簡単・低価格の革新的な創薬ツール 「MolSpace」で世界に挑む ~レベルファイブ~

HP WS PLAZA : New Ways of Workstation
2015.05.28

簡単・低価格の革新的な創薬ツール「MolSpace」で世界に挑む
~レベルファイブ~

株式会社レベルファイブ
本社:東京都港区海岸1-2-3 汐留芝離宮ビル21F
ラボルーム:東京都千代田区神田須田町2-25
GYB秋葉原ビル3F(写真)
TEL:03-5403-5917
E-mail:info@level-five.jp
国立研究開発法人産業技術総合研究所
創薬分子プロファイリング研究センター
3D分子設計チーム長 福西快文氏
レベルファイブが開発した「MolSpace」は、操作のしやすさと低価格を両立した計算科学ソフトウェア&ソリューション。それを可能にしたのが日本ヒューレットパッカード(以下HP)のワークステーションだ。

直感的な操作で新しい創薬の時代に
株式会社レベルファイブは2004年に設立されたシステムインテグレータ(SIer)で、ソフトウェアの開発やインフラ・ネットワークの構築などを手がけている。近年は製薬会社の創薬に携わる中で、同社もITを通じた創薬研究に進出している。
「弊社では、HP Z840にMolDeskを搭載したパッケージ製品、MolSpaceを発表します。これはユーザが手ごろに購入して、マニュアルいらずで、30分以内にすぐおぼえられ使用可能な創薬のためのオールインワンソリューションです(図1)」とレベルファイブのインフラストラクチャー事業部長の太田氏。
myPrestoは経済産業省及びNEDOから委託を受けて一般社団法人バイオ産業情報化コンソーシアム(JBIC)が研究開発した医薬品開発支援の分子シミュレーションシステムで、ソフトウェアは大阪大学蛋白質研究所付属プロテオミクス総合研究センターのウェブサイトから入手できる。しかし文字入力で動かすCUI(キャラクタユーザインタフェース)なので、操作法取得には時間が必要だ。
myPrestoをGUI(グラフィカルユーザインタフェース)で扱いやすい製品にしたのが、情報数理バイオが開発したMolDeskであり、それをGPUを実装したZ840に搭載したのがMolSpaceとなる。(図2)。
myPresto開発の中心メンバーである国立研究開発法人産業技術総合研究所の福西氏は「創薬という分野において、計算から実験に至るまでコンピュータ上で全部できてしまう、そういうシステムを作りたいと思っていました。モノ作りの世界では、旋盤や工場がなくてもコンピュータ上で図面を描けば、3Dプリンタで立体物が作成できる時代です。生物の分野では積極的ではありませんが、同様に変化していくはずだ、と思い実際に実験してみました。そしてコンピュータ上で設計し、それを発注して合成し、実験して結果を出すところまで全部外注で行なう、というのを可能にした。つまり、実際の生物を使用した環境を持っている人でなければ実験ができない、という時代は終わりで、合成化学の知識がなくても物質を作成できるのです」とmyPrestoの意義を語る。
しかし福西氏の希望は、ただのプログラムではなく、グラフィックで使いやすいシステムに組みたい、というものだった。その提案に手を挙げ、製品化にこぎつけたのが情報数理バイオとレベルファイブだった。両者のタッグにより、これまでにないプロジェクトが現実のものとなってきた。

図1 MolSpaceは、HPのワークステーション、Z840にmyPrestoとMolDeskを実装したシステムだ

 
 

図2 ディスプレイ上にグラフィカルに表示されたMolDesk

インタビュー動画
国立研究開発法人産業技術総合研究所
福西快文氏
「MolSpaceについて」
インタビュー動画
株式会社レベルファイブ
太田正二氏
「株式会社レベルファイブについて」

 

