JIRA・JART、共催による第5回モニタ精度管理セミナーを開催

2017.07.11

 一般社団法人日本画像医療システム工業会(以下:JIRA)画像システム部会モニタ診断システム委
員会は、JESRA X-0093「医用画像表示用モニタの品質管理に関するガイドライン(以下:JESRA 
QAガイドライン)」を策定し、モニタ診断における画像表示品質の一貫性を担保すべくモニタ品質
管理の普及活動、調査・情報収集などの活動をしている。その一環として公益社団法人日本診療放
射線技師会(以下:JART)との共同アンケート「モニタ品質管理に関する実態調査」を通じて、
医療現場で使用される液晶モニタに関する実態調査を行ってきた。実態調査からは日々発生する画
像表示のヒヤリハットが明らかになっている。例えば、2016年の実態調査では不適切な輝度・解
像度・階調や環境光による見落とし、再撮影の発生、他院提供での診断の差など実に611件のヒヤ
リハット事例が報告された。この状況を受けてJARTとJIRAは、2013年より年1回のペースで共催
によるモニタ精度管理セミナーを開催して診療放射線技師を対象に品質管理の普及促進の活動を
行っている。

松田惠雄氏(公益社団法人日本診療放射線技師会理事)による医用画像表示用モニタの特徴と品質管理の実態

 本セミナーの特徴の一つは、メーカが自社の品質管理手法やガイドラインを一方的に講義するの
ではなく、ユーザである診療放射線技師を講師として、液晶モニタの構造や特性を講義し、なぜ
医用画像の表示に医用モニタが必要になるか制度上や物理特性の面から解説し、定期的な精度管
理の必要性を説明していることが挙げられる。また今回は、過去の受講者からの要望を受けて、
実際に医療現場でモニタ品質管理を行なっている診療放射線技師が自施設での体験談を報告され
た。実際のモニタ管理業務をより身近に感じもらうことができて、有意義なセミナーになったと
感じている。さらにこのセミナーでは、メーカとベンダーが持ち寄ったモニタ実機を使って臨床
現場で起こり得るヒヤリハットを体験してもらうのも、もう一つの特徴となっている。ヒヤリハ
ット体験のタイトルは以下の通りである。

環境光による低コントラストへの影響

1.LCDモニタの構造とモニタの不具合
2.モニタ解像度と画像表示
3.医用画像表示用モニタと情報機器用モニタの性能の差
4.異なる階調特性の比較
5.環境光による低コントラスト部分への影響
6.輝度による視認性の差と環境光の影響

輝度による視認性の差と環境光の影響

 また毎回JIRAの講師がJESRA QAガイドラインを解説し、本来モニタの管理者が行っているJESRA
QAガイドラインに沿った定期的な試験である不変性試験を実施して、報告書作成までの手順を体験してもらっている。
 JARTとJIRAは、医用モニタの品質管理が画像精度の維持管理の重要な項目になると考えている。
またこの精度管理には、診療放射線技師が中心となってその役割を果たすと考えてる。そのために
は今後も継続した啓発活動の一環として、このセミナーの開催を続けていくことを目指している。