NEWS 2004.4.5



SIR2004報告!

2004年のSIR年次総会は、3月25日から30日に、アリゾナ州フェニックスで開催された。いつものように、得るものは少なくない。なお、最終日前日に、奈良医大の吉川先生、愛知医大の石口先生、三重大学の山門先生、大阪大学の大須賀先生と、会を振り返る座談会を持った。とても充実した内容となったので、是非、RadFan誌でご覧下さい(6月号掲載予定)。


図1:オープニングセッション


図2:企業展示。
RSNAと全く同じスタイルの小型版である。


図3:学会場のPhoenix Plaza


図4:会場向かいのホテル。
企業のパーティーはここが多い。


図5:総合受付。
すぐ向こうは企業の展示場である。


図6:Scientific Sessionの会場はこじんまりしている。これをもっと充実させるべきではと、プログラム委員長に提案した。

【透析シャントインターベンション】
DOQIの勧告により、動静脈瘻が増えてきたのは今まで報告してきたとおりである。今回はついに、Plenaryセッションで米国の演者が動静脈瘻によるシャントの治療法について講演した。内容的にはさほど目新しいものはなかったが、透析医のシャントインターベンションへの進出を阻止するべく、SIR会員の教育には熱心に取り組んでいる。末梢用カッティングバルーンと従来型バルーンのランダム化比較試験の成績が、Mallincrott InstituteからLate breaking abstractで報告された。340例の人工グラフトが対象であったが、技術的成功率・6ヶ月開存率のいずれも、また狭窄例においても閉塞例においても、驚いたことに両群間で有意差は見られなかった。さらにはカッティングバルーンでは手技に関連した合併症が8例(4.6%)に生じており、1例は手術を要したという(従来型ではデバイス関連合併症はなかった)。カッティングバルーンにとってかなり衝撃的なネガティブデータである。これは日本では少ない人工グラフトが対象となっていること、6ヶ月という透析シャントでは比較的長めの経過観察をしていることを考慮しても、かなり驚くべき内容であった。日本のデータは学会で見る限り、カッティングバルーンの優位性を報告しているものが多いが、いずれも短期でランダム化比較試験でないものばかりである。是非、日本でもランダム化比較試験をすべきであろう。

【頸動脈ステンティング】
SIRはこの領域に、ものすごく力を入れている。半日かけて大きなシンポジウムが持たれたし、他にもセッションはたくさんあった。内頸動脈内膜摘除術とのランダム化比較試験であるSAPHIREでは、ハイリスク患者の中でも特に糖尿病患者において、ステントの成績が手術を大きく上回った。本法の有用性や遠位塞栓防止用デバイスの使用については、もう疑う余地はなさそうである。ただし、「症候性では50%以上・無症候性では80%以上の狭窄」という適応は、特に無症候性患者について疑問を感じている演者が多い印象であるし、医療費の増加という経済的な問題も残っている。なお米国では、脳神経外科医は数も少ないし、もともと血管造影への関与は少ない。また神経放射線科医もIVRに熱心な人の割合は少なく、多くが「楽して儲かる」MRの読影を主たる仕事にしており、一般IVR医がこの領域を手がけるのは大歓迎のようである。ただし、循環器科医は、冠動脈ステントの有効性に疑問を投げかける記事がニューヨークタイムスに掲載されたこともあり、参入に熱心なようである。

