NEWS 2008.2.8

 

第1回脊椎IVRフォーラム印象記 
NTT東日本関東病院ペインクリニック科

朴 基彦

 

図1 開会の挨拶を述べた齋田幸久先生(聖路加国際病院放射線科)
 
図2 基調講演を行った小林信雄先生(聖路加国際病院放射線科)
図3 シンポジウムの司会も務めた沼口雄治先生(聖路加国際病院放射線科)
図4 第3部シンポジウムの様子

2008年2月2日土曜日に聖路加看護大学(東京・築地)にて第1回脊椎IVRフォーラムが開催されました。 椎体形成術に関しては4年前より京都で椎体形成術研究会が開かれています。関東で椎体形成術をテーマとした会が開かれるのは、2005年4月の第7回つきじ放射線研究会「経皮的椎体形成術―最大の効果を上げるためのコツ」(聖路加看護大学)以来であるとお聞きしました。 今回、第1回脊椎IVRフォーラムに参加する機会を得ましたので報告させていただきます。

本会の趣旨は「セメント注入による経皮的椎体形成術についてはようやく一般に認知されようとしています。ここでは、日本における経皮的椎体形成術の技術を標準化し、さらに結果をエビデンスとして広く示すことが我々の役割と考えています。これを踏まえ、脊椎IVR に関する研究会を年1回実施することを企画致しました」とのことで、聖路加国際病院放射線科による主催で行われました。

聖路加国際病院放射線科 齋田幸久先生による開会の挨拶の後に、第1部、基調講演として「聖路加国際病院における経皮的椎体形成術の現状」との題目で聖路加国際病院放射線科 小林信雄先生による発表が行われました。聖路加国際病院ではすでに1,000例以上の症例を積み重ねており、その経験及びエビデンスに基づいたお話をお聞きすることができました。

第2部は
テーマ1 経皮的椎体形成術の適応と患者選択についての考え方
テーマ2 経皮的椎体形成術の技術的要点
テーマ3 経皮的椎体形成術における自施設の特徴
をテーマとして一般演題として11演題の発表が行われました。
主に穿刺方法に主眼を置いた発表として3演題(石川県立中央病院 小林 健先生 、鳥取大学 神納敏夫先生、聖マリアンナ医科大学 滝澤謙治先生)がありました。各施設それぞれにその施設の設備(CT透視、cone-beamCTなど)を活用し安全で簡便かつ迅速に穿刺を行う工夫を凝らしていることがわかり大いに参考となりました。
また透視での視認性がよく内腔が広い穿刺針を開発したとの発表(大津市民病院脳神経外科 小泉 徹先生)や、クレフト症例にどれぐらいセメントを充填するにより術後の再骨折率がどうなるかなどといった発表(久留米大学医学部 田中法瑞先生)、1度に何椎体まで施行可能かについての発表(中国労災病院 内藤 晃先生)など、より患者にとって負担が少なく、安全かつ合併症が無いよう行うため様々なアプローチがなされていることが伺えました。
転移性骨腫瘍に対しラジオ波を併用し椎体形成術を行った発表が2演題(鳥取大学 足立 憲先生、 三重大学 中塚豊真先生)ありました。個人的には焼灼後にセメントを注入する方法はPVPの安全性を増すのではないかと思っていたので興味を持って聞かせていただきました。 他にPVPの効果判定のために各種のQOL尺度を用いたとの発表(聖マリアンナ医科大学 吉松美佐子先生)は、我々ペインクリニシャンが常日頃、必要性を感じながらも圧迫骨折の患者に対しては手付かずであった分野だったので少し悔しく感じつつも大いに共感しました。日帰り治療に関する発表(京都ルネス病院 下山恵司先生)もあり今後骨粗鬆症性圧迫骨折に対しては先進医療で行うことが不可能になる状況であるので、我々としても考えていかなければいけないテーマであると感じました。日帰りで行う際に発熱が問題となるのでは? との質問もあり活発な議論が行われました。
術者被曝に関しては関西医科大学の米虫 敦先生が経皮的椎体形成術の術者被曝量の大きさについて強調されていました。「熟練者が自己責任で勝手に被曝するのは自業自得。しかし、PVPで指導的な立場の医師たちが、PVPの初学者に対して無為な被曝を受ける手技を教育してはいけない」との趣旨の発表でした。大いに賛同し今後我々もさらに注意していかねばと感じました。

