バイエル薬品、「ゾーフィゴ®静注」を前立腺癌の治療薬として製造販売承認を取得~国内初のアルファ線放出医薬品

2016.03.28
骨転移のある去勢抵抗性前立腺癌患者の全生存期間を有意に延長

バイエル薬品(株)(以下バイエル薬品)は、2016年3月28日、骨転移のある去勢抵抗性前立腺癌の効能・効果で、「ゾーフィゴ®静注」(一般名:塩化ラジウム-223、以下、ゾーフィゴ®)の製造販売承認を取得した。
ゾーフィゴ®は、日本で初めてのアルファ線を放出する放射性医薬品で、骨転移巣に対して抗腫瘍効果を発揮する。ゾーフィゴ®は、国際共同第III相試験において、骨転移のある去勢抵抗性前立腺癌患者の全生存期間(OS: overall survival)を有意に延長することが確認された。2013年にEUおよび米国で発売以来、ゾーフィゴ®は世界40カ国以上で使用されており、安全性と有効性が確認されている。
なお、バイエル薬品は日本メジフィジックス株式会社との間で、日本国内におけるゾーフィゴ®の流通や営業支援に関連するサービス契約を締結している。
横浜市立大学附属市民総合医療センター泌尿器科・腎移植科部長 上村博司氏は、「進行性前立腺癌の男性の大半は骨転移を発症し、その結果、疲労や衰弱、普段の活動が難しくなるなど、日常生活に支障を来す症状に見舞われ、さらにOSが短くなる。骨転移巣に直接作用し、抗腫瘍効果を発揮するゾーフィゴ®は、重要な治療目標である進行性癌患者の生存期間を延ばすことに加えて、症候性骨関連事象(SSE:Symptomatic Skeletal Event)の初回発現までの期間を延ばすことも期待できる」と述べている。
また、ドイツ・バイエル社医療用医薬品部門の経営委員会メンバーで開発責任者のヨルグ・メラーは次のように述べている。「私たちは、このたび、ゾーフィゴ®が日本でも使用できるようになり、これまで選択肢が限られていた進行期の患者に、臨床試験でベネフィットの認められた、新しく革新的な治療法を提供できることをうれしく思う。前立腺癌は日本人男性に大きな影響を及ぼしており、今回の承認は必要とされる治療法を提供していくという、われわれの継続的な決意の表れであり、それを前進させる重要な一歩となる」。
今回の承認は、国際共同第III相試験ALSYMPCA(ALpharadin in SYMptomatic Prostate CAncer)試験のデータ、および日本人の患者を対象に塩化ラジウム-223の安全性と有効性を評価した試験のデータに基づいている。ALSYMPCA試験の中間解析では、塩化ラジウム-223はOSを有意に延長し[HR=0.681(95%CI 0.542~0.857)、p=0.00096]、標準的治療下で塩化ラジウム-223を投与した群ではOS中央値が14.0カ月であったのに対して、標準的治療下でプラセボを投与した群では11.1カ月であった。盲検解除後に実施した2回目の解析では、塩化ラジウム-223群ではプラセボ群との比較において、OSにさらなる延長が認められ、OS中央値はそれぞれ14.9カ月、11.3カ月だった[HR=0.691(95%CI 0.578~0.827)]。
ALSYMPCA試験の塩化ラジウム-223群で発現頻度の高かった有害事象(25%以上で発現)は、骨痛(塩化ラジウム群51.7%、プラセボ群63.5%)、悪心(35.5% vs 33.9%)、貧血(31.2% vs 30.6%)、疲労(26.5% vs 25.9%)及び下痢(25.7% vs 15.0%)、だった。発現頻度の高かった血液学的事象は、貧血(31.2% vs 30.6%)、好中球減少症(5.0% vs 1.0%)、汎血球減少症(2.0% vs 0%)、血小板減少症(11.5% vs 5.6%)、白血球減少症(4.2% vs 0.3%)、リンパ球減少症(0.8% vs 0.3%)であった。
バイエル薬品はゾーフィゴ®の提供を通し、前立腺癌患者の治療に新たな選択肢を提供することで、生命予後の改善ならびに患者の生活の質(QOL)向上に貢献していく。

ゾーフィゴ®について

ゾーフィゴ®の有効成分であるラジウム-223は、おもにアルファ線を放出する放射性同位元素で、これはカルシウムと同様に、骨塩(ヒドロキシアパタイト)複合体を形成することにより、骨、特に骨転移巣を選択的に標的とする。高LET(線エネルギー付与)放射線であるアルファ線は、腫瘍細胞に対して高頻度でDNA二本鎖切断を誘発し、強力な殺細胞効果をもたらす。また、アルファ線の飛程は100μm未満であるため、周辺正常組織へのダメージを最小限に抑える。

ALSYMPCA試験デザイン

ALSYMPCA試験は、症候性の骨転移を有する去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の患者を、標準的治療下で、塩化ラジウム-223を投与した群とプラセボを投与した群に無作為に割り付けた、二重盲検によるプラセボ対照国際共同第III相臨床試験である。試験の中間および最新の解析では、ゾーフィゴ®はOSの統計学的に有意な延長を示した。

去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)と骨転移について

前立腺癌は、世界の男性における癌の中で2番目に多く、日本でも増加している。日本における患者数は、胃癌、肺癌に続き第3位*と推定されている。
前立腺は男性ホルモン依存性の臓器であるため、前立腺癌の手術または放射線治療に続く薬物療法においては、内分泌療法が第一選択となる。男性ホルモンの分泌や作用を抑制する内分泌療法はほとんどの前立腺癌に対して奏効するが、数年後には抵抗性が生じ、この状態を去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)と呼ぶ。転移性のCRPC患者のおよそ10人中9人(90%)が骨転移を有し、このことは生存とQOLに影響を及ぼす。実際に、骨転移はCRPC患者における身体障害や死亡のリスクを増加させる。したがって、早期に骨関連の症状を診断し治療することは、患者にとって非常に重要な意味を持つ。
*:「がんの統計’14:がん登録・統計」国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターより

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