シーメンスヘルスケア、事業戦略説明会を開催

2016.02.09
代表取締役社長兼CEO森 秀顕氏
会場風景
 2016年2月4日、ゲートシティ大崎ウエストタワー(東京都品川区)にてシーメンスヘルスケア事業戦略説明会が開催された。会場に集まった報道陣を前に、代表取締役社長兼CEO森 秀顕氏が今後の事業展開について語った。
同社は120年にわたりイノベーションの歴史を刻んできた。同社は、順調な成長を続け、近年の売上シェアの4分の1は日本を含むアジア・オセアニア地域が占めるという。
 同社は2015年10月、変化の激しい市場関係に柔軟に対応し、更なるグローバル化をはかるためシーメンス傘下で業績の良いヘルスケア部門を独立させ、新たな組織体制を編成した。3つの部門とカスタマーサービスからなる従来の組織を細分化し、ビジネスエリアを5つの部門に分け、各部門をフレキシブルに融合させたサービスを提供する。 1/MRI、CT、X線、核医学などを取り扱う「ダイアグノスティックイメージング」部門 2/血管撮影装置やSU、放射線治療ソリューション等治療にフォーカスし、新設された「アドバンスドセラピー」部門 3/ダイアグノスティクスから独立した「超音波」部門 4/検査を主とする「ラボラトリーダイアグノスティクス」部門 5/「ポイントオブケア(POC)」部門、さらに6つ目としてこの先ニーズが高まると予想される「遺伝子検査」部門の構築も今後の視野に入れているという。これらの部門をそれぞれ連携させ、新たな “サービス”を提供し、海外地域に展開していくという構想があるそうだ。
 日本法人であるシーメンス・ジャパン(株)も足並みを揃え、先月1月よりシーメンスヘルスケア(株)を独立させた。近年、日本では顧客を取りまく市場環境が変化し、医療費総額は高騰しつづけ、病院数は統廃合や買収により減少傾向へ、さらに77万ある急性期病床は2025年には30%減の53万に激減する見込みである。そこで森氏は、日本における3つの新たなる戦略と方向性を例をあげながら説明した。
・「事業ポートフォリオ、販売チャネルを拡充」
 遺伝子診断事業等の拡大や中小規模向けクリニックを対象とした低価格マーケットに対応する製品ポートフォリオを拡充させる。また、ブラジルで実際に導入されているというMR装置のリモート操作など、新たなサービスの拡充をはかる。
・「顧客のニーズ、購買プロセスの多様化に対応」
 意思決定に関与を強める経営層へのバリュー・ポートフォリオを強化、マーケティング戦略の方向性を拡大、パートナービジネス、キーアカウントへの対応を強化させる。
・「アジア地域の緊密な連携」
 顧客の中国や東南アジアといった他地域進出や、旅行会社とタイアップしてメディカルツーリズムのサポートを行うといったような事業を展開していく。また、アジア地域とベストプラクティスの共有やノウハウの提供で互いに成長すること、日本国内にとどまらないグローバルな人材育成や交流を推進していく。
 同社はCOF(Clinical、Operational、Financial)の3つのValue(価値)をコンセプトとして掲げている。「これらのイノベーションを通じて、多くの人々のQOLを向上させ、評価された利益をR&Dに投下し「イノベーションサイクル」を回すことで健全な成長を続けていく。それが、すべてのステークホルダーの期待に応えることになり、同社のミッションである。その先のビジョンは、高品位な製品を顧客に提供するだけの装置ベンダーとしてだけでなく、経営の効率化といったコンサルティングアドバイスや、リスクのシェアをも担うWin-Winの関係が築けるようなビジネスモデルを提案する真のパートナー、すなわち最高のValue(価値)の提供者になることだ。」と、語る森氏が印象的であった。
 また、現在行われている具体的な取り組みについても森氏から説明があった。
 RSNA2015で展示されたMR-PET装置「Biograph mMR」は日本でも導入予定であり、今後新モデルも開発予定とのこと。
 また、同社が保持するビッグデータを活用した新しいクラウドサービスteamplay(チームプレイ)が、来たるITEM2016で発表される予定となっている。teamplay(チームプレイ)はCTやMRI検査などから得られる画像診断情報を世界中のユーザーから収集し、フィードバックするクラウドサービスである。マイクロソフト社と提携し、直感的なインターフェイスのビューアを搭載し、放射線量や検査件数、検査時間をシェアすることができ、ユーザーは客観的に効率化や検査の度合いを把握・評価できるようになる。DICOM規格を採用しており、他社装置の画像にも対応可能である。
 新しい同社“サービス”の最新事例としては、2015年4月18日に締結された相良病院(鹿児島県鹿児島市)とのパートナーシップ契約が説明された。ハイエンド超音波画像診断装置『ACUSON S Family HELX Evolution』を計5台納入し、本年1月より乳腺音波検査用に国内初の稼動を開始した。このような乳がん健診のトレンドに対応した装置を導入するといったような設立・運営に対する包括的なソリューション提供や、女性医療のロールモデル確立のための研究、かごしま女性フォーラムなどのイベントや乳がん患者支援を行うNPO法人への協賛、さらには乳がん検診啓発のパンフレット作成などのCSR活動などにも取り組んでいる。現在、既に数件の施設と新たな導入交渉が進んでいるという。