NEWS 2004.7.5



第27回 リザーバー研究会報告
〜充実した特別講演に感動!〜


会場と同一フロアにあるライブラリーカフェ で開かれたカクテルパーティ

会場からの眺め。研究会にしては少し贅沢?
平成16年7月2日・3日の両日、六本木ヒルズ森タワー49階の六本木アカデミーヒルズにて開催された第27回リザーバー研究会に参加した。言うまでもなく観光客が多く集まる東京の新名所なので、会場は少し(特に前方が)空席が多いように感じられたが、登録者数は400名以上に上り、いつもながら熱い討論が繰り広げられ、予定時間を超過することもしばしばであった。いつも書くことだが、この会はリザーバーを用いた治療と言うことで、放射線科だけでなく内科・外科・産婦人科など本治療に関わる多くの臨床科医が同じ会場で討論を交わす貴重な会である。今回も、放射線科医が発表した縫合手技について、外科の先生から貴重なコメントをいただけた演題があった一方、外科の先生が発表された研究に含まれていた症例で、放射線科IVR医からみると技術的に許容できない部分が含まれていた演題もあった。この会だからこそ、明らかになったことである。最近、あまりにも技術的な進歩が大きすぎたためか、放射線科医以外の参加が、特に若手で少なくなっている印象がある。是非ともこれ以上は、放射線科医率が高まらないように続いていって欲しいと願うばかりである。

一般演題では、いわゆる入江法(5F部分は大動脈内にとどめ、先端のテーパー部のみを分枝に挿入して留置する)の普及が進んでいるのを実感した。これは鎖骨下アプローチ・大腿アプローチを問わない。「血管に優しい」というエビデンスはないものの、多くの臨床医がこれを選んでいるのは、経皮的針生検において、太い針の方が危険というエビデンスが無くても病理医が許容できる範囲でできるだけ細い針を選んでいるのに似ている。残念ながら、おそらくこれに関してランダム化比較試験がなされることはないであろうが、多くの症例が蓄積されていけば、その真実がいずれ明らかになろう。

動注治療を中止・終了した症例で、カテーテルを抜去するかどうかについて、少し長めの討論があった。「感染などの合併症がない限り、原則として抜かない」施設がある一方で、「十分なインフォームドコンセントをとって、患者の希望があれば抜く」施設も多い。そして抜去を許容している施設においては、前述の表現こそ同じだが、IVR医によってその積極性にはかなりの違いがあり、このために現実に抜去する頻度の較差は少なくない。多くの施設が大腿部から抜いているのに対し、「上から抜いているが、ただの1例も合併症は生じていない」と述べる施設もあった。この考えは少し危険である。この問題は、福岡大学の東原先生が以前に、上から抜去した直後に塞栓が原因と思われる半盲が生じた貴重な症例を報告され、二度と上からは抜かないことにされたことに始まると思う。このような合併症は、頻度的にはかなり希であろうが、その重篤さを考えれば、たとえ「今まで経験がない」からといって上から抜いても良いことにはならない。「十分なインフォームドコンセント」といっても、その「十分さ」には現実には大きな隔たりがあるのは想像に難くない。やはりできることなら、面倒でもお金がかかっても、下から抜くべきであろう。

リザーバー研究会には、デバイス検討委員会というのが設置されており、ポートとカテーテルの接合性やデバイスの不具合などの問題に、医師とメーカーの両者が共同して対処するシステムができている。今回は、「重要な問題についてはメールあるいはFAXで会員に緊急安全情報を伝達するシステムを稼働させる」ことが承認されたほか、メーカーからはデバイスの不具合について、各デバイスに添付された患者記録カードを活用して報告して欲しい旨の発言があった。例えば種々の原因によるカテーテルの亀裂は現実にはおそらく1%程度は生じているものと想像されるが、現実にそれが報告されるのは0.1%程度と一桁少ない。こういった問題は製造メーカーを責めるだけでは意味がないし、責任は明らかに施行したIVR医にもある。この委員会が、医師と企業が協同して患者の安全に配慮する模範となることを祈っている。

