NEWS 2004.10.18



厚労省がん研究助成金荒井班経過報告

平成16年度厚労省がん研究助成金荒井班の第2回班会議が、10月16日に国立がんセンターにて開催された。今回からは第3次がん総合戦略研究事業「吉田班」の援助も受けて、その合同会議という形になり、この班が順調に規模を拡大し、他科からの理解も深まっていることが確認されてとても嬉しかった。

午前中は、現在すでに始まっている10本の臨床試験の進行状況について、各研究代表者から報告があった。現時点での登録症例の総数は、99例とのことであった。IRBの承認に長い時間がかかることや、適格条件などをかなり厳密に定めているために登録できない症例が少なくないことを考慮すれば、一応順調な伸びと考えて良いだろう。また、一部の試験に関しては、いくつかの施設において、患者さん本人に癌であることを伝えられないために同意がとれない(同意書には癌であることが明記されている)という理由で登録ができない例も少なくないようである。

経過で特に大きな問題があった試験は無いように思われる。ただ、胆管ステントで1例、除外条件とされている胆管炎が存在していたにもかかわらず、登録してステントを挿入してしまった例があった。これは不適格症例として処理されるものと思われる。プロトコールは数10ページに及ぶ膨大なものなので、こういうウッカリミスは今後も時には生じるであろうが、増えすぎないことを祈っている。骨盤内腫瘍に対するRF治療の試験だけは、いまだに症例登録がゼロの状態であった。これは、そもそも試験をすべきかどうか、プロトコールの詳細をどうするかで、かなり難産であったので、未だに登録がないのも仕方がないかもしれない。

大阪大学の大須賀先生を研究代表者とする、動注用シスプラチン製剤を用いた肝動脈化学塞栓療法の臨床試験プロトコールが提出された。予想通り、塞栓手技の実際を中心に、白熱した議論が延々と続き、なかなかコンセンサスが得られなかった。私自身も納得しきれない部分があり、確かに永遠に解決できない問題が山積している。しかし、とにかく自覚すべきことは、TACEに関して今まで日本から多くの報告が出されてはいるものの、エビデンスレベルの高い報告は残念ながら無く、そのために、その有効性について欧米から疑問視されたり、逆に我々からみれば手技的に多くの問題を抱えた報告が、ある程度の高さのエビデンスレベルを持って海外から発信されているという現実である。この臨床試験が、このような日本のIVR医にとって忸怩たる現状を打破する第一歩になればよいと思うし、関係者もとりあえずこの試験は最初の一歩というスタンスである。つまり、急いでできるだけ簡単に、いわば練習台として「多発肝癌症例を対象に新薬の耐容量・推奨量を決める」という、比較的容易な多施設共同臨床試験から始め、それが順調に進んだ時点で、肝細胞癌に対するTACEの本丸であるリピオドールTACEの評価を、CIRSE2004の報告で述べたようなHepasphereやBeadBlock、またこれらの薬剤溶出性製剤を含めて、ランダム化比較試験で行うことが最終目標なのである。そしてそれこそが、日本が自信を持って世界に発信できる、また発信すべき情報になるのではないだろうか?今後とも是非、JIVROSGの活動から目を離さないでいただきたい。

IVRコンサルタンツ 林信成


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