第3回JART-JIRAモニタ精度管理セミナーが開催

2015.06.29
津坂昌利氏
石塚圭一氏
会場風景
デモンストレーションの様子
 公益社団法人日本診療放射線技師会(JART)と一般社団法人日本画像医療システム工業会(JIRA)の共同開催による「JART-JIRAモニタ精度管理セミナー」が、6月27日、JART事務所講義室(東京都港区)で行われた。今回で3回目となる本セミナーは、座学だけでなく、実機を使って精度管理の体験ができることが特長で、年々内容の充実が図られている。
 はじめに、津坂昌利氏(名古屋大学)による医用画像表示モニタの特徴と品質管理の実態についての講演が行われた。「精度管理のためには、液晶モニタの構造から理解し、仕様書に書いてある概略を理解できるようになること、そして汎用液晶モニタと医療用高精細液晶モニタの違いを正しく理解することが重要」と説く。液晶パネルの種類、「視野角特性」の意味、コントラスト比、解像度と画素ピッチの関係性といったハードウェア性能のほか、輝度特性(経時的変化、複数モニタ間の輝度差、キャリブレーション推奨輝度)、表示階調といった、診断に直結する性能について、その原理と、品質管理において注意すべきポイントを解説した。
 また、同氏はJART、JIRA共同で実施した「モニタ品質管理に関する実態調査」のアンケート結果(2014年12月調べ。対象:JART会員。期間:1ヶ月間。回答:1,019名)を紹介。アンケートでは、モニタ診断におけるヒヤリハット事例は611件にのぼり、「適切な輝度や階調のモニタで診断されていなかった(118件)」「診断用モニタとその他のモニタで所見が異なった(107件)」等の結果が報告されている。多くの施設でモニタ診断が行われているにもかかわらず、院内の理解不足、人員/予算の問題で診断用モニタの品質管理を施設が業務として認めていない場合が多いという。このような課題に対して、モニタ品質管理の重要性を広報するべく開催されている本セミナーは年々成果を結び、診断用モニタの品質管理の実態調査結果によると、2013年1月時点のアンケート(回答:1,039名)と2014年12月時点のアンケート(回答:949名)を比較すると品質管理実施率は改善傾向がみられたという。「診療放射線技師が液晶モニタの構造について正しい知識を持ち、半年に1回、最低年1回の管理をして欲しい。診療放射線技師による実施が困難な場合は、業務委託として、年1回の校正をすることを導入前の仕様書に入れておくのも一案だ」と、正しい診断のためにも品質管理の重要性を呼びかけた。
 つづけて、JIRA医用画像システム部会モニタ診断システム委員会による、各社の医用モニタ実機でのデモンストレーションが行われた。LCDモニタの構造とモニタの不具合の体験、モダリティごとのモニタ解像度と画像表示の違いの体験、医用画像表示用モニタと情報機器用モニタの性能比較、3MPモニタを用いたGSDFとガンマ2.2等の表示比較、液晶プロジェクターによるGSDF(シミュレーション)と一般の表示特性の比較、輝度による視認性の差と環境光の影響、の6つのヒヤリハットを経験できるトレーニングであった。
 その後、石塚圭一氏(JIRA医用画像システム部会モニタ診断システム委員会)による、モニタの品質管理に関するガイドライン(JESRA X-0093)の講義では、ガイドラインの概略と、精度管理試験の内容、ガイドライン不合格時の対応について説明が行われた。続けて実機を使ったハンズオントレーニングで、JESRA X-0093の試験の実際の流れを体験するデモンストレーションが行われた。会場の各所では参加者同士で、モニタの品質管理に関する日々の疑問を活発に交わす様子がみられた。