「日本IVR学会中部地方会」改め 「中部IVR研究会」〜参加見聞記〜

2014.07.24

2014年7月5日に福井県、福井市地域交流プラザで開催された第56回中部IVR研究会の参加レポートを、
岐阜大学医学部附属病院放射線科棚橋裕吉先生にご執筆頂きました!

「日本IVR学会中部地方会」改め「中部IVR研究会」〜参加見聞記〜
岐阜大学医学部附属病院放射線科
棚橋裕吉

はじめに
7月5日に福井県、福井市地域交流プラザで第56回中部IVR研究会が開催された。
日本IVR学会の独立行政法人化に伴い、
以前の名称であった「中部地方会」から「中部IVR研究会」と名称変更され初めての開催である。
当日の天候は雨天の予報であったが、幸い晴天であった。
演題数は25演題であり、我々の施設からは2演題を発表した。

塞栓術1
塞栓術1のセッションでは、6題の口演があった。最も印象に残った演題は、名古屋市立大学からの
「肺動静脈瘻コイル塞栓術後の再開通率:Time-resolved MRIおよび肺動脈造影による検討」であった。
肺動静脈瘻はシャントを介した奇異性脳梗塞の原因となり、IVR(Interventionalradiology)の発展に伴い、
塞栓術が広く施行されるようになった疾患である。塞栓術の最大の問題点は、術後の再開通であり、
その評価方法についてこれまで多くの検討がなされてきた。
従来、単純写真、造影CT(Computed Tomography)、血管造影が術後経過観察に用いられてきたが、
その再開通率は報告により大きな差があった。当検討では、Time-resolved MRIを用いて、
肺動静脈瘻の術後再開通率を検討している。16症例、24の肺動静脈瘻について検討し、
塞栓術は32回(12回:初塞栓、20回:再塞栓)であった。結果、6か月で50%に再開通がみられ、
特にBare coil塞栓例では、3か月で50%に再開通がみられた。また、再塞栓術を要した症例では、
18か月で100%に再開通がみられたと報告した。血管造影による術後再開通の確認をエンドポイントとして、
造影CTとTime-resolved MRIを比較検討すると、Time-resolved MRIの方が術後再開通の診断に優れていたと報告している。
会場から、感嘆の声が挙がり、正常肺実質からのドレナージをみている可能性や、本当に再塞栓が必要な再開通を評価
できているのか、など活発な議論が行われた。
この検討から、これまで我々が考えていた以上に再開通が起きている可能性があり、今後更なる検討が必要と思われる。

塞栓術2
塞栓術2のセッションでは新たな塞栓物質である球状塞栓物質関連が3題、
Penumbra coilの使用経験が1題、Amplatzerバスキュラープラグ関連が2題であった。
球状塞栓物質について最も印象的であった演題は、
愛知医科大学による「マイクロスフィアを用いた子宮動脈塞栓術の初期経験」である。
子宮筋腫に対する子宮動脈塞栓術において、エンボスフィアの保険認可は記憶に新しい。
当演題では、主にその手技について報告された。まず、粒子径は子宮動脈が350μm未満である
ため、粒子径500〜700μmもしくは700〜900μmを用いる。エンボスフィア
(500〜700μm) 2mLに生理食塩水7mLを加える。注入時には370mgI造影剤4.5mL、生理食塩水4.5mLを加えて使用す
る。700〜900μmのエンボスフィアでは上記にさらに370mgI造影剤4.5mL、生理食塩水4.5mL加えて使用する。
当演題では4症例に対して加療を行い、いずれの症例も筋腫縮小を得た。エンボスフィアによる塞栓は、従来の塞栓術に比較し
て、縮小率に有意な差はみられなかったものの、筋腫縮小に伴う疼痛が軽減する可能性があること、
デメリットとして造影剤量が増加すること、が示された。
Amplatzerバスキュラープラグに関連した2演題も印象深い。
1演題目は愛知県がんセンター中央病院による「門脈-下大静脈シャント塞栓術にAVPが有用であった1例」。
肝疾患のある60代男性、門脈圧亢進症による門脈-IVCシャントを生じた。シャントは2経路認めた。
Amplatzerバスキュラープラグはたわら状のAVPⅠ、3つのたわらが連なった形状のAVPⅡがあるため、
大腿静脈アプローチで、長いシャントをAVPⅡで、短いシャントをAVPⅠで塞栓した。
塞栓効果不十分の場合に追加治療を行うため、あらかじめHigh flowカテーテルをAVP留置位置より遠位にデ
リバリーしてAVPの留置を行った。AVPにて良好な塞栓を得られたため、追加治療なく終了している。
2演題目は金沢大学による「Amplatzerバスキュラープラグ補助下バルーン閉塞下逆行性経静脈的
塞栓術(B-RTO)の経験」である。当演題では、肝硬変患者に発生した左下横隔静脈を介したシャントに対して、
B-RTO後にAVPにて塞栓を追加した症例が報告された。
この症例では即座に側副血行路の縮小を得た。近年、韓国から報告された、門脈側副路に対するAVPとゼラチンスポ
ンジ(コイルを加えることも)を併用した塞栓術の有用性についてディスカッションが盛り上がった。
この報告では、AVPとゼラチンスポンジで門脈側副路を塞栓したところ、
良好な成績を得たとしているが、長期的な効果を得るためには血管内皮の障害が必要であり、
EOIは必要ではないかという意見が会場から多くみられた。今後更なる検討が待たれる。

続きは「RadFan」9月号(2014年8月末日発売)にてご高覧ください。
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