日本IVR学会関東地方会 参加見聞記

2014.08.18

 

学会風景
2014年7月12日に東京コンファレンスセンター・品川で開催された第9回日本IVR学会関東地方会参加レポートを、 聖マリアンナ医科大学放射線医学教室千早啓介先生にご執筆頂きました!

 

日本IVR学会関東地方会 参加見聞記
聖マリアンナ医科大学放射線医学教室
千早啓介

はじめに
平成26年7月12日に東京コンファレンスセンター・品川で第9回日本IVR学会関東地方会が開催された。研究会時代から数えると今回が26回目に相当する。フロアに設置されたコーヒーを頂いて会場に入ると、500席の広いホールが早々に埋まり始め例年通りの盛況であった。一般演題40題に加え救急をテーマとしたオープンディスカッションや米国の読影体制に関するランチョンセミナーが行われた。いずれも示唆に富む口演であり印象に残ったいくつかを紹介したい。

注目の球状塞栓物質(Microsphere)
Microsphereは今年初頭に本邦で発売開始された細やかな永久塞栓物質であり一般臨床の場で使用可能となった。国内の臨床試験組織であるJIVROSGでもHCCに対するDEB-TACE(drug-eluting-bead TACE)の有効性に関して前向きの検証が行われようとしており、今最も関心が集まっている話題である。HCC以外の疾患に対してもビーズを用いた治療が試みられており今大会でも早速その初期経験について2演題が発表された。一つは肝内胆管癌術後再発例に対するエンボスフィア(100~300μm)を用いたBland-embolizationである。手術適応のない肝内胆管癌に対する全身化学療法の奏効率は低く現状として確立された治療法はない。Short intervalで複数回のBland-embolizationが2症例に行われ、腫瘍の壊死・縮小とともに肝・胆道系酵素の低下が認められたとする報告である。もう一つは顔面血管腫に対してヘパスフィア(50~100μm)で浅側頭動脈を塞栓し、病変の硬化を得ている。どちらの発表でも術後の重篤な有害事象は認められていない。ビーズという新たな武器が今後の臨床の場にどのような影響を及ぼしていくのか非常に興味深く、長期的な成績に関しても報告が期待される。

マイクロバルーンカテーテル
ここ数年で全国的に普及してきたマイクロバルーンに関する発表は6演題あった。Balloon occlusion TACE(B-TACE)に限らず金属コイルやNBCAを用いた塞栓時のサポートとしても使われており、各施設で使用頻度の増加と使用方法の多様化が進んできたように思われる。
B-TACEに関する口演は3演題発表され、TACE不応例に対する施行例やガス壊疽を生じた演題の他にバルーンを完全に閉塞しない程度に膨らませ順行性の血流をわずかに残したまま緩徐に動注を行う手法が報告された。完全閉塞させることによるリスクを減らしつつ一部A-P shuntを有するものを除いてリピオドールの良好な集積を認めたとする一つの変法であった。マイクロバルーンによる動脈閉塞後の肝血流動態の変化には不確定な部分があり、腫瘍の局在やcommunicating arcadeなど側副路との関係について議論が交わされた。
B-TACEの詳細な手法は施設・術者により異なっており未だ確立されていない。会場からはMicrosphereとの使い分けに関しても触れられたが、B-TACEの評価が不十分な現状でさらにMicrosphereが出現したことで全体に戸惑いが生じているような気がした。まずはB-TACE原法のしっかりとした評価・成績が必要かと思われる。
B-TACE以外は3演題が発表された。腎仮性動脈瘤の非常に短い責任血管をマイクロバルーンアシスト下にdetachable coilで塞栓した1例と、胃全摘後の脾動脈瘤再発症例に対して膵からの脾動脈血流温存のため逸脱防止を企図して5Fバルーンカテーテルとマイクロバルーンカテーテルで脾動脈近位の瘤を挟むようにコイルでisolationが施行された1例。またA-P shuntを伴う肝被膜下出血に対して血流コントロールを目的としたバルーン閉塞下にNBCAを用いて塞栓が行われた1例も発表された。塞栓の場にマイクロバルーンカテーテルによるサポートが加わったことで安定性・安全性の増した塞栓が可能となっており、戦略の幅が広がったことを感じた。

続きは「RadFan」9月号(2014年8月末日発売)にてご高覧ください。
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