【子宮筋腫の塞栓術】
PVAとEmbosphereのランダム化比較試験の成績が数本出ていた。いずれも、成績には有意差は無いと結論づけている。EmboGoldはアレルギーの問題からUAEでの適応は中止になったのだが、それについての演題は見られなかった。筋腫核出術や経膣的摘出術との比較検討の報告もあったが、これらは比較する意味が本当にあるのか(出血量が少ないとか当たり前)、いつも疑問に思いながら見ているが、社会的側面で必要なのであろう。塞栓の程度については、Embosphereの登場以来、筋枝が残る程度のいわゆるlimited embolizationにとどめるべきとの意見が大勢であるが、PVAだとしても軽めの塞栓で効果は変わらないと言うランダム化比較試験の報告もあった。しかしその一方で、完全な梗塞が得られた症例と不完全に終わった症例での長期予後の違いも報告され始めており、真に適切な塞栓の程度については、コンセンサスが得られるまでにまだもう少し時間がかかりそうである。本法の安全性がおおむね認知され、45歳以下なら卵巣機能への影響も少ないことが明らかになってきたことで、いよいよ妊娠希望者へも適応を拡大しようとする動きが見られるようになった。将来的には不妊治療の一つとなることへの期待もあるし、ついに不妊患者を対象としたUAEと核出術のランダム化比較試験まで発表された(UAEの方が優れていた)。ただ、これはあまりにも重大なテーマであり、やはり適応にはまだまだ慎重さが必要であろう。筋腫核出術とUAEの両方を受けた患者が、その後妊娠したが、妊娠中に子宮破裂を来たした例も報告された。なお、ゼラチンスポンジに関しても、効果は他の塞栓剤と変わらないと言う講演がなされた。これは画期的なことであり、勝盛哲也先生の長年の努力のたまものであろう。演者はAJRに掲載された勝盛先生の論文の写真を引用し、ゼラチンスポンジはここまで細かく切って使うのだと言うことを示していた。肝癌のTAEに慣れ親しんだ我々日本人IVR医にとっては長年見慣れているものなのだが、会場の欧米人はまるで東洋の手品を見るかのように感嘆の声をあげていた。なお、球状のPVAは昨年より販売されていたが、今回はBeadblockという色つきの球状PVAも登場していた。これは海外ではテルモが販売しており、日本への早期の導入を望みたい。

【下大静脈フィルター】
回収可能なフィルターが登場したことで、一時的留置フィルターは、もはや適応はほとんど無いという傾向になってきているようだ。一時的留置フィルターは不潔だし合併症の報告も少なくないし、いずれ消え去る運命にあろう。問題は、回収も永久留置も可能なフィルターがあるのなら、今後はすべてがこれで済むのかという問題であるが、これについては、回収可能とするためにいくつかの変更点があるため、これで本当に逸脱などの問題が生じてこないか、もう少し長期予後を見届ける必要はあるだろう。

【被曝】
IVR医の被曝軽減の工夫の演題も少しあったが、衝撃的であったのはIVR医を対象とした白内障のスクリーニング検査の報告で、29歳から62歳のIVR医を対象に精査したところ、22人に放射線障害が原因と疑われる水晶体の混濁が認められ、10人は白内障と診断され、1人は白内障で40歳未満で手術を受けていたという。16人では白内障の程度に左右差があり、管球に近い方で高度であった。あらゆるIVR医はすぐにでも眼科を受診すべきである。

【下肢静脈瘤】
これも特に昨年から、新しい分野として力が入っているところで、今年もかなりの時間が割かれていた。カラードプラで診断し、大伏在静脈の周囲に希釈したキシロカインをたっぷりと注入した上で、これをRFあるいはレーザーで廃絶する手法である。長期成績も標準的外科治療であるストリッピングに遜色なく、合併症も減ってきたようで、近々大ブレイクするのではと思っている。

【腸骨静脈血栓症】
この領域は、かなり以前からその重要性が指摘されながらも、側副血行路の発達でその場は凌がれる例が多いことから、まだ積極的に治療されている率は低い。理論的には絶対に正しいことをしているはずなのだが、長期成績の報告も少なく、認知された方法となるには、まだ時間がかかりそうである。

