の高度化に伴い、多岐にわたる品質保(QA:Qualityassurance)と品質管理(QC:Quality control)を行っている。本稿は、当院での使用経験に基づいて、放射線治療のQA管理ソフトウェアであるSunNuclear社のSunCHECK™を紹介する。

QA統合プラットフォーム ─SunCHECK™─

 SunCHECK™は、放射線治療部門のMachineQAデータとPatientQAデータを一元管理できるサードパーティーのソフトウェアである。SunCHECK™の構成を図1に示す。SunCHECK™は、SunCHECK™MachineSunCHECK™Patientから構成され、それぞれMachineQAとPatientQAの実行とデータ管理を行う。アプリケーションは、ネットワークブラウザからアクセスし、ネットワーク上のPC端末はどこからでも利用が可能である。また、ウェブアプリケーションであるためアクセスする端末に制限を受けないというメリットもある。

Machine QAモジュール ─SunCHECK™ Machine─

 SunCHECK™Machineは、MachineQAを一元管理するモジュールであり、Daily、 Monthly、 Annualの定期QAを円滑に進めることができる。QAの項目は、米国医学物理学会(AAPM:Americanassociation of physicists in medicine)のタスクグループレポート:TG-142を網羅しており、以前まではQA項目に応じた検出器ごとに解析ソフトウェアを起動する必要があったが、SunCHECK™Machineを用いることにより直接接続可能な検出器や対応しているファントムであればそれらのソフトウェアを起動することなく測定と解析ができるようになった。執筆時点での直接接続可能な検出器として、Sun Nuclear社のIC PROFILER™やDailyQA3™があり、オンライン接続すると即座に測定を開始することができる。また、治療計画CT画像やIGRTに用いるkV画像、MV画像、そしてCone beam CT(CBCT)画像などのImage qualityも解析・管理が可能である。測定データはすべてSunCHECK™による管理が可能で、許容値のPass/Failが視覚的に判断できるユーザーインターフェースを有しており、即座にQA項目の結果を判断でき(図2の赤枠)、過去に測定したデータのトレンド追跡も簡便な操作で行えるため利便性が高い。

電子ポータル画像装置による PretreatmentQA ─PerFRACTION™ Fraction 0─

 SunCHECK™ PatientのPerFRACTION™には、ファントムレスなPretreatmentQAとしてFraction 0が実装されている。PretreatmentQAは、IMRTなどの高精度な照射において放射線治療装置が治療計画どおりの照射を行えるかを保障するために、検出器やフィルムを挿入したファントムを用いて実施される。Fraction 0では、それらを用いることなく治療装置に付属している電子ポータル画像装置(EPID:Electric portal imaging device)に検証したい治療計画を直接照射する。EPIDは、治療前の位置照合を行うための画像取得機構であるが、これをPretreatmentQAに利用したものである。EPIDの取得モードには、IntegratedとCineがあり、解析の使用用途によって使い分ける。Integratedモードで取得した場合は、事前取得した変換係数を乗じて水吸収線量へ変換したTransit dose と、SNC Dose Calculato(r 計算アルゴリズムはCollapsed cone convolution/Superposition)で仮想水ファントムに対して計算させたPredict doseをガンマ解析で比較する。さらに、照射ログファイルからSNC Dose Calculatorを用いて治療計画CT画像上に線量分布を計算し、治療計画の線量分布やDVH(Dose volume histogram)と比較評価ができる。また、Cineモードで取得した場合には、MLC(Multi leaf Collimator)のリーフ位置を検出することができ、照射ログファイルを併用して線量計算に用いることができる。AAPM TG-218では、治療寝台に検出器やファントムを配置している状態での測定を推奨しているが、検出器やファントムを用いない測定の簡便性は明らかでありEPIDを使用している施設も増えつつある。当院でも検出器による検証と併用ではあるが、照射業務の隙間時間を利用して手軽にFraction 0の検証を実施している。

治療中の患者QA ─PerFRACTION™ Fraction N─

 PerFRACTION™には、治療期間または治療中の患者変化をモニタリングするFraction Nがある。Fraction Nは、Fraction 0と同じ原理で解析するが、患者を透過した治療ビームをEPIDで検出しているため、患者の体型変化や体内ガス、腫瘍縮小を検出することができる。Fraction NによるIntegratedモード取得での解析は、患者を透過したTransit doseと治療計画CT画像から計算されたPredict dose、もしくは初回治療時のTransit doseとのガンマ解析による比較を治療毎に行う。また、照射ログファイルやCineモードで取得したMLCのリーフ位置を併用した線量計算もFraction 0と同様に可能である。Fraction 0と異なる点として、Fraction Nでは毎回の治療直前に撮影したCBCT画像に対して線量計算をすることができる。これにより体型変化などを加味した線量分布の評価が可能となった。

 Ⅲ期肺がん患者に対するVMAT(Volumetric modulated arctherapy)における9フラクション時のIntegratedモードで取得したTransit doseの解析例を図3に示す。初回治療時のTransitdose(図3c)に対する9フラクション時のTransit dose(図3a)の変化が、ガンマ解析によってエラー領域として表示されている(図3b)。また、線量プロファイル(図3d)では初回治療時に比べて透過ビームの強度が増加していることが確認できる。同日に

撮影された治療直前のCBCT画像(図4)では、治療計画時(図4a)より腫瘍が縮小しており(図4b)、透過ビームの強度をFractionNで解析することによって腫瘍縮小を検出できた症例であった。現在、当院では治療計画変更を検討する基準の一つとしてFraction Nの運用を目指しており、ガンマ解析の設定やパス率の基準を思索している。

おわりに

 SunCHECK™は、機器の管理から臨床のワークフローまですべてを集約することで、各種QAの作業効率を向上させることが可能となり業務時間過多になりやすい放射線治療部門にとって時間節約につながる可能性を秘めている。また、今回紹介できなかったが、治療計画時のヒューマンエラーを自動でチェックしてくれるPlanCHECK™や独立線量検証としてDoseCHECK™などの放射線治療に必要不可欠なモジュールも用意されている。

さらに、そのような放射線治療における一連のQAワークフローに加えて、治療中の治療ビームの解析による患者の体内変化などの検出にも活用できるためSunCHECK™の有用性は高いと思われ、更なる開発と発展が期待される。