第3部シンポジウムには主な施設の先生がシンポジストとなり、活発な討論が行われました。司会は聖路加国際病院放射線科 沼口雄治先生でした。 シンポジストの面々は小泉 徹先生(大津市民病院脳神経外科)、下山 恵司先生(京都ルネス病院放射線科)、滝澤謙治先生(聖マリアンナ医科大学放射線科)、谷川 昇先生(関西医科大学附属枚方病院放射線科)、蓮尾金博先生(国立国際医療センター放射線科)、樋渡昭雄先生(九州大学放射線科)、不破相勲先生(聖路加国際病院放射線科)です。
椎体形成術を行う時期、タイミングについては、骨折後直ちに行うとした施設が複数ありました。安静により改善する可能性があるが、高齢者のQOLを落とさないため、痛みを緩和するためには早期に行ったほうが良いとの意見のようでした。椎体形成術は侵襲的手技でありますし、今後さらに議論を行う必要があると感じました。
印象的であったのは聖路加国際病院での予防的PVPでした。これは胸腰椎移行部に圧迫骨折があった際には予防的にその椎体の上位椎体や下位椎体にもPVPを行うとのもので、結果として再骨折率が低下したとのことでした。率直にいって、術後1年間で20%程度の発生率である隣接椎体の骨折を防ぐために、全例に対し予防的にPVPを行うことに対しては疑問を感じました。しかし保険診療でない現状で、患者にとっては再度の椎体形成術を行う際の自己負担を減らすという観点から考えると魅力的ではあります。保険適応になると不可能な治療法と思われますので今のうちに症例を積み重ねていただき、今後も報告を聴いてみたいと思いました。予防的に行う場合も椎体形成術が侵襲的治療である限り合併症は不可避であると考えます。リスクとベネフィットを症例を重ねることにより正確に評価し、判断すべき問題であると感じました。
また希で重篤な合併症として、後壁破壊症例でPVP後にその椎体で椎体圧潰が進み骨片移動による遅発性の脊髄神経圧排が複数の施設であったとの報告がありました。 稀ではあるがこのような遅発性の合併症が起こりえることを我々は十分認識し、患者にもその旨をインフォームドコンセントしておくことは今後椎体形成術をさらに広めていくために必要不可欠であると感じました。

第4部として「経皮的椎体形成術を取り巻く現状」について国立がんセンター中央病院放射線科の荒井保明先生がお話されました。 現在、先進医療で認められている椎体形成術が転移性骨腫瘍に関しては、今後臨床的使用確認試験に移行することなどについてわかりやすくお話されました。

最後に閉会の挨拶を聖路加国際病院放射線科の松迫正樹先生が行いました。 その後、懇親会が聖路加国際病院に場所を変えて開かれましたが、そちらでも会場以上の熱気で忌憚のない議論が交わされました。
私自身も沼口雄治先生や小林信雄先生など聖路加国際病院の諸先生方とお話させていただきましたが、患者を治してあげたいとの強い熱意を持って臨床診療に当たっておられることを感じ、志を同じくするものとして大いに共感しつつ議論させていただきました。

第1回脊椎IVRフォーラム全体として感じたことは、参加者が放射線科医師や診療放射線技師の方が多く、放射線科が中心の会との印象を持ちました。放射線科で椎体形成術に積極的に取り組んでおられる先生が多く参加されていましたので、視点が比較的共通しており、議論も論点がはっきりしており深みのある討論ができたことは大きな収穫だったと思います。整形外科や脳神経外科、ペインクリニック科医師の参加が少なかったのが残念でしたが、今回は準備期間が短く周知することが難しかったとのことです。今後の課題であろうと思いました。しかしながら日々の仕事で忙しい中、このような会を開いていただいた聖路加国際病院放射線科の方々に感謝したいと思います。

次回は関西医科大学放射線科が当番世話人とお聞きしました(関西医科大学は、この夏に関西で開かれる「第4回椎体形成術研究会」の当番世話人でもあるそうです)。 今後この会がさらに発展することを願いながら末筆とさせていただきます。


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