フィリップス、Philips MRI 先端技術講演会2017を開催

2017.09.06

 Philips MRI先端技術講演会2017が、8月26日(土)、コクヨホール(東京都港区)にて開催された。今回の1.5T MRI新製品Prodiva 1.5T CXを実際に使用した医師や診療放射線技師によるセミナーやディスカッションが行われ、非常に充実した内容となった。また、会場には1.5T MRI新製品も展示されていた。
 開会の挨拶では、堤 浩幸氏(フィリップス代表取締役社長)が「本日は世界で日本が初めての発表となる新製品Prodiva 1.5T CXをご紹介すると共に、ヘルステクノロジーをベースに進化を続ける、弊社の今後の展望をお伝えしたい」と述べた。
 門原 浩氏(フィリップスDIビジネスマネージャー)によると、今回のProdiva 1.5T CXは、世界に先がけてまず日本で上市され、開発当初から日本スタッフが携わっているという。また、現在の医療現場の課題を追求したシステムとして掲げた3つのコンセプトを紹介。1つめは最新のPhilips MRI先端技術講演会2017が、8月26日(土)、コクヨホール(東京都港区)にて開催された。今回の1.5T MRI新製品Prodiva 1.5T CXを実際に使用した医師や診療放射線技師によるセミナーやディスカッションが行われ、非常に充実した内容となった。また、会場には1.5T MRI新製品も展示されていた送受信デジタル制御システムによる、妥協のない高画質な画像提供(dSync technology)。2つめはテーブルの最低高さやコイルの軽量化による、快適なワークフローと検査効率向上の実現(Breeze Workflow)。3つめは低コストと稼働時間削減の維持による、投資収益率の高さ(ROI:Return on Investment) と述べた。

フィリップス代表取締役社長
堤 浩幸氏
フィリップスDIビジネスマネージャー
門原 浩氏

第一部 1.5T MRI新製品の運用および臨床応用
 松本卓弥氏(聖隷三方原病院画像診断部)は「Prodiva 1.5T の導入にあたり院内の改修を行い、結果、撮影室の縮小と読影室・患者待合室の拡張が実現。MRI自体も以前に比べてコンパクトな印象。運用においては、軽量コイルやdS-Interfareによりワークフローが簡便化され、撮像時間が短縮。検査実績においても、既存のMRIでは脳と脊髄領域のみで90%以上を占めていたが、Prodiva 1.5T CXではフレキシブルなコイルにより、筋骨格や骨盤、腹部領域にも対応。また、寝台の最低ベッド高さが47cmになったことで患者様の負担も軽減され、実際に使用した患者からは、頭上の照明や出口が見えることで圧迫感がなかったというお声もいただき、閉所恐怖症患者の撮像も可能となった」と述べた。
 高橋 護氏(聖隷三方原病院放射線科)は、臨床応用の視点から、世界初の臨床検査を行ったProdiva 1.5T CXの凄さを解説した。まずは撮像部位に死角がないことを挙げた。「頭部、胸部、頸部、腹部、乳腺、前立腺など、歪みやアーチファクトが出やすい領域においても、非常に良好な画像を得ることができ、問題なく撮影できた。次に、3Tに向いている検査(4D flow、ASL、MRS)や、VISTA(T2 VISTA、3D STIR、ダイナミック)においても、非常に使いやすく、診断に十分な画像が得られた。また、軽くしなやかになったフレキシブルなコイルの有用性について、コイルを膝に巻きつけ、撮影した画像であるが、3Tで撮影したような画質であった。全身撮影(Whole Body DWI Whole Spine)においては、寝台にコイルが埋めこまれているためワークフローも簡便で、現在ではWhole Body DWIをルーチン化し、1日約30件撮影を行っている」と述べた。

聖隷三方原病院画像診断部
松本卓弥氏
聖隷三方原病院放射線科
高橋 護氏

第二部 Compressed SENSE 第二部 シンポジウム
 まずはじめに、小原 真氏(フィリップスMR Clinical Science)からCompressed SENSE(以下:CS)による技術解説があり「これまで高倍速化によるノイズの増幅や情報の劣化が課題であったが、CSではDenoise効果を用い、さらにアーチファクトを最大限に除去することで、更なる高速化と最小限の情報劣化を実現していく。CSにより、患者様の負担が軽減されるだけでなく、それぞれの病院の現状や課題に合ったフレキシブルな検査が可能となる。今後は2D、3D、全身領域への展開を目指している」と述べた。
 続いて野田誠一郎氏(熊本中央病院)は、体幹部・心臓領域については、「3.0Tを体幹部にて検診する際、当院ではT2 Prostate Viewというシーケンスを使用しているが、CSと使用していないものと、圧縮センシングを使用しているものと画像はほぼ同等である。時間的にもオリジナルのものは3分16秒だが、CSを使ったものは2分15秒で短いのが利点だ。また膀胱癌でも3.0TでもBalanced TTEというシーケンスで撮像しているが、CSを使うと、ほぼ画質の劣化がみられない良好な画像が得られる」と述べた。野田氏は、心臓領域においてもCSを併用できるようになっていて、1.5T Whole Heart Coronary MRAで心臓ドックで使用している。氏は「CSは非常に臨床的有用性が高く、時間短縮や画質の向上につながり、MR検査はより増大するだろう」と今後の見通しを示した。

フィリップスMR Clinical Science
小原 真氏
熊本中央病院
野田誠一郎氏

東京女子歯科大学病院
阿部香代子氏
岐阜大学医学部付属病院
五島 聡氏

 阿部香代子氏(東京女子歯科大学病院)は、脳神経領域のMRI撮影に求められることは、頭部MRAや視神経炎の評価、脂肪抑制など多岐にわたるため、CSに期待することとして、画質を保ったうえでの撮像時間の短縮を挙げた。TOF法のMRAでは、CSを用い、ほぼ同等レベルの画像を得られるだけでなく、撮像時間も半分に短縮されている。PC法のMRVや3Dシークエンスでも同じ結果が得られた。また撮像時間は従来と同じにして、より高分解能な画像に挑戦した場合、CSではより高分解能な画像が得られた。これらのことから、MRA、MRVはCS併用が有用な撮影法があることが分かる。氏は最後に「画質を保ち、撮影時間短縮が可能な新しい技術として、臨床応用の幅も広がるCSは非常に期待できる」と述べた。
 最後に、五島 聡氏(岐阜大学医学部付属病院)は、我々の施設では、CSをMRCPに用い、58人の患者で検討した。定量評価で一番有用なのは、CSを使い、7.5倍速で45秒撮影のものがもっとも効率が高く、有用であった。同じ患者で3種類のもので撮像したが、放射線科医師でもなかなか区別がつかない程、CSの7.5倍速の画質は優れている。具体的に言うと、レシオでみると統計的にも有意差がみられなかった」。また、氏は「ダイナミックでも、SNRを使ったものでもCSの方が高い。CSの10秒の呼吸停止は素晴らしい。今後CSは、高速化に進むか解像度をさらに追求するのか二つの方向性を示すのではないだろうか」と述べた。