第23回日本乳癌検診学会 in 新宿

2013.12.10

11月8日(金)、9日(土)に京王プラザホテルで開催された第23日本乳癌検診学会総会への参加レポートを、国際医療福祉大学三田病院の奥田逸子先生にご執筆頂きました!
 
はじめに
今回の第23回日本乳癌検診学会総会は新宿で開催された。総会は聖マリアンナ医科大学放射線医学講座教授の中島康雄会長が提案した“乳がん検診をよりスマートに”をテーマに掲げられ、全体が構成されていた。“smart”を辞書で引いてみると、“賢い”“利口な”“効果的な”“洗練された”と記載されている。ソフトコピー診断によるデジタルマンモグラフィ検診の時代を迎え、40歳台に対し超音波検診の導入や乳がんハイリスクグループに対してはMRIスクリーニングなど新たなモダリティの導入が行われつつある。乳房の性状や個人のリスクに応じたモダリティ選択も課題として検討されており、受診者はより賢く検診を受けることが望まれる。また、特別講演で服部栄養専門学校の理事長・校長である服部幸應先生が食の大切さをご講演なされていたことは、食を考えることで乳がんの予防に貢献できるとのお考えが根底にあることが伝わってきた。すなわち、乳がん検診も勿論のこと大事であるが、知っていれば乳がんの予防に食文化が貢献しうる。このような場面からも学会会長の中島康雄先生が“日本の人々が乳がんにならないでね、幸せでいるために賢くいてね”とのメッセージが感じられた(図1、2)。
一方、検診を行う側も賢く効率的である必要があろう。例えば、今まで視覚評価していた乳腺濃度の評価に客観性を持たせることや、手間や時間を要している骨シンチグラフィを簡便に評価することなどが挙げられる。さらには、今まで複雑だったガイドラインの単純化を検討するためのシンポジウムが持たれていた。外国のガイドラインと整合性を考えることも必要であった。
 

図1 日本乳癌検診学会理事長の“ダンディーな”大内憲明先生から賞状を授与の
“スマートな”大会長の中島康雄先生

 

図2 聖マリアンナ医科大学放射線医学講座教授の中島康雄先生による会長講演。

 
乳がん診療のための新たなソフトウェア
筆者はこれまでにも乳がん検診にかかわる研究を続けてきたが、近年新たなソフトウェア開発と関係を持ち、使う機会を得たので、本学会でその一部を発表・講演させていただいた。本稿では、まずは筆者の行った講演について報告したい。
1.乳腺密度の3次元評価ソフトウェア Volpala
Volpalaを必要とした背景にはデジタルマンモグラフィの読影時の問題点である高濃度あるいは不均一高濃度乳腺がある。背景の乳腺濃度が高いと乳癌の検出率が低下するのは周知の事実である。また、高濃度乳腺は乳がんのハイリスクグループであるとされている。このため、乳腺濃度が高い場合、超音波やMRIなどの他検査法を推奨する必要がある。現在、検診マンモグラフィでは乳腺濃度の判定を記載せねばならないことが多いが、その判定基準は明確ではない。読影者が背景乳腺の濃度を目で見て判断している。筆者らの経験では、精中委認定検診マンモグラフィ読影認定資格を有する4名の医師が100症例のデジタルマンモグラフィを読影した場合、4者全員の判定が一致しない症例が3割近くもあった。背景乳腺の濃度によって他の検査法による検診を推奨する必要性を考慮すると、客観評価が必要と思われた。
乳腺密度の3次元評価ソフトウェアであるVolpalaを用いることで、背景乳腺濃度の正確な評価が可能である。マンモグラフィ撮影後データをソフトウェアに取り込み解析する。解析は約20秒程度ででき、乳腺密度の結果が%で分かりやすく表示される。アメリカから日本に入ってきたばかりであり、今後がとても楽しみである(図3、4)。
 

図3 学会2日目のモーニングセミナーでVolpalaの講演を行った
オックスフォード大学 Ralph Highnam先生と懇親会にて記念撮影。
(左から)イリモトメディカル 煎本正博先生、筆者、Ralph Highnam先生、
北斗病院 難波 清先生、ブレスト・ヘルスケア社 難波洋文氏。

 

図4 Volpalaの解析結果。数値化した背景乳腺密度が表示されており、わかりやすい。

 
 
続きは「RadFan1月号」(2013年12月末日発売)にてご高覧ください。