セント・ジュード・メディカル、日本でMediGuideTMテクノロジーの 薬事承認を取得。アジア初、杏林大学医学部付属病院に導入  新技術により心臓手術手技における X 線透視量低減への期待が高まる

2015.08.06

 セント・ジュード・メディカル(株)は、ライブで行う一連のX線透視画像の代替として、予め録画しておいたX線透視画像上で血管と心臓の構造を評価する、世界初にして唯一(注1)の3次元位置情報ナビゲーションシステムであるMediGuide(TM)テクノロジーの薬事承認を、2014年11月に厚生労働省から取得。さらに2015年7月に東京都三鷹市 杏林大学医学部付属病院が、アジア初となるMediGuide(TM)テクノロジー・システムを導入した。

 事前に録画した画像を使う事で、医師や医療従事者の心臓手技時の放射線被ばく時間を短縮できるこのシステムは、電気生理学(EP)検査室でのX線透視画像を利用する手技に大幅な変革をもたらすという。

 MediGuide(TM)テクノロジーは、自動車のドライバーが地図上で自分の車の位置を確認するのに使用する全地球測位システム(GPS)に例えることができる。MediGuide(TM)テクノロジーによって、医師は、心臓内の専用デバイスの正確な位置と姿勢を特定することができる。このテクノロジーは、磁気位置追跡システムを使ってMediGuide(TM) Livewire(TM)診断用カテーテル、CPS Excel(TM) MediGuide(TM) ガイドワイヤーなどのデバイスに埋め込まれた超小型センサーの位置を特定し、事前に録画したX線透視画像上にそれらの専用デバイスの位置情報を重ね合わせて描出する。さらに、スムースな手術の流れを妨げないために、録画された画像は、心拍の動き、呼吸変化、患者の動きに応じて自動的に補正され、リアルタイムの臨床画像が維持される。

 MediGuide(TM)テクノロジーは、医師の心臓手技時に使用するX線透視を低減できる世界で唯一の心臓用リアルタイムナビゲーションのプラットホームである。セント・ジュード・メディカルは、継続的にEP検査室での放射線被ばくを最小限に抑えるためのテクノロジーの開発、再手術の必要性の低減、臨床効率と経済効率の向上に取り組んでいるという。

 MediGuide(TM)テクノロジー・システムを使用する杏林大学医学部付属病院の放射線科 似鳥俊明教授は、
「患者様に対して、具体的に決められた被爆限度量はなく、術者の医師が放射線障害の危険度を最小化する責任を負っています。今年研究者、技師、業界の関連12団体から構成される「医療ひばく研究情報ネットワーク」により、これまで施設間でばらつきのあった医療被曝線量の目安がまとめられました。今回本院で導入のMediGuide(TM)テクノロジーは、予め録画されたX線透視画像上でナビゲーションすることにより、X線の透視時間を短縮し、その間の放射線被曝量を大幅に低減させることが期待されます。症例によって異なりますが、平均1時間半~5時間かかる手技の間、医師だけではなく技師及び患者様全てにとってメリットがある点が重要です。実際、海外の導入施設には看護師や放射線技師などのコメディカルの方はプロテクターを着用せずに手技のサポートをしている施設もあります、今後の当院での適応に期待しております」と述べている。

 循環器内科 副島京子臨床教授は、
「心臓への手技を行う際に実施しなければならないX線透視とそれにともなう有害な放射線被ばくを低減するMediGuide(TM)テクノロジーが日本においても使用できる状況になったことは画期的な出来事といえます。この革新的なシステムにより、術中頻回にX線透視を実施する必要性が少なくなります。また、これまでにないほど鮮明な心臓内部の描出が可能であり、世界中の医師、患者、医療スタッフにとって、複雑な心臓再同期療法※や心臓アブレーション手技※を向上できる大きなメリットがあります」と述べている。

 世界中で、医師が一年間に行う放射線を使用した画像検査は数十億件に上り、そのうち約3分の1は心血管患者(注2)で占められている。米国心臓協会によると、患者が医学検査で被ばくする一年間の電離放射線集団線量は、1980年から2006年にまでの間に約600%にまで増加(注3)しているという。
 その結果、人体の電離放射線被ばくは劇的に増加している。

 MediGuide(TM)テクノロジーは、シーメンス・ヘルスケア製のインターベンショナル・ラジオロジー、インターベンショナル・カーディオロジー分野における画像検査装置であるArtis zee(TM)と統合される。この2つのテクノロジーを組み合わせることで、EP手技時におけるデバイスのナビゲーションを改善することができる。

※心臓再同期療法について
 心不全に対する新しいペースメーカ療法で、ペースメーカを使って心臓のポンプ機能の改善をはかる治療方法である。日本語では心臓再同期療法と訳される、CRTとは、Cardiac Resynchronization Therapy の頭文字をとったものだ。 CRTの大きな目的は、左右の心室をペーシングし、心臓のポンプ機能を改善させることである。

 CRTを簡単に説明すると、心臓内の収縮のタイミングのズレをペースメーカ等で補正することで、正常に近いポンプ機能をとり戻す治療法である。
 日常生活ですら困難だった患者様の多くが、この治療によって、改善したと報告されている。この治療によって、患者様の生活の質(Quality of Life)を上げることができる可能性がある。
 また、欧米での大規模試験によってCRTの治療効果が認められており、心不全の治療法の1つとして、確立されつつある。薬物治療で効果の得られなかった患者様において良い結果が得られたとの報告もされている。

※心臓アブレーション手技について
 アブレーション治療は、心臓の拍動リズムに異常を来して脈拍数が多くなる、「頻脈性不整脈(心房細動など)」という病気に対し行われる治療法。
 足の付け根などの太い血管からカテーテルを入れて、心臓内部の不整脈の原因となっている部分を小さく高周波電流で焼き切る。手術が成功すれば不整脈の根本的な治療をすることができる。

MediGuideで治療できる疾患
・電気生理学的検査及び心筋焼灼:高精度のナビゲーションが可能になった事で、より正確なカテーテル誘導が可能となり、標的部位へのアプローチと正確な焼灼部位の位置確認ができることになり、より安全で効果的・効率的なアブレーションが可能となる。
・心臓再同期療法に使用する 左心室用の植込み型除細動器・ペースメーカ リード挿入:3Dで血管走行モデルを構築可能になった事で、血管の奥行きの把握が容易となり、手技時間の短縮に貢献できる。シース/カテ操作による合併症のリスク低減が可能。(スパズムや血管の解離など)

注1. 2014年3月現在
注2. Einstein AJ, et al. JAMA, 2010
注3. NCRP Report No. 160, 2009

●お問い合わせ
セント・ジュード・メディカル(株)
URL:http://www.sjm.com/corporate.aspx