書評「ここが知りたい認知症の画像診断Q&A」

2013.10.15
 現在、認知症患者は全国で462万人、予備軍(MCI)だけでも400万人といわれている。患者数に対して、認知症専門医は2,000名に満たないとされており、認知症専門医資格の有無に関わらず、多くの医師が認知症患者の診療に携わる時代となっている。
 「ここが知りたい認知症の画像診断Q&A」では、近年さらに増加している認知症の画像診断において、様々な事例やよくある質問に焦点を当て、認知症診療に関わる医師や画像診断を行う放射線科医が、認知症の臨床の場で抱くであろう疑問点を解決し、さらに読影のポイントを示す目的で刊行されている。
 本書の特徴は、画像やイラスト・図・表を全編フルカラーで掲載し、解説も簡潔にまとめることによって、“わかりやすさ”に力点が置かれている点にある。また、タイトルにも示されている通り、Q&A形式で進むため、知りたい情報を素早くピックアップすることができ、本書を一読した後も、疑問が生じたらすぐに参照することができるなど、検索性にも優れている。
 また本書は、「Part.1 認知症の診断プロセス」、「Part.2 ここが知りたい画像診断 疾患編」、「Part.3 ここが知りたい画像診断 テクニック編」、「Part.4 ここが知りたい画像診断 MRI編」、「Part.5 ここが知りたい画像診断 SPECT編」、「Part.6 ここが知りたい画像診断 MIBG編」の6つのパートからなっており、各テーマ毎、各診断毎に総論とポイント、よくある質問、その答えがわかりやすくまとめられている。「Part.4 ここが知りたい画像診断 MRI編」では、MRIの基礎から、脳容積測定を行うためのフリーソフト「VSRAD」の紹介まで行われている。さらに、「VSRAD」にで実際に萎縮を評価するポイントや、「数値と画像で乖離がある場合はどうすればよいか?」といった疑問への回答など、実践的な内容まで解説されている。認知症の各タイプ別の解説や、その診断基準、臨床において判断に迷う症例に対する考え方なども図や表を交えて解説されており、対象となる読者は診療科を選ばず、多くの医師にとって、知りたい情報が過不足なく提示されている。
 エビデンスに乗っとった読影のポイントと症例等を示す本書は、「認知症」という現代の“コモン・ディシーズ”に対して、多くの医師にとってのガイドとなる一冊である。

●ここが知りたい認知症の画像診断Q&A
編著者:松田博史・朝田 隆
発売元:株式会社harunosora
体裁:B5判、208頁、オールカラー
発売日:2013年9月30日
本体価格:3,200円(税別)
対象読者:認知症の診療に関わる医師(精神科・神経内科・放射線科・脳外科・老年科・一般内科ほか)
ISBNコード:ISBN978-4-9907364-0-8 C3047\3200E