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NEWS 2004.10.4
CIRSE 2004 報告
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ガウディが建築責任者であったサクラダファミリア。 |

会場に隣接するホテルの庭で開かれたオープニングレセプション |

メイン会場 |

機器展示場 |

有線のインターネットコーナー。端末が25台並んでおり、いずれも日本語表示可能であった。 |

以前にも報告したシミュレーション装置。 新しいデバイスや手技の教育に最適である。 |
2004年9月25日から29日の間、スペインのバルセロナにて開催されたCIRSE
2004に参加した。バルセロナへの道中は、セキュリティーチェックも昔と同様で厳しさは特に感じず、街は明るく安全な印象であった。例年通り、日本からは30人程度が参加していたと思う。会場への参加率も、一部の方を除いてはさほどひどく低いようではなく、会場のあちこちで日本人参加者を頻繁に見かけた。今回は、初心者向けに「基礎コース」というのが設けられ、ここでは本当に初歩的なことが講演がされたのだが、Special
sessionという3つくらいの会場に分かれての教育講演も、必ずしもレベルは高くなく、ちょっと不適格では?
と思える講演者も目立った。Scientific sessionはSIRと比べるとまだ参加者も多く、比較的きちんと討論もなされていた。とはいえ毎日夕方に、7つものセッションが並列で行われるので、興味ある演題を聞き逃さないためには会場の構造を熟知して走り回らなければならない。このためや、前述のようにSpecial
sessionも3本並列のために、この報告書も偏りがあることをご了解いただきたい。なおポスターは、コンピュータ展示であるEPOSになり、1会場に多数並んだ端末で200あまりの演題を自由に見られるようになっている。例によって、日本からの演題の占める率はかなり高い。EPOSは、画質も操作性も表示速度も、全く問題ない素晴らしく完成されたシステムなのだが、私個人にとってはあまりにも字が小さく、老眼鏡を用いてもなお、長時間見続けるのは辛いものがあった。
【末梢血管】
末梢動脈関係のSpecial sessionの多くは、会場が超満員で立ち見客にあふれる状態であった。これは日本のIVR医のPTAへの情熱の薄さを思うとちょっと寂しくて辛い思いが否めない。しかしながら、その講演内容はというと、特殊なコーティングステントにせよ、カバードステントにせよ、カッティングバルーンにせよ、薬剤溶出ステントにせよ、新しいデータはほぼ何もなかったといっても良く、各種過去の初期成績の紹介に終始したのが残念である。
重症下肢虚血(CLI)の講演は、「全身状態の悪い患者を対象に、下肢切断を回避するのに役立つ」という、よく知られている事実のみしか語られなかった。聴衆から「圧測定はしているの?」と質問が出たのだが、「症例が少ないのでちゃんと決めていない」といったお粗末な回答にとどまった。座長が、「自分の施設では、腸骨動脈では圧測定はルチーンでしているが、大腿動脈以下ではしていない」とフォローしていた。もっとふさわしい演者を選んで欲しい。なお、CLIでは患者の状態が状態なので、手術とのランダム化比較試験は極めて困難である。したがって、レベルの高いエビデンスがないのも仕方ない領域と考えられる。
間歇性跛行を対象とした腸骨動脈については、英国の演者の講演だったが、長期成績は奈良医大の吉川先生の成績などと比べるとかなり悪い。「間歇性跛行は元来が良性の疾患であり、生活習慣の改善が重要であり、IVRは勿論、外科手術さえも、治療が真に患者の利益に貢献するという充分なエビデンスはない」ということが強調されたのが印象的であった。要は適応を正しくすることであろう。ただ最近Radiologyに、PTAを受けた患者の再狭窄率を喫煙者と非喫煙者で比較したところ、喫煙者の方が優れていたという衝撃的な論文が出ている。これについて質問したのだが、演者も含めて聴衆の多くもこの論文の解釈には困っているようで、「そんな理屈はないはずなのだが、よくわからない、タバコ会社がスポンサーの研究ではないようだ」と冗談めかして逃げられたのみであった。また最近は、直接一期的にステントを留置するいわゆるprimary
stentingが世の中の趨勢であるが、これについてもランダム化比較試験によるエビデンスはないようである。
