第4回 3D PACS研究会開催 ~震災や最新のTablet情報が満載!~

2011.12.22
池田龍二氏
金沢 勉氏
杉田純一氏
行方正紀氏
牛尾哲敏氏
坂井修二氏
金山功一氏
麻生智彦氏
津坂昌利氏
武田聡司氏
富田博信氏
立石敏樹氏
北川健三氏
会場風景

 3D PACS研究会は12月18日、キヤノンマーケティングジャパン(株)品川本社 ホールS(東京都港区)にて、第4回 3D PACS研究会を開催した。本研究会は3Dワークステー
ション(以下WS)やPACSなど医療画像、医療情報システムを取り扱う診療放射線技師等
の交流や現場での技術向上を目的としており、第1回は2008年に開催され、その後毎年催されている。

 まずはじめに、当番世話人の池田龍二氏(熊本大学医学部附属病院)が「今回の3D
PACS研究会では、3D PACSの新しい内容や、Tablet PC、震災、計画停電に関する内容
を含んでいるので、様々な形で情報を共有し、役に立つ情報を発信していきたい」と挨拶を述べ、3つのテーマに基づき講演が行われた。

 テーマ1:Effective Use of Workstationsでは座長の金沢 勉氏(新潟大学医歯学総
合病院)のもと、杉田純一氏(テラリコン・インコーポレイテッド)が「ワークフロー活用とクラウド化による3D画像処理の効率化」について講演した。「我々の最大の特色と言えるのが『プライベートクラウド』のスタイルだ。これは外部サーバではなく、施設内部の病院グループ内にクラウドサーバを構築するタイプであり、『iNtuition
CLOUD 』はその代表。これはクラウドコンピューティングとテラリコン3Dサーバを組み合わせたものであり、サーバ間のストリーミング処理を実現し、検査部位や目的に応じて、TabletPC用に最適化されたワークフローも作成でき、
クラウド化した3D WSを効率的に活用できる」と語った。
 行方正紀氏(同社)は、Tablet PCでの使用例を紹介。クラウド化により、ワーク環境は拡大する。しかし、複雑な入力などTablet PCでは不向きな場合もあるため、業務に基づき、環境に合わせたワークフローの構築が重要であると述べた。
 さらに、牛尾哲敏氏(滋賀医科大学医学部附属病院)は「ボリュームデータ時代におけるWSの有効活用」を発表。「ネットワーク型WSでは端末があればどこでも画像参照が可能となり、3D画像を使用した術前術後の患者様への説明や、自身で作成したキー画像を表示しながら手術を行うこともできる。テラリコン社のものは3D作成における自動抽出の精度が高く、画像作成の効率化、診療の向上に最適だ」とネットワーク型WSの有用性について話した。
 この後、特別講演として座長・池田氏のもと、坂井修二氏(東京女子医科大学 画像診
断学・核医学講座)より「胸部領域における高度画像処理の臨床実用」が発表された。同氏は同大学におけるP A C Sや「A q u a r i u siNtuition Server」などの読影環境を述べ、「胸部領域でのSPECT-CTは、横隔内副甲状腺腺腫や乳癌のセンチネルリンパ節同定には不可欠であり、腺腫位置の確定や、術後器官機能の予測も可能である」と融合画像の臨床的有用性を語った。
 次に、同氏は「非線形位置合わせによる差分画像は、造影後から造影前の画像を差分するため、乳腺領域などでは、アーチファクトが少なく、血管の描出もシャープで、有用性も高い」とした。
 また、これから必要とされる画像処理として肺のS e g m e n t a t i o n 、縦隔リンパ節のSegmentation、肺動静脈の分岐パターン、VATS術前のオリエンテーション画像を挙げ、症例を提示しながら言及した。
 同氏は、「読影においてテラリコン社製iNtuitionを使用し結節検出・解析を行ってい
る。これはSphere Finderのスコア変更により結節の検出感度を最適化したり、自動で接する胸壁と血管を区別し最大割面の長径と短径の計算に活用している」と述べた。
 テーマ1の最後に金山功一氏(テラリコン・インコーポレイテッド上級副社長兼日本支店支店長)がクラウド化を実現した新モデルのiNtuition CLOUDについて紹介した。

