GEヘルスケア・ジャパン、医療現場におけるデータ活用に新たなソリューションを提供

2019.11.27

 
~データの転送における従来の問題を解決し、慶應義塾大学病院で国内初の導入~
 

 日本の医療課題の解決に取り組むヘルスケアカンパニー、GEヘルスケア・ジャパン(株)(以下、GEヘルスケア)は、GEヘルスケアが持つオープンなデータ管理プラットフォームであるVNA(Vendor Neutral Archive)と、そのデータベースをオープンに開示するOCDB(Open Connect Database)、さらにデータ交換の高速化のためのDICOMweb技術を組み合わせてマルチベンダーと高速に接続し、臨床画像診断で活用するという国内初の取り組みを開始した。これら技術の組み合わせは、他社ビューワがVNA接続時に高速でデータへのアクセスを可能にする新しいソリューションである。これにより、異なるメーカーのビューワがVNAからデータを取得する際の遅延が解消され、同一メーカーのビューワとPACSの接続時とほぼ同じスピードでデータ転送が行えるようになる。その第一弾として、PSP㈱(以下、PSP)のビューワが接続され、慶應義塾大学病院にて臨床画像診断での利用が開始された。
 

Vender Neutral Archive +Open Connect Databaseの特長
 日本国内の多くの施設で、PACS(医療用画像管理システム)が導入されている。そのほとんどが、同一メーカーの「PACSサーバ」と「画像ビューワ」の組み合わせで運用されているが、これは多くのPACSが各社固有の独自圧縮アルゴリズムや独自通信プロトコルを用いた仕組みになっているからである。そのため、メーカーの異なる循環器やマンモグラフィなどの専用ビューワを使いたい場合、それぞれ専用のサーバが必要になり、医療機関のコスト負担を増大させている。また3D画像解析ビューワの場合、専用サーバに保管できるデータ容量には限りがあり、診療に必要なデータにアクセスできない、あるいは再取得が必要といった問題も顕在化していた。

 こうしたPACSの独自性に伴うマルチベンダービューワを利用する際の問題点を整理すると、①ビューワごとに必要となるサーバの導入コストと維持費が膨らむこと、②データが複数のサーバに分散管理されることにより患者データの俯瞰的な参照がしづらいこと、③各サーバの保管容量が少ないために必要なデータにアクセスしづらいこと、といった点が挙げられる。こうした問題を解決するために開発されたのがVNAである。

 VNAは、ベンダー中立的に画像データの保存・管理が行えることが特徴である。そのため、ここ数年、院内のデータ管理システムとして導入が急速に進んでいる。ただ、従来型のVNAは、画像のデータ通信にDICOM Q/Rを用いるため、一回につき数千枚の画像を撮像することもある近年の検査では画像表示までに長時間を要し、実用的とは言えなかった。

 実際に、慶應義塾大学病院の放射線診断科(診療部長:陣崎雅弘教授)では、年間約5万件のCT検査や、約3万件のMRI検査、その他の検査種も含めて膨大な数の検査を行っており、これらの検査画像に対し迅速かつ正確な画像診断を提供することが求められていた。発生する画像データ枚数の増大に伴い、これら画像診断専門医の生産性の向上が急務となったのである。読影ビューワは、画像診断専門医にとって、生産性を大きく左右する業務ツールだ。膨大な画像データを正確かつ迅速に診断するために、非常勤の医師も数多く診断業務に取り組んでいるが、派遣先病院と同じ使い慣れた読影ビューワが使えれば、より業務効率を向上できるとの要望が高まっていた。

 こうした課題を解決するためにGEヘルスケアでは、VNAに保存されている画像データを他社ビューワから高速にアクセスできるようDICOMwebにいち早く対応し、他社ビューワが画像を展開する際に必要な情報を事前に取得できるようにVNAのデータベースを公開した。これにより、PACSサーバとビューワが同一メーカーの場合と遜色ない速度で画像表示が可能になったのである。
 

VNA+DICOMweb+OCDBによるメリットとしては、大きく下記の3点があげられる。

■より正確な診断を目指してデータを活用する多くの医療従事者のニーズに対応し、メーカーに関係なく、必要なビューワを選びやすくした。
■VNA内のデータへ高速にアクセスできることで、ビューワごとに必要だった専用サーバやストレージ容量を低減することが可能となる。
■VNAに画像データを一元管理することで、様々なビューワがデータの種別や期間に依存せず、患者を中心とした一元的かつ俯瞰的な画像診断に寄与する。

OCDBの概念図

 

 同院の陣崎教授は次のように語っている。
「DICOMwebによる接続では当初期待していたほどのパフォーマンスが見られませんでした。しかし、GEヘルスケアとPSPが協力して継続的なチューニングを行ったことで、マルチベンダーであることを感じさせない実用的な速度での表示が可能となり、臨床での利用が可能になりました。」
「このような環境が整ったことで、将来的には様々な診療科の医師のニーズに応じたビューワの選択において柔軟な対応が可能になりました。更にAIホスピタルの実現に取り組む当院にとって、データを活用するオープンなプラットフォームを構築できたことで、様々な研究や、AIアプリケーションの開発などへのデータ活用に可能性を拡げることができると期待しています。」

 PSP代表取締役社長の八木氏は次のように語っている。
「私どもがこの仕事を長く続けてきておりますのは、ユーザーである病院様において少しでも効率よく、快適に画像をご覧いただきたいからです。複数の会社が協力することで、それぞれの良い点を活かしたシステム構築が可能なのであれば、これからも積極的に取り組んでいきたいと考えています。」

 GEヘルスケア代表取締役社長兼CEOの多田氏は以下のように語っている。
「100年を超える歴史を通じて医療業界におけるイノベーションをグローバルにリードしてきたGEヘルスケアでは、日本のお客様の課題を明らかにし、解決に向けて取り組んでまいりました。その1つに、『パートナーとの協力』があげられます。メーカーの違いという垣根を取り除き、医療従事者の皆様が本当に必要とされるシステムの導入が、この度、慶應義塾大学病院で国内初として開始されたことを、心から嬉しく思います。このようなシステムづくりを通じて、今後もより精度の高い検査の実現と、医療の質向上への貢献を目指してまいります。」
 

●お問い合わせ
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
http://www3.gehealthcare.co.jp/