富士フイルムと国立がん研究センター、レーザー光源搭載の内視鏡システムによる体内組織の酸素飽和度の画像化に関する臨床研究を開始

2012.08.29
 富士フイルム㈱(本社:東京都港区、社長:古森重隆、以下 富士フイルム)と独立行政法人国立がん研究センター(所在地:東京都中央区、理事長:嘉山 孝正、以下 国立がん研究センター)は、共同で、体内組織の酸素飽和度(*1)の画像化に関する臨床研究を開始した。
 同研究は、レーザー光源を搭載した内視鏡システムを使って、腫瘍とその周辺部の酸素飽和度を画像化することで、腫瘍の性質に関する基礎的データなどを取得・解析し、新たな画像診断技術の確立を目指すものである。
 通常、腫瘍部分は、血管からの酸素供給が不十分になり、正常組織と比較して酸素飽和度が低い低酸素状態になるといわれている。また、腫瘍の種類や性状などによって低酸素のレベルが異なると考えられている。この低酸素状態を正確に把握することは、粘膜の凹凸や血管形状などの形態診断だけでなく、これまで困難とされていた、腫瘍による組織の酸素消費の変化などの機能診断を可能とし、ひいては、腫瘍の良性・悪性などを判断する質的診断やこれまで見つけにくかったがんの早期発見につながると期待されている。さらに、低酸素状態の画像化により、腫瘍に適した治療方法を判断するための情報や、腫瘍の発生・成長メカニズムを解明するための情報などが得られる可能性がある。
 今回、富士フイルムは、レーザー制御技術と画像処理技術を組み合わせ、組織の酸素飽和度を画像化する技術を確立した。すでに、富士フイルムと国立がん研究センター東病院臨床開発センター臨床腫瘍病理部部長 落合淳志氏らのグループ、消化管腫瘍科副科長 金子和弘氏らのグループが共同で行った動物実験では、腫瘍の成長に伴って、腫瘍部分が低酸素状態へ変化する様子を鮮明に描出することができた。さらに、この技術を搭載した内視鏡システムにより、生きている動物の体内組織での酸素飽和度の画像化に世界で初めて成功した。
 今後の臨床研究では、内視鏡システムを用いて、腫瘍とその周辺の酸素状態がどのように異なるかを観察し、腫瘍の性質に関する基礎的データなどを取得・蓄積していく。そして、これらのデータを、国立がん研究センターの臨床知見により解析することで、酸素飽和度の画像化を利用した、新たな画像診断技術を確立できるように取り組むという。

*1 赤血球のヘモグロビンのうち、酸素と結合しているヘモグロビンの割合。

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