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関東IVR報告 ~豊富な演題、活発な議論、時々かみあわないけど~

2012.07.26

関東IVR報告
~豊富な演題、活発な議論、時々かみあわないけど~

林 信成(IVRコンサルタンツ)

 平成24年7月14日に東京コンファランスセンター品川で開催された第7回日本IVR学会関東地方会に参加した。関東IVRは最近、ほとんどが東京コンファランスセンター品川での開催である。品川駅に隣接して雨でも傘をささずに行けるし、会場は適度に大きく天井も高い。以前はあまりにも冷房が強すぎてふるえている参加者が少なくなかったが、昨年からはさすがに冷房も抑えられている。とはいえ、いまだにスーツを着ている人も多いので、会場も対応が難しかろう。これから夏季に開催される学会・研究会では、前もって「クールビズでお越し下さい」という案内をすれば良いのではないかと思う。
私はもう数十年前から自主的クールビズだが、きっかけは30年近く前、初めて参加したRSNAのSunday Film Panelであった。ご存じのように日本と違って著明な大御所たち自らが解答者を務められるのだが、スーツ姿の解答者の中にただ1人、普段着風の方がおられた。恒例の人物紹介で、司会者が「彼はランバージャックシャツしか着ません」と話されたのを良く覚えている。その後に訪問したミネソタ大学の当時ナンバー2だったIVR医もそうだった。「実力だけで勝負して、格好いい!」と憧れてしまったのである。もともと権力とか権威とか、大嫌いでクソ食らえと思っていたし、まあぶっちゃけノーネクタイの方が楽である。
 くだらない話で申し訳ない。とても充実した楽しい会だったのだが、報告書に書くような内容というと多くなかった。関東IVRも今や、ランチョンセミナー以外に特別企画は何もない。一般演題が47もあるのだから仕方ない。関東IVRは年に一度だけの開催だから、この地区だとそのくらいの数は当然であろうし、おそらくこの数が限界であろう。地方会だからもちろん多くは症例報告だが、そうでない発表もかなりあった。特に「初期経験」の報告が目立った。これは地方会として良いことだろう。10例以内の初期経験で感触を確かめ、他施設の意見を聴取することは、症例報告と並ぶ地方会の大切な責務である。
ランチョンセミナーは、医療経済の話であった。せっかく来ていただいた講師の先生には申し訳ないのだが、残念ながらほとんど学ぶものはなかった。知っていることや、わかっていてもどうしようもないこと、私案を提言されてはいるが到底実現可能と思われないことなどである。私たちは経済の素人だからと、意図的にレベルを下げて話されたのだろうが、もう少し専門的な、そしてできれば実現可能な具体的助言があれば良かったと思う。
 Oncologyでは、悪性小腸閉塞に対するPTEGの報告があった。全例が癌性腹膜炎の患者だったので、なるほどと思う。フロアから「なぜPEGではダメなのか」という意見があったが、腹水や播種・イレウスでPEGが施行しづらい患者は少なくないし、PTEGに手慣れていれば、これからはこちらがかなり普及しそうな気がする。驚いたのは、8例中7例まで、非破裂バルーンを使わずに経鼻胃管を目標に透視下で直接穿刺されていたことだった。甲状腺やその栄養動脈を貫通するリスクは高まるかもしれないが、それは非破裂バルーンを使っても既に報告されているし、PEGでも腹壁動脈損傷例は生じている。許容できないほど頻度が高いかどうかは、さほど時間を待たずに明らかとなるのではないか?
 最近、どの研究会でも1題は目にするマイクロバルーン閉塞下TACEの報告もあった。対象は10例で、5例が単発、5例が多発。大きい症例や栄養動脈が数多い症例を適応に施行されていた(6例では亜区域、3例では区域塞栓)。10例中5例に再発が認められたことや1例に肝動脈閉塞が生じたことを、多いと見るかどうかは難しい。だからこそ初期経験としての報告なのである。本法を最初に提唱されたのは入江先生だが、各施設がそれぞれに少しはModifyしながら施行されていると思う。きっと1年以内にはだいたいどの施設も「初期経験」を積み終わるに違いない。その後にProspectiveに、できれば多施設共同で、理想的には従来型との無作為比較で、臨床試験が立案されることを期待している。

 関西IVRと同様に、「適応」についての議論がいくつかあった。小児の肝細胞癌に対するTAEの1例は、どう治療したとしても予後が厳しい症例であった。PCI後の仮性動脈瘤では、他の方法が奏効せずに股関節に近い大腿動脈にカバードステントが挿入されていた。そして多血性骨軟部腫瘍では術前TAEが施行されていたが、それでも出血量は1140~8790mLあり、どのくらい少なくできたのかが良くわからない。IVRの世界ではこれらのように、「本当にベネフィットがあるのか不明」「他に方法がないので仕方なく」施行されるIVRが少なくない。そしてそのほとんどは、IVR医が「やらせて」と頼んだからではなく、主治医から懇願されて施行しているのである。前述の仮性動脈瘤の症例などは、外科手術の方が良いだろうとみんなが思うのだが、担当者である血管外科医の依頼だったとあっては、もう何も言えない。私はもちろん「しゃあないな」と思うのだが、数年後に保険支払い側や患者側もそう言ってくれるかどうかは定かでない。難しい時代になったものである。

 NBCA関連は関東IVRでも多く、これをテーマとしたセッションだけでも7題に上った。塞栓方法について主張が分かれたのは、関西IVRと同じである。学会なのだから、限られた画像だけを見て、行われた手技の是非を長時間論じても意味はなかろう。関東地区でも学会ではないざっくばらんな検討会はあるのだから、そういう場所で全画像を見ながらインタラクティブなディスカッションをすれば良いのではなかろうか? 急性胆嚢炎でPTGBDを受けていた患者の胆嚢動脈瘤を、NBCA・リピオドールで成功裡に塞栓した例もあった。もちろんラッキーだったのかもしれないが、PTGBDが留置されていて減圧が効いていたことも良かったのだろう。こういうLast Resort治療は決してなくならないだろうし、なくなるべきでもない。施行前に思いもよらない合併症をも想定するような説明が、社会から要求されるだけである。またNBCA・リピオドールの濃さについて、何度も議論があった。NBCA関連では演題ごとにほぼ毎回、その濃度が問題となる。これは適応外であることも災いして決定的にエビデンスレベルの高い報告が欠如していること、基礎実験の報告が少ないことなどによるのだろう。ゼラチンスポンジ細片の作り方ほど施設間のばらつきは生じないはずだから、是非とも標準化が望まれる分野である。

 その他、門脈圧亢進症関連の演題や新しいマイクロカテーテルの初期経験、乳び胸に対するリンパ管造影やCTガイド下生検での播種が疑われる症例など、面白い演題が多かった。興味のある方は是非とも抄録を参考にされたい。いずれにせよ、関東IVRとしては珍しいほど議論が活発であったし、「関西は完全に抜かれとる」と感じた1日でもあった。関西人として少し複雑な気持ちで会場を後にした。

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