MY BOOKMARK No.1 現場のDX推進を手助け TeamsとSonicDICOM

2021.11.25

熊本大学病院 医療技術部 診療放射線技術部門 

池田龍二 先生

はじめに


 働き方改革〜一億活躍社会の実現に向けて〜による、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方の実現や、新型コロナウイルス感染症拡大防止に伴う対策、対応から我々のワークフローも大きく変化している。さらに、デジタルトランスフォーメーション(Digital transformation;DX)の推進によって、データとデジタル技術の活用による、業務効率の改善、変革が求められている。
 自身の仕事以外の環境を見渡しても、Office365や、iCloud、Evernoteなどクラウドコンピューティングサービスをサブスクリプションで利用し、常に最新の情報と機能が、いつでも利用できる環境となっている。
 ニューノーマルな働き方が求められる中で、いかにデジタル技術を活用するかが課題であり、その実現に向けて私が利用しているサービスを今回「My Bookmark〜私のお気に入りの製品〜」として2つ紹介する。

“Teams”の活用による利便性の向上


 一つ目は、Microsoftの“Teams”の活用である。「チームワークを実現する安全なコラボレーション プラットフォーム」として展開しているサービスであり、企業だけでなく、教育機関、医療機関においてもDXの推進に数多く利用されている。本院も今年3月より利用を開始し、私が担当している部門においても、本アプリケーションの運用を開始した。Teams導入前は、メールに変わる仕事用のSNSとして、Slackを用いていた。Slackの運用も特別不便さはなく、情報連携、ファイル共有において効率的な運用が可能であった。課題としては、ビデオ会議やシフト管理の際に、別途アプリケーションの準備が必要である事だった。Teamsでは、これらの課題を解決する事ができ、チーム内でのさらなる業務の効率化を期待し、SlackからTeamsに変更した。
 我々が利用しているTeamsの機能として、チャット、チーム(主に掲示版)、予定表、シフト、会議である。さらに、Office 365との連携による、PlannerやStream、SharePointも活用している(図1)。
 また、これらのアプリケーションは院内端末での閲覧だけでなく、院外からのアクセスや、スマートフォンやタブレット等での閲覧も可能であり、出張時や緊急時の情報共有も可能である。マルチOSに対応し、スマートフォン専用のアプリケーションがある事によって、GUIの利便性および操作性もよく、ストレスなく利用でき、スタッフからも好評である。

図1 Teamsメイン画面

Teamsの利用によるメールの削減と情報共有の確実性


 SlackやTeamsの利用開始以降は、部門内のメール数が大幅に減少した。
 チャットは、個別連絡に用い、必要なメンバーでグループを作り情報共有を行っている。また、これらのアプリケーションは、仕事とプライベートをきちんと分ける事が可能であり、個々で、通知の時間帯や曜日を設定する事ができる(図2)。さらに、緊急時においては、強制的に通知を行う事も可能であり、状況に応じた情報連携は、メール以上に便利なツールであり、プライベートにも配慮した運用が可能ある。
 チームは、主に掲示版的な運用で活用している。部門内には、医師、看護師、診療放射線技師、事務スタッフと複数のスタッフが一緒に働いている。さらに、ローテーションで担当する場合もあり、関係者全員と情報共有するためには、掲示版が最も都合のよいツールである。情報の発信者が明確であり、情報が時系列に表示、一括で内容を検索できる機能は、チャットとは異なる使い方である。さらに、掲示する情報によっては、既読や反応を示すマークを参加者が個々に示すなども、複数のメールが行き来するよりも効率的である。
 Teamsの中では、複数のチームを作成する事ができ、部門全体だけでなく、職種で分けたチームの作成や、院内や部門内でのWG毎でチームを作成し、活用している。

図2 Teamsアプリ通知時間帯の設定

予定表とWEB会議の活用


 予定表は、部門内での研修会や会議などのスケジュール管理だけでなく、予定表からWEB会議を作成し、実施できるところがTeamsを利用している1つの理由である。「新しい会議」の設定から必要な項目を入力し、参加者を入力する事で、スタッフだけでなく、組織外のメンバーもWEB会議に追加して参加する事ができる。新型コロナウイルス感染症の拡大以降、院内外において、対面での会議からWEB会議へと多くが移行している。WEB会議におけるスケジュール管理をストレスなく実施する事が可能であり、Teamsのアプリケーションから、そのまま、“参加” のクリックで会議を始める事ができるメリットは大きい。
 さらに、会議等において議事録の作成や、欠席者への情報共有が必要であるが、Teamsでの会議を録画し、MicrosoftStream動画共有サービスを併用することで、効率的な情報伝達が可能である。このミーティングを録画できる仕組みは、会議だけでなく、勉強会での記録をローテーションのスタッフに後日共有や、モダリティベンダーや周辺機器の取扱説明会をTeamsにて実施することで、動画の取説としての保存も可能である。