動脈アクセスの講演では、橈骨動脈アクセスが循環器科で普及しているのに、放射線科でほとんど普及していない点に座長が触れ、橈骨動脈アクセスをしている者に挙手を求めたが、ほぼ誰も手を挙げなかった。本法に関しての放射線科医と循環器科医の温度差は、日本も欧米も同様のようである。
浅大腿動脈の講演では、これもまた「エビデンスがない」という言葉が繰り返し繰り返し発言された。昨年は、自己拡張型ナイチノールステントがベアーでもかなり良い成績、薬剤溶出ステントならさらに凄い、というのが大きな話題であったが、ねじれや伸縮による外力のためにステントが破損する症例が蓄積されるとともに、やっぱり駄目かという印象の講演であり、どうしようもなくなったいわゆるBail-out症例やBlue
toe症候群など特殊な症例を別にすれば、ステントの適応には、まだまだ疑問符が付くようである。「ステントグラフトで素晴らしい成績が報告されているが?」との質問が出たが、これについては、「デバイスが滅茶苦茶に高価なので、もう少しエビデンスが蓄積されないと、おいそれとは使えない」と言う回答であった。
腸骨動脈については、10年後の長期成績が話された。さほど優れてはいないが、過去の技術的にもデバイス的にも未熟な症例が含まれていることを考えれば、まずまずといったところか。5年以上たってから再IVRの必要性や閉塞が生じた症例が少なくない点は、外科医が「5年というのは中期成績であって長期成績と言うべきでない」と指摘していたのに合致しており、確かにもっともだと演者も認めていたのが潔くて良かった。
BARD主催のシンポジウムでは、Fluencyの発売にあわせて、末梢動脈におけるステントグラフトの講演があったが、特に目新しいものはなく、基本的事項や初期成績が示されたのみであった。
Aortoiliac領域のSpecial sessionでは、まずkissing
stentが取り上げられた。分岐部病変におけるkissing balloonはよく知られたテクニックであるが、同じコンセプトで施行されているkissing
stentに関しては、最近では予後がさほど良くないとの報告も見られる。しかし、これに関しては、良いとも悪いとも、これまたエビデンスが不足しているという状況が述べられたにとどまった。腸骨動脈瘤の講演は、少し面白かった。同部の動脈瘤は、腹部大動脈瘤より破裂の危険が高いと言われており、径3.5p以上くらいが治療の適応とされるようなってきているようである。市販の末梢用のステントグラフトの種類が増え、必要とするシースのサイズも小さくなったことで、積極的に治療される症例が増加している。このセッションでも腸骨動脈の治療と長期予後について、再び取り上げられた。腸骨動脈病変に関しては、今ではほとんどの施設がかなり積極的にステント留置を行っているのだが、実はこれにもレベルの高いエビデンスはない。逆に、「バルーン拡張を第一選択とし、解離などどうしても必要な症例にのみ選択的にステントを留置するという戦略でも、予後は変わらない」と言うエビデンスは、少し高いレベルで出ている。ステントが改良されたことや、長い完全閉塞の治療例が増えていることから、Primary
stentingと比べて真に正しいのはどちらなのかはまだ判断に苦しむところである。英国でランダム化比較試験が進行中とのことだが、治療後の血管像がIVR医にとって気持ちよいステント留置へと傾く傾向には、歯止めがかからないような気がする。
Scientific sessionでは、膝窩動脈以下を対象としたシロリムスコーティングの薬剤溶出ステントの発表があった。成績は悪くなさそうだが、6ヶ月までのデータなので、評価はまだ先であろう。末梢動脈における薬剤溶出ステントに関する唯一のランダム化比較試験であるSIROCCO
IIの続報も当然あったのだが、残念ながらSIRの時点からほとんど進んでいない。CIRSE発行のニュースでも24ヶ月でBinary
stenosisが40%生じていることが報じられているのだが、この点には全く言及されず、18ヶ月までのデータしか話してくれなかったのには大いに不満が残った。また症例数も全く変わっていないし、ステントの破損についても、実例の写真は1例も呈示されなかった。会場からの質問に答えるかたちで、「破損は軽微で患者は無症状だ」と言うのだが、破損は始まればどんどん進行するはずだから、どれだけきちんと経過観察されているのか、ちょっと信じられないところがあった。浅大腿動脈における真に最適な血管内治療は何なのか?
