富士フイルム、遠隔画像診断治療補助システム「i-Stroke」新製品発表会を開催

2011.06.22
玉井光一氏
村山雄一氏
中村博明氏
高尾洋之氏
平井治郎氏
i-Stroke
 富士フイルム(株)は6月16日、富士フイルム本社(東京都港区)にて、遠隔画像診断治療補助システム「i-Stroke(アイストローク)」の新製品発表会を開催した。
 はじめに玉井光一氏(同社取締役執行役員ヘルスケア事業統括本部メディカルシステム事業部長)が同社メディカル事業部の取り組みについて説明を行った。玉井氏はその中で、同社が提供する医療向けITソリューション「SYNAPSE」について、世界中で医療現場の連携に使用されていると解説。また、ITシステムによる更なる医療への貢献のため、同社は「医療連携の拡大」を目指すと語った。更に同氏は「医療連携の拡大」を実現する為のシステムとして、東京慈恵会医科大学との共同研究により生まれた「i-Stroke」を紹介。「i-Stroke」は、院内でも院外でも、スマートフォンを用いて患者情報が参照できる医療ネットワークシステムであり、「院内情報システム、地域医療連携にとどまらない、医師同士の連携が可能であり、特に緊急医療現場におけるチーム医療のサポートへの活躍を期待している」と述べた。
 次に村山雄一氏(東京慈恵会医科大学脳神経外科学講座教授)が「脳卒中医療における最新状況と新しいIT医療ネットワークの構築」と題し、講演を行った。その中で村山氏は脳血管障害における迅速な治療の必要性を説明。脳梗塞の急性期においては、治療を行うまでの時間が患者のその後の人生を大きく変えると述べ、t-PAを用いた血栓溶解療法では3時間以内、血栓除去デバイスを使用した機械的血栓除去術では8時間以内に治療を行う必要があると語った。また、チーム医療である脳梗塞の急性期治療では、チーム内での早い段階での情報共有が、正確な診断と適切な治療までの時間を短縮させると解説。「i-Stroke」を導入することで、専門医が院外にいても院内の医師による検査の結果を確認することができるため、院外から適切な指示をすることが可能となり、治療までの時間短縮に大きく貢献が期待できると述べた。同氏は「i-Stroke」の特徴について「3Dなどの情報量の多い画像も参照することができ、動作もスムーズである為、症状の確認に有用である」と説明し、「院外にいる上級医師が院内から判断を求められたとき、迅速に適切な指示ができる患者にとってのメリットと共に、症状の確認の為に毎回病院へ向かう必要がなくなった医師の負荷軽減というメリットもある」と「i-Stroke」を使用した実感を語った。
 続いて中村博明氏(同社ヘルスケア事業統括本部メディカルシステム事業部ITソリューション部担当部長)により、「i-Stroke」の製品紹介が行われた。まず同氏は医療チーム間のコミュニケーションツールとして、チームに対して一斉に緊急呼び出しが可能なストロークコール機能、多数の医師の意見を反映させることを目的とし、時系列に医療スタッフのコメントをtwitter風に表示するtweet機能、患者転送時に施設間での患者基本情報や検査画像を転送できる施設間連携機能を紹介。その他、医療情報の確認を支援する機能として、緊急時における検査と治療の経過を一目で把握できるタイムライン表示機能、手術室の映像を院外でもリアルタイムに見ることができる手術映像のストリーミング機能などがあると解説。また同氏は「i-Stroke」の今後の展望について「i-Strokeを救急車両へ搭載し、患者情報を更に早く把握できるようになれば、発症から治療までの時間をより短縮できる」と語り、救急医療サポートシステムとして広く普及させる為に、脳卒中以外の救急疾患向けの機能についても拡充を目指すと述べた。
 会見の最後には高尾洋之氏(東京慈恵会医科大学脳神経外科学講座助教)と平井治郎氏(富士フイルムメディカル社代表取締役社長)が同席し質疑応答の時間が設けられた。その中で高尾氏は「今までは救急車両のデータは救急室にまでしか届かなかったが、救急車両へのi-Strokeの導入が実現すれば医師一人一人が既に持っているスマートフォンを使用して、どこにいても患者の情報が参照できる」と述べ、改めて既存システムとの違いを示した。