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Rad Fan 創刊にあたって

(1)総説依頼原稿が日本の放射線科医を滅ぼす!?
IVRコンサルタンツ 林 信成
私は編集者のくせに総説の依頼原稿に、はなはだ大きな疑問と不快感を感じている。現実に私は、5年以上も前からほぼ全ての総説依頼原稿を断ってきた。例外は、他科医から依頼されたものなどごく一部である。
依頼で書かれた総説には少なからず問題がある。残念ながら日本では、きちんとした査読のある雑誌に学術論文を発表することなく、総説ばかりを書いている医師が稀でない。正式な査読を経ていない原稿なので、書きたい放題であり、その内容に科学的信憑性があるのかどうか判定できない。「専門家と言われている人の意見」という最低レベルのエビデンスでしかない。過去に多数の学術論文を既に発表し、それらのデータを元にして書かれた総説ならまだ価値もあるが、現実には必ずしもそうはなっていない。問題なのは、それによって「筆が荒れる」ことである。いわゆる売れっ子には次々と溢れるほどの原稿依頼が来る。しかも医師の時給を考えれば、とびきり安い原稿料で。そんなに次々と依頼されても、似たような事しか書けないし、多数書いているうちに、いい加減な内容のものも混ざってくる。さらにはその人が今度こそ学術論文を書こうとした際に、総説の書き方に慣れきってしまって、【結果】から科学的に導き出されるべき事象と筆者個人の意見が【考察】でごちゃごちゃに混同されてしまっている論文が少なくない。依頼原稿の総説は、学術論文を最低10本以上書いた人にしか許してはならないと提案したい。
読み手の側も注意が必要である。総説に書かれている内容は、基本的に筆者の個人的意見にすぎない。一般には、その意見を裏付けるように参考文献が附記されているのだが、その文献リストをよく見ると、これまた自分の書いた総説や抄録ばかりが引用されていることがある。これは非科学の連鎖であり、科学的エビデンスの全くない情報操作である。また最近の若い放射線科医の中には、学術論文を読まずにアンチョコな総説だけを読んで、わかったような気になって診断やIVRを行っている者も少なくない。現在の放射線科医の激務を考えれば仕方のない面も否定できないし、素晴らしくて本当に役に立つ総説が確かに多数あるのも事実である。しかし、現状は明らかに「過多」である。一部の施設では、次々と来る総説の依頼のために貴重な診療・研究時間が理不尽なまでに割かれているし、指導者に来た依頼が若手の本当に学問をしなくてはならない時期の研究者に下請けに出され、彼らの貴重な時間をスポイルしているケースも多い。こんなことではいけないと思っているのは私だけではないだろう。実際に旧専門医会の理事会の仲間達と話すと、ほとんどが異口同音に「依頼原稿を何とかしてほしい・意味のない研究会や学会を無くしてほしい」と訴えるのだが、一向に事態は好転しない。大事なことは、まず自分たちが断ることだと思っている。
そんな私が、このRad Fanという新しい雑誌の編集者となっているのは大いなる自己矛盾である。まったくその通りである。私は最初にこの話を聞いたとき、開口一番「これ以上雑誌を作らないでくれ」と発言した。にも関わらず協力することになったのは、上記のような商業雑誌を批判する発言をも自由に載せてくれる編集長の姿勢・態度に感心したことと、出版社の意向に振り回されることなく「放射線科医の放射線科医による放射線科医のための雑誌」を作れるチャンスだと思ったこと、さらにはWeb・メルマガとの連動により、速報性のあるメディアを育てられるチャンスだからである。これについては次項で述べる。