サテライトシンポジウムでは、国立がんセンター中央病院の島田安博先生が、転移性大腸癌に対する全身化学療法の最近の進歩について語られた。「抗癌剤が効かない癌の代表であった大腸癌が、いまや最も効く癌になってきている」との主旨であり、肝動注化学療法について適応を著しく狭く考えておられるのが良くわかった。質疑応答で荒井保明先生が、彼にしては珍しく少し冷静さを欠いているのではと疑うほどしつこく、簡単にいうと「どういう症例なら肝動注をやらせてもらえるのか?このような症例でもだめなのか?」と詰め寄ったのだが、島田先生の答えはほぼゼロ回答に近く、「全身化学療法をするか、何もしないのかのどちらか」という原則は崩れなかった。その理由については「肝動注化学療法が生命予後延長に寄与するというエビデンスはない」ためであり、「荒井先生のような特殊な技術レベルでされないとできない治療であって普遍性が無い」からだと主張されたように思う。しかしながら講演を拝聴すると、大腸癌に対する全身化学療法は、いかに進歩したと言っても、欧米で認可されている最新の薬剤を用いて平均余命20ヶ月にすぎない。きちんとした臨床試験でないにせよ、愛知県がんセンターの動注化学療法の成績はこれを凌いでいるし、ましてや日本では、いまだにそういった欧米で当たり前になっている抗癌剤の認可がまだかなり先になりそうである。既存の日本でも使用可能な薬剤で代用した全身化学療法の臨床試験をするくらいなら、是非動注化学療法にも目を向けて欲しいと聴衆の多くは思ったはずである。また本治療法がいまだに不適切な技術で行われている施設が少なくないのは事実であろうが、「動注化学療法は特殊な技術を要するもので普遍性が無い」とされるのには大きな違和感がある。この研究会の会員の中には荒井先生に劣らない技術を持ったIVR医や、荒井先生に教えられたIVR医が数多くいる。荒井先生が国立がんセンターに移動されて、島田先生と同じ施設になったことであり、これからも是非、前向きな話し合いを続けていってもらいたい。

特別講演の1つ目は、特許庁の山口直氏が「医療関連技術と特許」というタイトルで話された。特許になるもの、ならないもの、日米欧の特許に関する考え方や法律の違いなど、具体的な事例を挙げて明快に説明された。特許取得にかかる時間とお金についても話された。申請から審査が終わるまでの時間(現状で2年7ヶ月)を短くするように増員などの努力がなされていることや、早期審査を出願すれば3ヶ月以内に審査が終了することなど、特許庁も着実に改革を進めつつあることが良くわかった。IVR学会の際の木下氏の講演もそうだが、最近は官僚の方達の話を聞いていて以前より希望が持てる話が増えつつある。この調子で社会保険庁なども早急に改革してもらいたい。

2つ目の教育講演は、国立がんセンターでJCOGのデータセンター長をされている福田治彦先生による「臨床試験に必要な統計的考え方〜統計的推論と試験デザイン」というものであった。本誌ですでに報告したように、福田先生は今年のIVR学会の際に併催された肝動脈塞栓療法研究会でも素晴らしい講演をされた。今回は医療従事者・研究者が知っておくべき統計学について、基礎からわかりやすく教育的に講演された。有意差や95%信頼限界の意味など、例を挙げて説明していただき、雲が少し晴れたような気分であった。さすがに最後の方で、非劣性やintention-to-treatの話になってくると、もう頭が破裂しそうになったが、こういう教育を持続的に受け続ける必要性を痛感した。特に、retrospectiveあるいはad hocでなされたサブグループ解析について、これが如何に数字のまやかしであり、これにだまされてはならないか、その理由が良くわかって感動した。現実に学会発表は勿論、有名学術誌でも、数字ばかりが並べ立てられ、「誤った統計学的手法で統計処理して、安全で有効であると不当に結論づけられている」論文が如何に多いかは、驚くべきであろう。

いずれにせよ今回のリザーバー研究会は、当番世話人の佐竹先生と代表世話人の荒井先生が、同一施設の所属となって見事に連携された、とても充実した会であった。

IVRコンサルタンツ 林信成


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