株式会社レベルファイブ 取締役
インフラストラクチャー事業部部長
システムインテグレーション
グループ リーダー 太田正二氏
株式会社レベルファイブ
経営企画室兼
インフラストラクチャー事業部 中村真夕氏
図3 マウスクリック3回までで分子計算、
マニュアル不要な簡単操作をコンセプトとした
MolSpace。誰でも簡単に操作できる
図4 手の上に地球を乗せて、
全世界の人に知ってもらいたい、使ってもらいたい、
という気持ちを表現したリーフレットのデザイン
創薬を変える壮大なプロジェクト
このプロジェクトの根底には、福西氏の思い描く大きな夢があった。
「医薬分子の設計では、立体でタンパク質に結合している化合物や、タンパク質との結合によって薬が作用を発揮しますが、基本はいかに生体の物質にぴたっと付けるかです。1980年代から開発のシステムが出ていますが、1ライセンスあたり数百万~1千万円くらいしました」。
そのため、研究室で1台買い、電話帳のような付属マニュアルを見ながら、講習会で使い方を教えてもらわないと使えなかった。しかも、それぞれが独自仕様なので、パワーポイントやワードと同じ感覚では使えなかったそうだ。
「myPrestoでは、1ライセンスが20~30万円といった価格帯を狙い、ユーザ層を従来の10倍、100倍にしたいと思っています。クリックする回数は3回くらいでひとつの用事が済むようにし、コマンドの数は50個にまで整理すれば、何をやりたいかすぐに分かるので、マニュアルもいらなくなります。そうなれば、ネットワークを通じて世界中に提供・展開できます」(図3)。
マニュアルが必要なければ、世界中で展開しやすくなるという福西氏の解説は実に興味深い。一方で、こういう高度なソフトを動かす設計は難しい。そこで、より簡単に扱えるようにGPUをハードに組み込み、一体で販売できるようにしたのがMolSpaceである。
「たとえば試薬販売や実験をする企業を電子データにしておけば、計算結果が出たときにそれぞれの企業に発注でき、いろいろな業界が儲かる仕掛けを作れます。つまり、ソフト、ハード、試薬、実験などを全部含めた創薬のソリューションとして産業を作りたいと考えています。学問や研究のあり方が大きく転換する、最初の一歩だと思います」。
福西氏の夢の実現に尽力した太田氏は
「MolSpaceはmyPrestoをGUIで操作できるので、使いやすい機能性が特長で、誰でもすぐ使えます。専門の研究者が特別な講習を受けなくても、GUIベースの環境で視覚的に操作できます。ぜひ、世界中の多くの方々に使っていただきたいです」と製品に自信をのぞかせる。
「2015年10月29日にCBI学会(情報計算化学生物学会)があり、そちらでスポンサードセッションを行います。MolSpaceのリーフレットは、全世界の人に知ってもらい、使ってもらいたいという意図でデザインしています(図4)」と学会での報告やリーフレット作成を担当する中村氏。各方面に積極的なPRをかけていく予定だ。

信頼性とコスパに優れたWS選び
世界展開を視野に入れた意欲作のMolSpace。そのハードウェアにHPのワークステーション、Z840を選定したのはどのような理由からだろうか?
「研究員など多くのユーザに、オールインワンパッケージのMolSpaceを使っていただくために、使い勝手や費用対効果を見込んでワークステーションを比較しました。今回最も着目したのは、Z840は最先端のアーキテクチャーと高性能GPUも搭載したことで、低価格で高性能を実現したことです。複数社を比較した結果、WSとして価格を抑えた上で我々がほしいコンポーネンツを、最先端のハードウェアにいち早く取り組んでいたのがHPでした。長い視点で考えたときに、安心して各ユーザさんにお使い頂ける、と確信できました」と太田氏。
アプリケーションを快適な環境下で使用でき、しかも1人ひとりの研究員の限られた科研費の中で導入できるかが大きな総括点だったという。福西氏も、研究者らしい着眼点でHP製品を評価する。
「数値計算処理を飛躍的に高めるGPUを搭載したこのシステムは、一昔前でしたら、論文を一本書けるほどのアウトプットを、数分で得られるほどのパフォーマンスを発揮します。選定は太田さんに一任していましたが、後々気がついたらHPのWSは東京で製造していました。最近は日本メーカでも海外製造が多くあります。海外メーカはどうかと最初は思いましたが、HPは国内での製造の取り組みにより日本の雇用にも貢献していると気がつきました。しかも国内製造なので品質管理の手間やコストを抑えられるという合理的な理由もあることを知り、納得しました」。

太田氏は「ハードウェアの熱対策もきちんとしてあります。また、手頃感がありながらも最先端のCPUやGPUを搭載でき、WSとしてバランスがよい上に、この先、第5世代のチップが出たときに対応し、GPUなどの最新のコンポーネンツにも即対応する。こういった柔軟性はHPさんならではのもので、総合的な判断から採用しました。」
福西氏は、MolSpaceが普及することによって、「今まで接点の無かった、世界中の実験主体の研究者と、計算主体の研究者がお互いにアウトソーシングしあえるようなマーケットが成立し、研究のあり方を激変させる環境ができたらおもしろい」と展望を語る。MolSpaceをきっかけとして創薬の世界が変わっていくかもしれない。