解答がえられるまでには、まだかなりの時間がかかりそうである。残念ながら、どの企業も膨大な予算が冠状動脈での試験に注がれるために、末梢動脈への取り組みはこれと比較すると極端に見劣りする。資本主義の原理がもたらす悲しい側面である。
Ir-192による局所放射線治療では、単一施設でのランダム化比較試験で有意差があったと発表された。「この方法は多施設共同試験であるPARIS試験では有効性が否定されたのに、何故、あなたの施設では良いのか?」と座長が質問したが、何も答えられていなかった。放射線を外照射するランダム化比較試験の成績の発表もあった。0,
7, 10.5, 14Gyの4群にランダム化し、14Gyで部分的に有意差が出ていたのだが、症例数も少なく、差も小さく、放射線照射というものの性格を考えると、普及するとは思えなかった。
PTFEでコーティングしたスパイラルコイル状のステントであるaSpireの報告もあった。これは多施設での非ランダム化比較試験の一部なのだが、これもまた、初期成績は有望に見えるが、まだまだ長期的にはどうなのかわからない。この特異なコンセプトを持つaSpireステントを最初に見てから随分と年数が経つが、臨床成績がようやく出始めたのだという感慨はあるものの、もう少しきちんとした長期成績が出るまで、過度に期待しすぎるのは禁物かもしれない。同様のコイル状ステントであるIntraCoilに関しては、発表はなかったように思う。
生体吸収性金属ステントの報告があった。膝窩以下に臨床応用し、部位や基礎疾患を考えればまずまずの成績を出していたが、X線透視で全く見えず(CTでもみえないらしい)、IVUSガイドで留置するしかないのがネックであろう。
膝窩動脈以下で、薬剤溶出コーティングの有無とGP IIb/IIIaの有無で4群に分けたランダム化比較試験の報告があったが、こういう試験を始めたこと、40例が登録されたというところまででとどまっており、内容は何もなかった。
以前に報告した零下10度でバルーン拡張するCryoplastyは、これも6ヶ月後の成績までしか発表されなかったが、6ヶ月後ではかなり良好のようである。膝窩部や分岐部など、ステントが使いづらい部位では有効性が期待される。なお、以前にSIRで発表を聞いた際には、「薬剤溶出ステントに比してコストが安い」と強調されていたが、今回はそのことには触れられていなかった。きっとこのバルーンが高いからであろう。
【婦人科領域】
Special sessionでの骨盤鬱血症候群についての講演は、あまりレベルの高いものではなく、データはほとんど無かった。適応の判断が難しいし、奏効率もさほど高いものでない。塞栓剤についてのコンセンサスやどのレベルでのどの程度の塞栓が最適かというコンセンサスも無いに等しく、会場との質疑応答もすれ違いばかりであった。
周産期出血に対するTAEの講演は良かったが、問題はこの治療法が、欧米でもまだまだものすごくunderutilizationの状態にあるという事実であろう。過去の報告の多くが10例以内であり、一時止血効果には極めて優れ、手術を回避したり、手術の出血量軽減に極めて有効な治療法であることに疑いはなさそうなのだが、どうも「比較的若い女性を対象とした被曝を伴う緊急性のある治療」と言うことで、産婦人科医の理解が世界的にもまだまだ不足しているのを痛感した。
挙児希望患者に対する子宮筋腫塞栓術(UAE)と題された講演は、一般論と過去の報告のレビューに過ぎなかった。結局は、「筋腫が不妊の原因と考えられ、子宮全摘術以外に治療法の無い患者が唯一の確立した適応であり、他は個別の患者ごとに判断する必要がある」という当たり前のものであった。現実には説明する医師の積極性によって、患者の対応も当然違うのだが、、。UAE後の妊娠率についてのデータはまだ多くない。元々UAEは、挙児希望患者を相対的禁忌としていたので、対象患者が比較的高齢である。妊娠例がかなり蓄積されてきてはいるが、流産の率もかなり高いようである。まだまだ適応には慎重さが求められる。印象的であったのは、開腹にせよ腹腔鏡下にせよ、筋腫核出術後の妊娠率に関する過去の文献を調べると、いずれも報告によって10%台から60%台までと、施設によって成績に極めてばらつきが大きいという事実であった。施設ごとの適応や術者の技量などにまだまだ大きな較差があるものと想像される。
UAEのscientific sessionでは、Embosphereと球状PVAを比較した動物実験の演題が同施設から2題あり、球状PVAの方が圧縮されやすいので、より細いレベルの血管に認められる傾向があることや、いずれの製剤も異物に対する炎症反応はあるものの生体適合性には大差なく問題はないであろうことが報告された。
