厳選されたプログラムで行われた 第24回日本乳癌学会学術総会の 参加報告

2016.08.10

第24回日本乳癌学会学術総会の参加レポートを、石部洋一先生(水島協同病院外科)にご寄稿いただきました!

図1 会場である東京ビッグサイト
はじめに
 日本で最大の乳腺診療に関連した学会が日本乳癌学会学術総会である。2016年の学会員は1万人を超えている学会である。第24回学術総会が東京ビッグサイト(図1)で行われた。がん研有明病院乳腺センター外科部長をされている岩瀬先生が会長をされた。会長の「臨床試験の結果がなぜそうなったのか、患者に何が起こっているのか、考え得るいくつかの病態を丁寧に検討して、真の個別化医療に少しでも近づけたい」という思いから今回のテーマは「真の個別化医療を求めて」である。多くのセッションのあった3日間にわたる学会であり一部ではあるが報告する。

初 日
1. 厳選口演3

 薬物治療、局所治療、診断・病理、画像診断、基礎研究などに分けられていた。画像診断の講演を拝聴したが、新しいモダリティの研究発表が選ばれていた。司会の川崎医科大学附属川崎病院の中島先生、聖フランシスコ病院の磯本先生からは各発表がどのようなエビデンスレベルにあるかを確認しながら進められ、偏りのない討議となっていた。内容はトモシンセシス、MRI、ABUS、ソナゾイドの発表であった。特に名古屋医療センターの森田先生が発表した3Dマンモグラフィのトモシンセシスの良好な成績、九州大学の神谷先生の発表した日本人の乳腺MRI撮影時期は月経期と増殖期(生理開始1~14日)が適しているという結果には、個人的な実臨床での疑問を解決してくれた内容で興味をそそられた。

2. 日本のHBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)診療の未来を展望する
 遺伝性乳がん卵巣がん症候群は、トピックスとして挙げられている。BRCA1、2遺伝子異常がある女性は乳がんと卵巣がんを高率に罹患する。卵巣がんについては女性のがんでは少ないが、現在でも2人に1人が死亡するがんである。腹膜播種がいきなりくるのも特徴的である。現在、卵巣がんの確立されたスクリーニングはない。2次予防が難しく、1次予防として予防的卵巣、卵管切除を推奨されている。リスクは8~9割減少し、乳がんについても半分リスクが減少するといわれている。
 今後は、家族歴の問診よりハイリスクグループの拾い出しが必要である。

3. ポスター(図2)
 服部裕昭先生(東京新宿メディカルセンター、国家公務員共済組合連合会立川病院)の「iPad pro を使用した検診マンモグラフィ読影自己学習用教材の製作」の発表が興味深かった。マンモグラフィのiPad proで簡単に勉強できるmhFiles®の配布も行っていた。演者の服部先生とともに写真を撮影した。

図2 左は服部裕昭先生、右は筆者

4. イブニングセミナー
 がん研有明病院大野先生が座長のHortobagyiの治療アルゴリズムへの挑戦を拝聴した。会場の聴講者もボウティングにより参加した。テーマは、ルミナルHER2乳がんである。ルミナル、HER2乳がんはレアケースであり、経験知識を共有して立ち向かう必要がある。いくつかの仮想症例を提示しホルモン療法、分子標的治療(ハーセプチン、パージェタ)、化学療法をER、PgR、HER2などの発現レベルや再発時期、再発状況、患者の意思により治療戦略を検討していき、興味深かった。

★続きはRadFan2016年8月号にてご覧ください!