NEWS 2003.12.12



RSNA2003の個人的な感想

RSNA'03のテーマは"Communication for Better Patient Care"であった。Dr.Fritzsche会長はOpening Sessionで、"Push Button Less, Talk More"と優しく語りかけた。彼女がコミュニケーションをとるべき相手として挙げたのは、「依頼医を含む同僚」「患者」「医学生」「一般大衆」の4者であった。後2者を前2者と同等に取り上げたところが示唆に富んでいる。確かに放射線医学の進歩はまさにITの進歩そのものであり、次から次へと新しいテクノロジーが生まれ、放射線画像診断医は朝から晩までずっとモニタに向かっているようになってしまった。彼女はきっと、それで放射線科医が社会から孤立することの無いように、そして放射線科医を目指す者がこれからも増え続けるようにと願っているのであろう。

多くの企業が凌ぎを削る画像診断装置の進歩は言うまでもない。CTは当然のごとくさらに多列化し、真の4次元画像がもう目の前である。そしてこれに伴う過酷な管球への負荷に対するブレイクスルーとして、熱容量を増やすのではなく冷却効率を根本的に改善する技術も登場した。一方MRは、当然のように磁場強度が上がっただけでなく、コイルを患者テーブルに埋め込むことで全身の撮像を効率よく行える技術も登場し、ますます全身CT・全身MRへの方向が加速している。そして昨年大きく脚光を浴びたPET-CTは、教育講演でも既に標準的な診断法の一つとして取り上げられていた。

これら画像を産み出す側の進歩の速さに比べると、処理する側の進歩は、残念ながら少し遅れ気味のようで、未だに群雄割拠の状況を抜け切れていない印象がある。爆発的に増え続ける画像データを保存したり、自由に加工できる能力が増してきているのはわかるのだが、放射線科医にとって必ずしも十分にフレンドリーだとはまだ思えない。こちら側は、もう少し一般読影医との"Communication"が必要なのではないだろうか?

しかし放射線科医にとって何と言っても最大の問題は、増え続ける画像を読影するマンパワーである。日本と同様、米国も放射線科医は不足している(ただし、米国では不足して需給バランスが悪くなると、市場原理にしたがって報酬が上がる点が異なる)。このため今回の企業展示では、遠隔画像診断の会社がかなり目立つようになってきたし、国境を越えて夜間・土日祝日をカバーできることを謳っている企業もあった。日本でも是非、良い意味での競争が起きて欲しいのだが、医療報酬が公定価格である点は大きな障害だと思われる。

ワイヤレス・タブレットPC・PDAは、いずれも今回のRSNAのキーワードの一つであったが、モバイルパビリオンで宣伝される内容はまだ今ひとつ現実感がなかったし、InfoRadのショーケースは全くの子供だましであった。これらが日常になるにはまだ数年かかるのであろう。実験・研究は進みつつあるのだから、来年に期待したい。

さて、毎年のように進化し、巨大化しているように感じられるRSNAであるが、専門分化の進行により、参加者の総数はあまり変わっていない。むしろ参加者の減少に歯止めをかけるべく、懸命に工夫を凝らしている。2000年から導入されたポスター発表は完全に定着し、日本からの発表は極めて多い。また口演は、発表7分・討論3分と、ずっと以前ほどではないが時間の延長が少し図られて、充実感が戻ってきた。しかし何よりも力が入って感じられたのは卒後教育である。従来の伝統的なリフレッシャーコースやハンズオンだけでも膨大な数に上るのに、昨年から始まったEssentials of Radiologyというレジデント向けの基礎教育コースは、数千人収容規模の巨大な会場にもかかわらず、床に座り込んで聴く者や立ち見が出るほどの大盛況であった。さらに今回は、"Case-based Review"という、症例が提示されて質問が出され、受講者が手元ボタンで回答できるというインタラクティブな教育コースも登場した。これも大好評であり、会場が受付エリアから遠かったこともあり、私も面白くてつい長居をしてしまい、前日に考えていた予定に支障を来すほどであった。RSNAは日本の若い医師達の卒後教育の場としても最高レベルである。

RSNAは超巨大なバイキング会場のようなものである。選択の種類があまりにも多く、美味しそうなメニューであふれている反面、そのあまりの量にかえって食欲をなくすほどである。朝から晩まで足が棒になるまで展示会場を歩き回ったり、ずっと口演会場につめていても、RSNAが提供するメニューのほんの数%しか味わえないうちに、もはや満腹となって帰国せねばならない日を迎えてしまう。今後もRSNAは、世界中のあらゆるレベルの放射線科医のニーズに少しでも応えようと、進化し続けるであろう。そしてその進化が続く限り、日本からの巡礼もまた絶えることがないのだろうと思う。

IVRコンサルタンツ 林信成

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