【抗癌治療】
SIRにおける肝腫瘍に対するIVR治療は、毎年あまりのレベルの低さ、進歩のなさに唖然とするのだが、米国でも患者は急増しており、今年はさすがに反省があったのか、英国・イタリア・韓国のIVR医に講演させた。勿論、従来よりは遙かに進んだ内容であるし、特にイタリアのRFの症例数は他を圧倒するものがあるので、細かな疑問点は寄せ付けないインパクトがある。TACEで日本の演者が呼ばれなかったのが極めて残念であるが、それも英語力とエビデンスの不足という自らの不徳が招いた結果であろう。IVR学会としての戦略性のある取り組みの必要性が痛感される。イットリウム90の製剤が市販されるようになっているが、実際に使用している施設は少ないようであるし、「合併症を防ぐには胃十二指腸動脈の塞栓が勧められる」といった極めて初歩的なことが注目されているレベルである。なおリザーバーによる動注化学療法は依然として、オフィシャルには完全に無視されたままである。海外のTACEは、薬の使い方も変だし、PVAやNBCAまでもが平気で使われている。何とか日本がもっときちんと指導する必要があると思う。インターナショナルラウンドテーブルディスカッションという米国外の参加者を集めたミーティングに参加し、プログラムチェアマンのDr. Steikenと少し話したが、彼らも興味は持っているし、日本から質の高い論文が発表されて、英語に堪能な演者がいるのなら、是非とも積極的に参加してほしいという感触であった。

【下肢動脈】
Controversyセッションの形をとって、内科医・外科医も講演し、IVR医からは、内膜下PTAや薬剤溶出性ステント、またステントグラフトの講演が続いた。残念ながらお互いでつっこんだ討論をするという形式にはなっておらず、言いっぱなしで終わった印象がある。腸骨動脈では奈良医大の吉川公彦先生が、多数例で素晴らしい長期成績を報告された。成績があまりに良いので彼らの多くが素直に信じてくれるか少し疑問なほどである(超音波による小肝癌の発見にせよ、TAEの成績にせよ、米国人は残念ながら、自分たちより優れた成績については、ねつ造があるのではと疑う傾向が強い)。しかし、腸骨動脈の成績はprimary stentingで明らかに改善した。これは残存狭窄部だけでなく全体をしっかりとステンティングするからであろう。また大腿動脈以下でのステントの成績は、過去の報告では確かにバルーン拡張と差がなかった。しかしそれはWallstentが同部で良くなかっただけかもしれない。SIROCCO試験の成績で見られるように、ナイチノールステントであるSMARTの成績は、ラパマイシンを溶出しないコントロール群のベアーでも悪くはない。勿論、薬剤溶出性ステントなら、さらに成績の向上が見込まれるだろう。ステントグラフトも、最近のデータはかなり改善してきている。液体窒素で急速冷却することで解離や内膜過形成を抑制するというPolarcath, Intracoil, aSpireなど、いずれもまだ長期成績は出ていない。なお、昨年、復権するかと思わせたレーザーは、再び沈んだようで、ほとんど見かけなかった。

【大動脈などステントグラフト】
残念ながら、もはや熱狂は何もない。昨年のガイダントの撤退は大きな衝撃であり、毎年のようにリーク症例が増えていくのだから仕方ないともいえる。Fenestrationをつけたステントグラフトの発表は面白かった。腎動脈や腹腔動脈などを温存しながら十分なランディングゾーンを持てるし、内腸骨動脈を温存しつつ外腸骨動脈にまでステントグラフトを持っていける。なお、TIPSシャントに関しては、昔はポリエステルカバーで悪い成績が出ていたのだが、PTFEカバーの出現で状況は一変し、演者はTIPSの際には必ずPTFEカバードステントを使うべきと明言した。

【RFなど】
RFは一時の熱狂は少し冷めたが、血管内照射のように見捨てられたのではなく、ルチーン化している。RITAは径7cmまで凝固可能なデバイスを出し、強力にプロモーションしている。肝臓はもちろんだが、腎臓、副腎、肺、骨などへの応用も、どんどん進んでいる。骨ではセメント療法が完全に定着しているのだが、これは米国ではほとんどの例で骨そしょう症が対象だからであり、腫瘍症例が増えれば、RFとの併用が進むかもしれない。

【その他】
以前に報告したシミュレーション装置(Virtual Reality)がさらに洗練されていた。「コブラ型」とかパネルで指定すると、それに合わせた透視の画像が映し出され、これを操作できる。ガイドワイヤーも硬さなどを選べるし、無理にカテーテルを押し込めば跳ねる。「ここでヘパリンを追加せよ」とか教えてくれるし、患者のうなり声まで出る。教育にはとても素晴らしい装置である。

IVRコンサルタンツ 林信成


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