シーメンス、医療の変遷を伝える「メディカルテクノロジー博物館」をリニューアル・オープン

2014.05.30

シーメンス・メディカルテクノロジー博物館は1893年以来ドイツ・エアランゲンの工場内部に併設
19世紀半ばから現在までの同社の沿革と医療技術の変遷を、マルチメディアを用いて紹介
電気刺激装置やX線装置、初期のMRIシステムまで、特長的な装置を展示

5月23日、ドイツ・エアランゲンにて、シーメンス・メディカルテクノロジー博物館(MedMuseum)のオープニングセレモニーが行われた。同博物館は、同社が160年以上にわたって注力してきたX線装置や検体検査など、医療技術の発展をわかりやすく伝えるもので、敷地面積は約400m2に及ぶ。重要なイノベーションやその発明家などを例に、19世紀半ばから現在までの医療技術の発展の歴史についてマルチメディアを用いて紹介している。歴史のコーナーは1893年までさかのぼり、X線やCT、MRIシステムなどを背景情報や技術説明とともに展示している。

同社のMedMuseumでは、シーメンスヘルスケアの前身である複数の企業についても紹介している。オープニングセレモニーに出席したヨアヒム・ヘルマン氏(バイエルン州内務大臣)は、以下のように述べている。「メイド・イン・エアランゲンのハイテク医療装置が、世界中で高い評価を得ていることを誇らしく思います。新しくなった博物館は、100年以上にもわたるエアランゲン発のサクセスストーリーを追体験させてくれます」。

医療の発展の歴史は、臨床と装置の技術発展の歴史と言っても過言ではない。歴史を通して、医療装置は病気の診断や治療、痛みの軽減、ヒトの体の構造や機能を知るために使用されてきた。シーメンスは、数々の医療技術の前進に深くかかわってきた。同社AG取締役兼ヘルスケアセクターCEOのヘルマン・レクワート氏は、「シーメンスのイノベーションが、数世代にわたって医療技術の前進を支えてきたことを大変誇らしく感じます」と、述べている。

ヘルスケアの歴史
1844年、同社の創業者であるヴェルナー・フォン・シーメンス氏が、弟のフリードリヒ氏の歯痛を和らげるために電気を用いて手当てをしたのが、シーメンスとして初の医療用途の発明だった。そのわずか3年後、シーメンスはヨハン・ゲオルグ・ハルスケ氏とともに「シーメンス&ハルスケ(Siemens & Halske)社」をベルリンに設立。電信機器に加え、医療用電気機器の製造も始めた。エアランゲンでは、エルヴィン・モーリッツ・ライニガーがマックス・ゲベルトとカール・ショール氏とともに医療技術関連の会社「ライニガー、ゲベルト&ショール(Reiniger, Gebbert & Schall: RGS)社」を設立し、X線を発見したヴィルヘルム・コンラート・レントゲン博士にX線管を提供していた。現在のシーメンスMedMuseumは、まさにこのRGSの機械工場の中にある。

「影の像」から「断面像」まで
シーメンスのMedMuseum は、ライニガー社の電気刺激装置など、初期の医療用電気機器の紹介にも多くのスペースを割いている。最も古い機器は1886年のものである。また、『影の像 (shadow images)』と名付けられたX線装置専用の展示エリアがある。1902年よりフリードリヒ・デッサウ氏*1によって設計されたX線装置は、20世紀以降、X線が医用画像の基礎となったことを裏付けている。

その後、X線における新たな発見もあり、医療の重要な要素として放射線治療が確立された。MedMuseumでは輝かしい功績のみならず、当時、X線のリスクを知らないせいで発生した犠牲についても語り継いでいる。

『スライスと断面(slices and sections)』の展示エリアは、比較的新しい医用画像を扱っている。極薄スライス画像が撮像できるCTやMRIは、人体の視覚化を可能にする。シーツ初のMR画像は1980年に撮像したピーマンの画像であったが、これも同社が関わっている。頭部の診断のために開発された「Siretom CT」(1975年)と「Magnetom MRI」(1983年)は、いずれも当時の装置が展示されている。隣接する超音波画像のエリアでは、革新的な技術が展示されている。1965年に発売した「Vidoson」は、初めてリアルタイム画像をとらえることを可能にし、それにより体内の動きも観察できるようになった。今や超音波診断装置は産婦人科領域において不可欠である。

最初の歯科用ドリルから、臨床検査室まで
MedMuseumでは、画像診断装置以外にシーメンスが注力してきた、補聴器などの医療技術も展示している。1911年に同社初の補聴器「Phonopor」を開発したルイ・ウェーバー氏のコーナーや、1890年にRGS社にて歯科用ドリルを開発したウイリアム・ニーンドーフ氏の展示もある。また、スウェーデンの発明家ルネ・エルムクビスト氏が「エレマ・ショーナンダー(Elema-Schonander)社*2」に在籍中の1950年代に発明した初の完全移植型心臓ペースメーカーもある。

一方、検体検査の分野はシーメンスの事業ポートフォリオに加わってから8年余りだが、1970年代に同社が検体検査の自動化に注力していたことをしのばせる展示もある。例えば、総合病院にも個人病院にも置かれた「Silab」システムは、より多くの検体を分析し、自動で患者情報と検査結果を関連付けることを可能にした。

展示コーナーの各所にはタブレット型のコンピュータが据え付けられ、補足情報や画像などを提供している。デジタル世界地図で、シーメンスのヘルスケアが世界でどのように成長を遂げてきたかがわかるようになっている。『アーカイブのウインドウ』という展示では、シーメンスヘルスケア・アーカイブ(Siemens Healthcare Archive)が保管する数々の記録をバーチャルに学ぶことができる。ここでは、デザインや形が医療機器の外観にどのような影響を与えているのか、なども楽しめる。
今後MedMuseumの別館では、数々のテーマに沿った特別展示などを計画している。

*1: フリードリヒ・デッサウのElektrotechnisches Laboratorium Aschaffenburg (ELA)社は、のちにRGSに買収された
*2: のちにSiemens-Elema社となる

概要
シーメンス・メディカルテクノロジー博物館(Siemens MedMuseum)
Gebbertstrasse 1, 91052 Erlangen, Germany
Phone: +49 9131 736 000
E-mail: medmuseum.healthcare@siemens.com
開館時間
火~金曜日:10:00 a.m.~5:00 p.m.
土曜日:11:00 a.m.~7:00 p.m.
休館日
月、日曜及び祝日
入館料 無料
詳細はHPをご覧ください(英語)
www.siemens.com/medmuseum

●お問い合わせ
シーメンス・ジャパン(株)
URL:http://www.siemens.com/healthcare/