(2)少人数放射線勤務医へ最新の情報提供を
IVRコンサルタンツ 林 信成
私は4年前に大学を辞めてセミフリーとなったが、おかげさまで相変わらず全国の色々な方たちと交流させていただいているし、同門会や個人的なビジネスを通じて若い放射線科医たちと話す機会も多い。その中で最近感じたのは、中小病院の放射線科勤務医の中には学会や研究会への出席がままならず、また製薬会社や医療機器メーカーの訪問も稀なために、新しい情報が入りにくくて困っている者が増えているということである。これはいやになるほど毎日、次から次へと業者がやってきて、その対応に追われていた大学時代には考えられなかったことである。
10年くらい前までは、放射線科医というとほとんどが大学に籍を置き、国公立病院や日赤・済生会などの大病院を加えれば、放射線科医のほとんどがカバーされていた。放射線科医のdutyも今よりずっと少なかったし、大きな学会があれば、平日の昼間から平気で検査の一部を止めて出張に出かけたりしたこともあった。しかし時代は変わった。今や全国には、国内の学会・研究会に行きたくても行けない放射線科医が多数いる。また1人医長で症例も少ないために、企業関係者の訪問が全くなく、最新の製品情報に飢えている放射線科医も急増している。
海外の学会の印象記は、製薬会社などの販売促進誌に掲載されていることが多い。同時にその内容もある程度は詳しくレポートされていることがある。しかし、国内の学会・研究会はどうであろうか?プログラムや忘れた頃に学会誌に掲載される地方会の抄録でしか情報はえられないし、それでは討論や会場の反響などを知る術は全くない。たとえばIVRを専門とするか大好きな医師なら、仕事の都合でIVR学会やリザーバー研究会などに参加できなかった場合、発表されたり討論された内容を是非知りたいと思っているのではないだろうか?しかし現実には、それらを伝えるメディアは存在しないに等しい。いくつかのWebサイトや新聞などはあるのだが、それらは全ての科の医師を対象としており、放射線科医向けに特化していないので、放射線科医にとって面白いものではない。もっとも、その内容を赤裸々に載せるには、現実問題として障壁も多い。どうしてもレポーターの主観が大きくはいってしまうし、真実を伝えようとすると数々のしがらみに負けて「こんなくだらない発表は意味がない」などと書けないからである。さすがに私でも、そこまで露骨には書けないが、大学関係者よりは遙かに自由に書けるのではないかと思っている。できれば潰してしまいたい研究会についてもレポートし、その存在意義の無さを白日の下に晒したいとさえ思っている。
幸いなことに、Rad Fan編集者には、ネットに強い方々がたくさんおられる。彼らの雑誌に対する考えが、依頼原稿に対する嫌悪感など前述の私の考えと必ずしもすべて一致するわけでは勿論無いが、情報に飢えている放射線科医をサポートしたいということでは意見が一致している。最新の情報を、可能な限り具体的かつ詳細に、出張困難な放射線科医師達に届けたいと思っている。レポートは準備が整い次第、学会・研究会終了後できるだけ早くホームページにアップするつもりであり、将来はメルマガ配信も視野に入れている。どうかご期待下さい。そして、もっとこうしてほしいとか、こんなことは困るとか、忌憚のないご意見を是非お寄せ下さい。さらには編集委員になってレポートしたいという方の自薦・他薦も大歓迎です。どうかよろしくお願いします。

Rad Fan刊行によせて
イリモトメディカルイメージング 煎本正博
私はここ10年のあいだに大学病院,常勤2人の中規模病院,フリーと職環境を変えてきましたが,その度に感じたことが,企業からの情報が少なくなってきたことです。フリーは自分の選んだ道であり,MR氏に国立の自宅オフィスまで来ていただくのは心苦しいし,だいたい,昼間はいないほうが多い。しかし,4年前に大学病院から公立病院に移ってからの情報不足はかなりこたえました。毎日毎日業者がやってきて、その対応に追われ、日常の業務にさしつかえるからと、医局長名で業者の読影室への立ち入りを禁止した大学時代には考えられなかったことです。
公立病院が医師と業者の接触をことさら嫌い,隔離していたことも原因の一つですが,ある造影剤も売っている会社のMR氏なんかは、自社の造影剤の名前も知らないような方で,当然,自ら放射線科医のところに来るはずもありません。情報は業者に頼るのではなく、自分で探すものだというのは正論ですが、研究会の中にはその広報をスポンサー企業に頼っているところもあり、MR氏からの案内がないと、大学時代に必ず出席していた研究会にも足が遠のきがちになります。IVRをやっている放射線科医にとって、器具に関する業者からの情報は死活問題です。雑誌や講演で知ったカテーテルなども、代理店に依頼すれば手に入れることもできますが、その製品に対する情報が入りません。つい最近、リザーバー研究会でリザーバー留置カテーテルとポートとの接続強度などの報告があり、危険な組合せもあることが報告されましたが、この情報がどれだけ素早く末端まで伝わったかは疑問です。かって、某公立病院で麻酔用のマスクとチューブとの接続が悪く、死亡事故が続いたことがありました。開発・販売業者が医師に十分な情報を与えておけば、少なくとも同じ事故が繰り返されることはなかったのではないでしょうか?
近年の画像診断機器の普及により、多くの放射線科に医師が配置されるようになったことは,放射線科医の活躍の場が増えたという意味では望ましいことですが,それだけ,一人勤務の放射線科医を増やしてしまい、このような情報過疎地に送り込んでしまいました。
この雑誌Rad Fanと有機的に連携したweb pageがそんな環境で頑張っている仲間に少しでも新鮮な情報を供給するメディアになればいいと思っています。
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