日本泌尿器科学会、「ロボット支援手術に対する新たな保険適応に関して」の記者会見を開催

2016.03.31
藤澤正人氏
寺地敏郎氏
 日本泌尿器科学会は2016年3月30日にホテル東京ガーデンパレス(東京都文京区)にて、「ロボット支援手術に対する新たな保険適応に関して」の記者発表を行った。
 藤澤正人氏(同理事長、神戸大学大学院教授、神戸大学病院長)より、今回の保険適応の背景と今後の展望についての説明が行われた。「腎部分切除術で求められることは、低侵襲であること、技術として再現性・実効性があること、修得性・安全性の確保があることである。ダヴィンチサージカルシステム等を用いたロボット支援による腎部分切除術は、従来の腹腔鏡下手術に比べて、阻血時間が短く、より低侵襲で、腫瘍切除操作、縫合操作、阻血時間の観点から有用であると考えられ、患者さんの予後の良さやQOLの向上が期待できる。また5年生存率も従来の方法と大きな差がなく、すでに2014年9月以降、全国14の実施施設において先進医療として認められており、近年のロボットによる腎部分切除術は、2014年370例、2015年382例執り行われている。腎機能の温存、癌の根治性、合併症の軽減この3つを担保した形で手術が行われる優位性も明らかになっている。しかしこれらの手術は先進医療を奨励された例も含むが、それ以外は自費で行われていた。そのため我々は「先進医療B」の位置づけで保険適応申請に臨んだ次第である」と同氏は保険収載へのロードマップを解説した。「症例の解析データを踏まえ「先進医療B」として行われた臨床試験で、根治性と腎機能温存(阻血時間25分以内)の達成率に関して、良好な結果を得ることができた。これにより、「ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術」は普及性、有効性、効率性、安全性、技術成熟度および社会的妥当性の観点から、平成28年度診療報酬改定に伴い本年4月より保健適応に承認された。保険点数は70,730であり、これまでの実費負担が3割に抑えることで、より多くの患者さんの早期回復、早期社会復帰に寄与する本術が安全に普及し、標準術式として定着するよう支援していきたい」と続けた。
 さらに、「今後はこれまで腹腔鏡では困難とされてきた難度の高いT1b腫瘍、腎部門腫瘍、完全埋没ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術型腫瘍に対しても、同術では手振れも少なく、低侵襲で開腹手術と同等の腫瘍切除が可能であり、適応拡大につながると考えられる」と同氏は結んだ。
 質疑応答では、寺地敏郎氏(日本泌尿器内視鏡学会理事長、東海大学教授、ロボット支援手術センター長)よりプロクター制度についての解説があった。「ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術の1例目の施術を行う時は必ず腎部分切除に対応した「泌尿器内視鏡学会プロクター」を指導医として招聘すること。プロクターは、ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘の執刀を40例以上行い、学会へ同術に関する発表を行った医師が審査委員会により認定される。現在、第1回目の作年の認定では95名され、第2回目の今年度では80名程が認定される予定である」と同術の技術習得の信頼性の確保も提言した。

※K773-5,da Vinciを用いた腹腔鏡下腎悪性腫瘍手術は、径7cm以下で転移病巣のない悪性腫瘍に対する腎部分切除術を行った場合に限り算定される。また、同手術を行うには、「泌尿器領域におけるda Vinci支援手術を行うに当たってのガイドライン」を遵守すること。

URL:https://www.urol.or.jp/