EmbosphereとEmboGoldを比較した発表があり、EmboGoldでは回復までに要した期間が有意に長かった(主に痛みが原因)。以前に報告したように、この製剤はすでに企業の方が、「UAE用としては推奨されない」とするに至っている。また皮膚紅斑の合併症が6例生じ、うち5例はEmboGoldであったが、1例は通常のEmbosphereであった。
ローマからUAEの長期成績という発表があり、抄録には「全例にゼラチンスポンジを使用」と書かれてあったので期待していたのだが、Methodを話し始めるとEmbosphereだと言うではないか。そして詳細のスライドをみると、ゼラチンスポンジは初期の10例だけであった。あまりのことに発表後に質問したら、「抄録は間違いで、訂正を求めたが駄目だった」と、にこやかにと言われた。どついたろかと思った。なお、塞栓剤を変更したことに特に理由はなく、合併症や有効性にも差はないようだと答えていた。といっても、こういう演者の発表だから、その内容を信じる気持ちにはかけらもなれない。2006年のCIRSEはローマでの開催なので、トルコでの悪夢を思い出して少し憂鬱である。
卵管を塞栓することで避妊治療とするアイデアは、以前より多数の動物実験の報告があったが、今回はフランスからNBCAを用いた臨床成績の報告があった。抄録を読んだだけだが、妊娠例はまだ1例もないとのことである。
【悪性腫瘍】
RFなどの局所治療にも当然ながら多くの時間が割かれていたが、私は時間の関係や他との重なりなどのために殆ど聞くことができなかった。この分野に関しては何も報告できないことをご了解願いたい。とにかく、デバイスもどんどん進歩しているし、臨床例も急速に増えている。問題はあくまでも、エビデンスがあまり伴っているように見えないことであろう。
肝腫瘍のSpecial sessionでは、手術・原発性肝癌・転移性肝癌の3つの講演があった。昨年は、CIRSEでもTACEが盛んになっていくことを予感させるような気合いの入った講演が続いたのだが、今年の講演はいずれも、全く新味のない、日本人にとっては得るもののほとんどない、つまらない講演ばかりであった。やはり日本のIVR医がもっと海外で活躍する必要がある。
Biocompatible社主催のシンポジウムでは、薬剤溶出性塞栓剤の講演が2題あり、会場は500人を超える聴衆で溢れかえっていた。このBeadBlockという塞栓剤については以前にも報告したが、コンタクトレンズの素材を用いた球状のPVAである。アドリアマイシンを吸収させることにより、抗癌剤を徐放させることができる。ウサギの肝臓に植え付けたVX2腫瘍を対象とした動物実験の結果が報告され、単なる動注に比べて血清濃度の上昇が遅く、ピーク値が20〜30%程度に抑えられ、腫瘍内濃度は3日目に、壊死の程度は7日後にピークになるという。VX2は壊死傾向が強いし、単なる塞栓でも壊死は生じるので、これだけでどこまでヒトの癌に有効かはわからないが、とにかく抗癌剤徐放性の塞栓剤というのは、世界中のIVR医が最も待望している製剤のひとつであろう。薬剤除放性でないBeadBlockと薬剤徐放性BeadBlockの両者でのランダム化比較試験が当然必要なのに、それがされていなかったのが残念である(会場からその点について質問があり、演者は「勿論行った」と答えていたが、その内容は明らかにずれていて答えになっていなかった)。また香港では、肝細胞癌に対する安全性や有効性を確認するための臨床試験もすでに始まっており、そのデータが発表されたが、合併症も多く、やはり日本できちんとした臨床試験をしなければと痛感した。
Biosphere Medical社が、Hepasphereという新しい塞栓剤を発表していたが、これはIGTゲートタワークリニックの堀先生が開発されたSAPそのものである。彼の長年の研究成果がついに製品化されたのは、心底嬉しい。パンフレットがおかれていたので、「もう認可されたの?」と聞いたら、数週間後の予定とのことであった。認可前の製品がパンフレット付きで宣伝されているところが、いかにもヨーロッパである。ちなみにこのSAPも、薬剤を吸収させて抗癌剤徐放性塞栓剤として使える。両者が出そろったところで、この方面で良い意味で競争が進み、患者にとって福音となる新製品が作られることを切望している。これらの塞栓剤が一刻も早く、日本でも保険認可されるよう治験が始まることを願うし、これらの有用性を検証する臨床試験は是非とも日本で行われるべきであろう。
【その他】
門脈圧亢進症では、依然としてBRTOは日本だけの技術のようである。発表も日本からのものに限定されていたし、門脈圧亢進症(TIPSを除く)というワークショップに参加しても、PTOにはかなり触れながらも、BRTOについては全く言及されなかった。まだまだ日本から数多くの発表をし続けることが必要であろう。
IVRコンサルタンツ 林信成
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