第5回ADCT研究会が開催

2014.01.28
有路貴樹先生
平野 透先生
日比野友也先生
辻岡勝美先生
中澤将城先生
中屋良宏先生
谷口 彰氏
川嶋一平先生
小林正尚先生
梶谷尊郁先生
瓜倉厚志先生
会場風景
 第5回ADCT研究会が、1月18日(土)、テレピアホール(愛知県名古屋市)にて開催された。

 ADCT研究会は、Area Detector CT(ADCT)装置の性能評価や臨床応用について、全国のユーザからの報告や情報交換を目的として開催されている。

 今回の総合司会は瓜倉厚志氏(県立静岡がんセンター)、当番世話人は中屋良宏氏(県立静岡がんセンター)。

 第1部では、谷口 彰氏(東芝メディカルシステムズ)が、RSNA2013の発表を含めた、CTの最新情報を報告した。同社のAquilion ONE ViSION Editionは、世界最大の登録者数を誇る放射線科医師・技師向け会員サイトAuntMinnie.comにより、2013年の「世界最高の画像診断装置(The Best New Radiology Device Award)」に選ばれたことについても紹介した。

 第2部では5名の演者が発表した。座長は、辻岡勝美氏(藤田保健衛生大学)、日比野友也氏(総合大雄会病院)の2名が務めた。
 1題目は、平野 透氏(札幌医科大学附属病院)による「Aquilion ONEを用いた脳CT perfusionについて」。CT Perfusion(CTP)は、脳虚血病変の画像診断の一助として2000年過ぎから活用されてきたが、従来のCT装置では撮影範囲が狭く、全脳撮影することが困難であった。Aquilion ONEの登場により、1回の撮影で全脳をカバーすることが可能になり、分解能の高いCTP map画像を任意の方向から観察することも可能となったが、実用上、いくつか検討すべき点も見えてきたことを発表。1つは、Aquilion ONEの特長でもある、還流画像と3D-CTAによる脳血管の描出を併用する場合の、管電圧の問題。もう1つは、B-SDVでは評価が難しい慢性期虚血症例等における、CTPの解析方法。この2点に関して報告を述べたあと、「これからも会を通じて情報交換し、方法を確立していく必要がある」と論じた。
 2題目は、中澤将城氏(公益財団法人脳血管研究所美原記念病院)による「Whole-brain Xe-Studyの基礎検討」。Xe-CTの局所脳血流測定は、定量性に優れていることや空間分解能が高いことから確立された検査方法であるという。320列ADCTの導入により、今までXe-CTの課題であった、Xenonガスの麻酔作用から生じる体動の補正等が期待される点に着目し、3次元的体動補正や解析精度の向上、被ばく低減に向けて撮影条件の改善を検討した結果について述べた。
 3題目は、梶谷尊郁氏(島根大学医学部附属病院)による「整形領域(膝関節)での臨床応用」。同院では「Aquilion ONEの特長である4D-CTは、整形外科領域においては膝関節手術に多用されている」と語る梶谷氏。同院の症例提示を含め、撮影条件の設定等について4D-CTの活用法が発表された。
 4題目は、小林正尚氏(藤田保健衛生大学病院)による「嚥下CT検査の現状」。嚥下CTは、現在ADCTのみで検査を実施できる嚥下動態機能評価を目的としたCT検査である。従来はX線透視検査や内視鏡検査による2次元画像をもとにした診断が主であったが、ADCTの登場により、嚥下運動の発言順序やメカニズムに関して新たな知見を得られる可能性があると同氏は語る。同院は2007年10月に国産1号機となるADCT(Aquilion ONE)を導入しており、嚥下メカニズム解明に注力している。
 5題目は、川嶋一平氏(静岡県立静岡がんセンター)による「IVR-CTでの臨床応用」。Aquilion ONEは、ガントリ口径が78cmと従来のIVR-CTより6cm大きく、患者の体とガントリとの干渉が低減、安全かつ清潔に手技を施行することができる。その他、Volume scan機能により、ADCT自走機能による衝突事故リスクの解消や肝血管治療術の撮影時間短縮、広域撮影による穿刺ルートの安全な取得等が可能となっている。川嶋氏は最後に「ADCTを搭載したIVR-area detector CT(IVR-ADCT)の登場により、IVR技術の可能性が広がり、今後も装置の特性を生かしたIVR技術の進化が見込める」と結んだ。
6題目は、有路貴樹氏(国立がん研究センター東病院)による「放射線治療における臨床応用」。呼吸動態の撮影において従来、呼気相と吸気相の 2phase撮影法や、long-time-scan法ではアーチファクト等が過小評価の問題となっていた。しかし、「320列ADCTにより、 呼吸など生理的に移動する腫瘍の4D撮影が短時間で撮影可能になった」と同氏は語る。ADCTで呼吸位相画像を撮影するために必要な設定、有用な 撮影方法、同院で使用している画像処理ソフトの一例と活用方法等について説明がなされた。

 その他、第3部基調講演では、石田和史氏(石心会川崎幸病院)による「ERにおけるAquilion ONE ViSION Editonの活用法」、また、第4部特別公演では片田和廣氏(藤田保健衛生大学)による「ADCTの最近の話題」が、それぞれ発表を行った。