第20回 日本乳癌学会学術総会報告

2012.08.02

2012年6月28日~30日熊本で開催された第20回日本乳癌学会学術総会の参加報告を、印牧義英先生よりお送りいただきました!

第20回 日本乳癌学会学術総会報告

聖マリアンナ医科大学付属研究所 ブレスト&イメージング先端医療センター付属クリニック放射線科
印牧義英

機器展示
今回は複数箇所に会場が分散しており、
各会場で様々な展示物を見る事ができました。
熊本城
メイン会場は熊本城から徒歩圏内で、
多くの参加者が時間の合間に訪れていました。

はじめに
 今回、第20回目となる日本乳癌学会学術総会は2012年6月28日~30日までの3日間熊本で開催されました。参加者はおよそ6,000人といつもながらの盛況ぶりで熱い発表や討論が繰り広げられました。今回はその一部を紹介させていただきます。乳癌学会は外科医主導の学会ですが、外科治療や薬物療法の他に病理セミナーや画像セミナーが毎年盛り込まれ、画像と病理の対比など放射線科医にとっても基本的な勉強をする機会がいくつも盛り込まれています。特にマンモグラフィのフィルムリーディングは毎回多くの参加者がみられ、この機会にマンモグラフィのスキルアップを目指す方々の熱気が会場内に満ちあふれていました。また、乳癌診療において以前からいわれていることですが、科を超えたチーム医療の重要性が更に強く打ち出された発表も多く目立ちました。

乳癌患者に対する妊孕性温存療法
 科を超えたチーム医療という中では、上記タイトルで産婦人科の先生による「乳癌患者に対する卵子(受精卵)の凍結保存」というお話がありました。講演されたのは聖マリアンナ医科大学産婦人科 鈴木 直先生で、副題は「新しいがん・生殖医療の知見から」というものです。会場は早朝にも関わらず満員で、この問題に対する関心の高さがうかがいしれました。ご講演の内容は卵巣および卵子の一般的な解剖から性周期による卵巣の変化、年齢による自然妊娠可能な確率の違いなど基本的なことを大変わかりやすく解説していただきました。その上で、20~30歳代で罹患してしまう乳癌の増加とそれに伴う薬物療法、そのような状況下で妊娠、出産をどのようにサポートするのか、これまであまりクローズアップされなかった問題点とその対処について現在行われている治療方法や海外の現状など、わかりやすく解説していただきました。乳癌治療スケジュールとのタイミングや凍結保存方法など様々なハードルがあるものの、罹患年齢が生殖年齢に一致してしまう現実がある以上避けては通れない問題でありそれをいかにサポートしていくか大変勉強になる内容でした。

乳腺MRI
 乳腺MRIに関しては従来の広がり診断に関する発表から、サブタイプによる画像の特徴や術前化学療法に対するMRIを用いた検討などより細分化した内容に変わってきている印象を受けました。また、3.0T装置での発表も多くみられ、より高精細な画像所見での詳細な検討が主流となってきています。サブタイプではトリプルネガティブ乳癌に対する特徴的な画像所見や術前化学療法効果との関係など、トリプルネガティブ乳癌に関する発表も散見されました。特徴としては形態ではmass typeがnon mass typeより多く、T2強調画像での腫瘍内壊死を反映した高信号が多く見られるとの内容でした。また、術前化学療法ではT2強調画像での腫瘍周囲に見られる高信号が効果不良因子となりうるという興味深い発表もありました。

※続きは「Rad Fan2012年9月号」(2012年8月末発売)にてご覧下さい。