SIR2015 参加見聞記

2015.04.08

2015年2月28日(土)~3月5日(木)にジョージア州アトランタで開催されたSIR2015を、東北大学病院の長谷川哲也先生にご執筆頂きました!

SIR2015 参加見聞記

東北大学病院放射線診断科
長谷川哲也

 

はじめに

2月28日から3月5日にかけて、米国ジョージア州アトランタで開催されたSIR2015に参加した。小生は放射線科に進んで3年目になるが、国際学会への参加は2年前に演題もなく参加したECR以来2度目であった。比較対象がない身であり、本学会の規模やムード、内容等の変遷は分かりかねるが、educationやscientific session等を通じて印象に残ったことを率直に書かせていただければと思う。なお、IVR学会総会であまり参加してこなかったセッションを優先したため内容に偏りがあり、また、各分野のエキスパートの先生方にとって稚拙な内容も多々あるかと存じますが、何卒ご容赦ください。

Microsphere

マイクロスフィアに関連したセッションにはいくつか出たが、その中でも堀川雅弘先生(dotter interventional institute)らのマイクロバルーン閉塞下におけるマイクロスフィア投与に関する動物実験の話がとても面白かった(Poster Award受賞)。豚の腎動脈を用いて、フリーフロー下とフローコントロール下でEmbosphereの到達度を比較したものだが、後者の方がdeeperな塞栓が可能であるとのことだった。本邦でマイクロバルーン閉塞下TACE(B-TACE)1)が報告されて以降、マイクロバルーン閉塞下NBCA塞栓術(B-Glue)2)、同コイル塞栓術(B-coiling)3)などが本邦より相次いで報告されている。それでは、本来フリーフロー下で血流に乗せて用いるマイクロスフィアを、学会非公認であるバルーン閉塞下で投与したら一体どうなるのか、と疑問に思っていたところであり、研究会などでも度々議論に上がっていると耳にしているが、このような実験レベルでの貴重なデータを早くも知ることができて大変参考になった。今回使用されたマイクロスフィアはEmbosphere(100~300μm)であったが、同種でも異なる粒子径、あるいは異種のマイクロスフィアを用いた場合でも同様の結果を示すのか、多数分枝のある場合に均等に到達するのか、と新たな疑問も浮かび上がってくる。これに関しては今後IVR学会でも議論の対象になるかもしれないと感じた。

Dialysis

昨年から関連病院で透析シャントに対するPTAを集中的に学ばせていただいていることもあり、海外のVAIVT(バスキュラーアクセスインターベンション治療)について興味があった。Scientific sessionでは、私が参加した中ではprospectiveな報告はわずかであったが、そのうちの1つがcephalic arch stenosisに対して、通常のバルーン拡張のみのPTAとステントグラフト(VIABAHN)留置をランダム化比較したD.K.Rajan(University of Toronto)らの報告であった。結果として、ステント留置の方がフォローアップ期間における開存率が有意に高いというものであった。日常から当たり前のように感じていることであっても、いざ前向き無作為化で結果を出されると非常に説得力があった。また、この領域においてはそうした研究デザインのものはほとんどないと強調されていたのも記憶に残り、今後の参考にしていきたい。機器展示では血栓除去に用いる新たなデバイスがいくつか展示されており、興味を引くものもあった。

Biopsy and Drainage

Non-vascularに関しては、個人的にはIVR学会の「技術教育セミナー」をバイブルとしているが、この機会に一度知識を体系付けようと、いくつか関連したworkshopに参加した。頚部から骨盤部に至るまで、演者の経験や文献をもとにレビューされていた。横隔膜下や深部病変に対する非常にアクロバティックな穿刺は、提示される度に会場から溜息に似た歓声が漏れ、これには国境はないと感じた。後腹膜膿瘍に対する穿刺ルート確保のためのhydrodissection法や、膿瘍ドレナージの遺残に対するt-PA追加注入、胃壁膿瘍に対する異なるアプローチ法(経皮経胃的、内視鏡的経胃的)なども実例をもとに詳しく提示されていた。小生がまだ経験したことがないhydrodissection法であるが、標的部位にもよるがアクセスルート形成には平均で200mL以上の生理食塩水を後腹膜に投与しなければならないというのは想像以上の量であった。このようなreviewで新たな知識を得ることもあり有意義であったが、同時に自身の勉強不足を痛感した。

図1 Georgia World Congress Center

図2 メインホールの様子

(続きはRadFan2015年5月号にてご高覧ください!)