シフト管理の利便性

 これまではエクセルシートを用いてシフト管理表を作成し、スタッフで共有していた。今回Teamsを利用する事になり、その中の1つの機能である「シフト」を使う事で、Teamsのアプリケーションから部門内の勤務配置を確認する事ができるようになった(図3)。
 エクセルシートで、検査室毎に担当者を並べるだけでなく、担当者毎の検査室への配置状況や空き時間の管理、人数の確認など、アプリケーションならではのメリットである。また、休暇をシステム上からリクエストする機能もあり、事前の休暇申請なども、有効に活用する事ができ、部門の配置を調整する担当者としては、時間短縮に大きく貢献している。

図3 Teamsシフト管理


Plannerによる業務分担の確認


 もう1つ、Teamsと連携して利用しているOffice 365のアプリケーションとして、Plannerがある。Plannerはタスク管理ソフトウェアで、チーム内の作業を直感的に可視化できるアプリケーションである。検査業務以外にも、様々な管理業務や3D作成業務、提出書類などがある。チーム内で効率的に役割を分担し、作業を進める事ができる(図4)。Teamsから連携してアクセスする事も可能であるが、アプリケーション単体として使う事も可能であり、個人のTo Doと合わせて利用する事もできる。
 タスク管理を表示するだけなく、チーム内でタスクの進行状況、メンバーが抱えているタスクの状況なども確認する事ができ、バランス良く業務の振り分けや、状況に応じた担当者の変更が可能である。

図4 Office365 Planner画面

SonicDICOM


 もう一つ紹介するのが、Webブラウザ型のDICOMビューアであるSonicDICOMである。SonicDICOMは、オンプレミス版(SonicDICOM PACS)とクラウド版(SonicDICOM PACS Cloud) がある。今回は、クラウド版を紹介する。
 本製品を紹介する理由としては、動作環境に柔軟性があり、DICOMビューアとしては、十分な機能を持っていると感じるためである。
 放射線部門で働いていると、臨床以外に機器管理、教育、研究において必ず1つは使い慣れたDICOMビューアが必要となる。放射線領域で扱うデータサイズは、MBからGBの単位で、保存するハードディスクの容量を直ぐに圧迫してしまう。また、1台のPCだけで完結する事はなく、データの共有や長期的な保存の必要性が発生する。そこで、候補として挙がり、利用しているのがSonicDICOMである(図5)。

図5 SonicDICOM リスト画面


WEBベースアプリケーション


 WEBベースのアプリケーションであるため、マルチOSに対応可能となっている。これは、MACとWindowsの両方でDICOMビューアを利用したいユーザにとっては朗報である。さらに、PCだけでなく、スマートフォンやタブレットPCからも参照可能であり、様々な形での情報の共有に適している。アプリケーションのインストール作業がなく、ユーザ登録後、直ぐにデータを保存、活用できるメリットは大きい。

クラウドの活用

 前述したように、膨大なデータ容量の管理やハードウェアの負荷の軽減は、クラウドコンピューティングサービスを用いたアプリケーションに任せた方がメリットは大きい。ただし、クラウドを利用するとなると、常にセキュリティが課題となる。セキュリティ対策と費用対効果のバランスは難しいところである。SonicDICOMにおいては、AES-256による暗号化や、SSL/TLS1.2によるデータ転送、リージョンのユーザによる選択、セッション管理と、安全に利用するためのセキュリティ対策が実施されている。ユーザの利用するハード側でのセキュリティ対策と合わせて、しっかりとした対策が必要である。

アプリケーションの操作性


 SonicDICOMは、画像データの保存とビューア機能だけでなく、レポート機能やデータ共有、お気に入りマーク設定、匿名化などの機能も備えている(図6)。
 さらに、一般的なビューアの機能だけでなく、MPRやデータのエクスポートの機能も備えている。MPRにおいては、サーバ側での処理となるためPCへの処理の負担も少なく、タブレット等でも容易に利用する事ができる。

図6 SonicDICOM 画像表示画面

インポートおよびエクスポート機能


 インポートの際には、DICOMDIRでの取得はもちろん、ファイル毎、フォルダ単位での取得が可能である。さらに、読み込むフォーマットはDICOM形式だけでなく、JPEG、PNG、BMP、PDFもDICOM形式に変換して取込が可能である。また、読込時に患者基本情報やAEタイトルを一括で変更した状態で保存も可能である。
 エクスポートにおいては、ファイル形式ISO、ZIPの選択や、出力形式として、DICOMDIR、フォルダ、ファイルの選択が可能であり、DICOMビューアの添付も可能となっている。

まとめ


 Teams、SonicDICOM共に、クラウド環境下でありマルチOS、どこからでもアクセス可能と利便性が良い分、セキュリティの確保には十分に注意しなければならない。
 クラウドコンピューティングサービスの活用は、業務効率を向上させる為には必要不可欠である。さらに、利用者が増える事による、サービスの向上や、機能の向上にも期待し、今後のさらなる発展に期待したいところである。

<文献>


1) 厚生労働省「: 働き方改革」の実現に向けて
2) 経済産業省: デジタルフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン) Ver.1.0
3) Microsoft Teams
4) SonicDICOM