中国四国IVR地方会:参加印象記

2013.11.21

10月25日(金)、26日(土)に徳島大学で開催された第27回日本IVR学会中国四国地方会への参加レポートを、鳥取赤十字病院の松本顕佑先生にご執筆頂きました!


 
中国四国IVR地方会:参加印象記
鳥取赤十字病院放射線科 松本顕佑
 
はじめに
平成25年10月25日(金)、26日(土)に徳島大学にて開催された第27回日本IVR学会中国四国地方会に参加した(図1)。折しも台風27号・28号が襲い来る最中の日程となり、あわや直撃・交通麻痺なども懸念されたが台風進路は逸れ、荒天の影響を感じることもなく地方会は滞りなく開催された。一般演題45題、また特別講演なども拝聴したが、印象の残ったいくつかを紹介させていただく。
肝動注はHCCに限らず
まずは大腸癌肝転移に対する動注療法の報告から。全身化学療法不応症例に対するTAIであったが主治医も満足の良好な結果が得られたとのことであった。肝転移のみであれば奏功しやすく、副作用も軽減されるとされTAIの特徴が活きていると感じた。ウイルス性肝炎・肝硬変の適切な管理によりHCCに対するTACEの機会はゆるやかに減少しつつあるように思うが、高齢化の進行に伴いHCC以外の肝悪性腫瘍に対する治療の必要性は増してくるかもしれず、HCCに限らないTACE・TAIの有用性を感じる報告であった。
いろんな道具も使いよう
良性胆道狭窄に対するカテーテル留置について、穿刺部の孔を拡大させずに狭窄部をより拡張させる種々の方法が報告された。側孔から子カテーテルを出し並べ合わせて留置する、カテーテルを屈曲させV字型に留置する、など道具開発にも通じるIVRらしい頼もしい工夫に感銘を受けた。
カテーテルに対する工夫の他、既存のデバイスを異なる目的で使いこなすこともIVRらしいと感じる一面である。経皮経肝的門脈穿刺後の止血において止血デバイスを利用した報告があった。本来は経動脈的治療のシース抜去後に用いられる止血デバイスであったが、動脈より低圧ながらも直接圧迫不可能な肝穿刺経路に対する利用は止血デバイスの特性をよりよく活用しているように感じられた。
尿管結石砕石用レーザー(Ho:YAGレーザー)を用いて良性胆管空腸吻合部閉塞を開通せしめたという報告がみられたが、既存の概念に囚われず他分野のデバイスを流用することもIVRらしいと感じる一例であった。Ho:YAGレーザーはPTBDルートから閉塞部へ到達、空腸側からは小腸内視鏡で開通先を確認するというIVRと内視鏡の合わせ技であり他科との連携技でもあった。日常的に多岐にわたって他科との連携が求められる放射線科ではあるが、ひとつの手技においても互いの技を活かし合える力強さを感じた。また、Ho:YAGレーザーは吸収されやすく到達距離が短い(水中4mm、組織中0.5mm)ため吻合部閉塞に限らず閉塞突破については応用範囲・対象臓器も広げられるのではないかと感じ、またひとつIVRの有用な武器が増えたと感じた。
動脈塞栓術~マイクロバルーンカテーテルを用いて~
動脈塞栓術においては、細径化が進行し使用頻度が増加しつつあるマイクロバルーンカテーテルについての報告もみられた。腎血管筋脂肪腫に対するエタノール塞栓術の報告ではマイクロバルーンカテーテルを用いて腫瘍により近い細い動脈を閉塞しエタノール塞栓術を施行し梗塞範囲を最小化しており、より低侵襲なIVRを行う上での有用性が高まりつつあると感じた。
塞栓物質として多用される金属コイルについてもマイクロバルーンカテーテルとの併用に関する報告がみられた。バルーン閉塞下コイル塞栓術はコイル逸脱防止と密なパッキングに有用とされており、マイクロカテーテル・マイクロコイル用いた塞栓術も行われる。しかしながらマイクロバルーンカテーテルは通常のマイクロカテーテルより内径が小さく、コイル通過性については疑問ももたれる。報告によると商品により使用可能なマイクロコイルは制限されるものの、いずれのマイクロバルーンカテーテルでも挿入可能な離脱式コイルは多数あり、バルーン閉塞下コイル塞栓術は施行可能であるとされていた。使用可能な塞栓物質のバリエーションは多様な病変に対する強力な武器となりうると感じた。


図1 会場風景
 
続きは「RadFan1月号」(2013年12月末日発売)にてご高覧ください。