 テーマ2:Tablet PCの活用では座長・麻生智彦氏(国立がん研究センター中央病院)のもと、池田氏が「ココを押さえよう 放射線部門におけるTablet PC導入のポイント」について講演した。Tablet PCの場合、入力するアイコンを大きくするなどのTablet用ビューワの使用や、インフラの整備が必要になってくる。しかし、患者様への説明や、過去画像を参照しながらの撮影、救急外来での使用など幅広く活用できると語った。
 特にTablet PCのサイズについては「iPadが10inchであるのに対し、Galaxy Tabは
7inchであるため、白衣のポケットにも入り、携帯性ではメリットがある。一方、解像度についてはiPadが1280×800、Galaxy Tabは1024×600であり、iPadの方が表示面積が大きく操作性が増すというメリットがあるため、用途に応じて選択する必要がある」とした。
 続いて、津坂昌利氏(名古屋大学医学部保健学科)が、「携帯情報端末の画質特性と3DP A C Sへの応用」というテーマで発表し、「iPhone4、iPad、iPad2は医用画像表示用
として十分な画質特性を持っているか検討した結果、低濃度域でやや高輝度になる傾向で広い視野角特性を持つ。また、階調特性がDICOM GSDFではなく、XGA(1024×768)、
256階調の表示が可能なので、CTやMRI、RI、内視鏡画像などの表示に参照用として使
用することが可能」と述べた。さらに、これらは薬事未承認であり、詳細な読影は医療用精細モニタを使用する必要があるが、症状の説明を行う場合や画像を簡易的に確認する際には携帯情報端末の活用が有効と言及した。

 テーマ3:災害・計画停電におけるデータ管理では、座長・武田聡司氏(国立病院機構災害医療センター)のもと、富田博信氏(埼玉県済生会川口総合病院)が「計画停電時の画像サーバー管理と装置運用の対応報告と問題点」について講演。「震災直後は電力の供給がなく、CTやMRIの使用は不可能となった。無停電システムを使用するなど電源の確保が最重要ポイントである。その上で、院内メールを使用して、各科ごとにどのような対応をすべきかをまとめた情報の配信などが役立った」と述べた。
 次に、立石敏樹氏(国立病院機構仙台医療センター)より「東日本大震災における災害拠点病院の対応~先の見えない中で~」が講演され、同氏は「災害時マニュアルが見つからない状況になる恐れもあるので、日頃からの訓練が非常に重要となる。また、院内、院外を含めたインフラの整備が必要であり、各メーカへの問い合わせも困難になるので、連絡手段の確保も課題のひとつ」と指摘した。
 テーマ3の終了後には、北川健三氏((株)エルクコーポレーション取締役)より、「2011年6月より、(株)エルクコーポレーションはキヤノンマーケティングジャパン(株)の完全子会社となり、両社共々、今後も皆様のお手伝いをしていきたい」とし、来場者や協賛企業に対して謝辞が述べられた。
 最後に、閉会挨拶として津坂氏より次回、研究会の開催について説明があり、本会を締めくくった。

―第5回 3D PACS研究会のお知らせ―
日程:2012年12月9日
会場:キヤノンマーケティングジャパン品川本社 ホールS(東京都港区)
当番世話人:金沢 勉(新潟大学医歯学総合病院)
代表世話人:立石敏樹(国立病院機構仙台医療センター)


―坂井氏の講演より―
肺動脈と肺静脈、気管支を3次元的に森谷浩史氏(大原綜合病院附属大原医療センター)が作成したVATS術前のオリエンテーション画像の説明。


―池田氏の講演より―
Tablet PCなどで画像参照する際の閲覧画面の紹介。