公益社団法人日本診療放射線技師会、『モニタ精度管理セミナー』を開催

2014.07.31
津坂昌利氏
安田哲也氏
セミナーの様子
 公益社団法人日本診療放射線技師会によるモニタ精度管理セミナーが、7月19日、同事務所講義室(東京都港区)で行われた。本セミナーは一般社団法人日本画像医療システム工業と参加企業の協賛によるもの。汎用モニタと医用画像表示モニタの違いを理解し、モニタの精度管理を実体験できるセミナーであった。

 はじめに、津坂昌利氏(名古屋大学)による医用画像表示モニタの特徴と品質管理の実態についての講演が行われた。「普段何気なく使っている液晶モニタの構造から理解する必要がある」と、モニタの仕様の見方を説く同氏。
 例えば、医用画像表示モニタと汎用モニタでは、バックライトの方式が異なる。一般的なモニタには上下部のみライトが配備されているエッジ型が多いが、医用画像表示モニタにはパネルの直下部にライトがある直下型が一般的であり、高輝度かつ光による画像のムラが少ない。医用画像表示モニタを使用する事がよりよい解析度での読影を可能にする。さらに同氏は、両モニタの階調の違いについて解説した。汎用液晶モニタはガンマ2.2を使用しており、中間レベルのコントラストが高い階調となる。医用画像表示モニタはGSDF(Grayscale Standard Display Function)を採用している。GSDFは信号レベル全域にわたり均等なコントラストを得るための階調特性であり、DICOM規格はGSDFを推奨しており、PACS、IHEでは標準になっている。「コントラストが高い汎用液晶モニタ(γ2.2)の方が鮮明に映り読影しやすい、といった誤解を持つ方が時々見受けられる。重要なことは診療放射線技師が液晶モニタの構造について正しい情報を知り、医師に医用画像表示モニタの使用を勧めることが大事である」「診療放射線技師の検像により階調を調整された画像がPACSを通り、医師の読影モニタにきちんと再現されることが重要」と同氏は呼びかけた。
 同氏によると、よりよい読影のためには液晶モニタのキャリブレーションも重要である。「液晶モニタはできれば半年に1 度、最低でも年に1度はキャリブレーションを行うべきである。最大輝度で使用し続けると、液晶モニタの消耗が早まってしまう。長期的な安定性を考慮するのであれば、キャリブレーション輝度を設定し、推奨輝度設定を保つのが質の高い液晶モニタを維持する秘訣である。さらに、バックライトはこまめに消し、起動時には必ずTG18-QCパターンや基準臨床画像などの目視試験を行うなどの日々のこまめな管理を徹底したい」と注意を喚起し、実際の診療放射線技師のヒヤリハット経験を紹介した。
 講演後には、JIRA医用画像システム部会モニタ診断システム委員会による各社提供の実物でのモニタヒヤリハット体験も行われた。多くの診療放射線技師は画像の印象が異なるというヒヤリハットを体験しており、65%の方が何らか のヒヤリハットを体験している。
 本セミナーではLCDモニタの構造とモニタの不具合、医用画像表示モニタと情報機器用モニタの性能の差、モニタ解像度と画像表示、3MPモニタでGSDFとガンマ2.2等の比較、液晶プロジェクターでGSDFシミュレーションと一般の表示特性を比較、輝度による視認性の差と環境光の影響、の6つの体験が行われた。
 安田哲也氏(JIRA医用画像システム部会モニタ診断システム委員会)によるモニタの品質管理に関するガイドライン(JESRA X-0093)の講義も行われた。ガイドラインの全体的な説明とガイドライン不合格時の対応について語られ、同ガイドラインの普及に向けて行われている様々な啓発活動についても紹介された。続けて実機を使ったハンズオントレーニングで、JESRA X-0093の試験の実際の流れを体験するデモンストレーションが行われた。会場の参加者からは熱心な質疑応答が交わされていた。