CyberKnife Master’s Bible 第1回「サイバーナイフによる放射線治療:頭頸部腫瘍・疼痛緩和」

2012.11.04
CyberKnife
CyberKnife Master’s Bible 第1回

サイバーナイフによる放射線治療:頭頸部腫瘍・疼痛緩和

総合青山病院サイバーナイフセンター 水松真一郎

 
要旨
 頭頸部腫瘍に対する初回放射線治療としてサイバーナイフ(CK)治療を行った症例では、高い局所制御率と共に、有害事象を軽減することが可能である。疼痛緩和を目的とするCK治療では、短期間で治療効果が得られることが最大の利点である。

 
緒言
 サイバーナイフ(CK)はロボットアームに小型リニアックを合体させた高精度定位放射線治療機器である1)。1994年に米国で開発され、1997年より日本でも治療が開始された。2012年9月現在、日本では27施設にCKが導入されている。2010年7月にCK最新機G4が薬事承認され、体幹部治療に対する進化が期待されている。
 CKは、以下のような特徴を有しており、定位放射線治療と同時に高エネルギー放射線治療、IMRT、IGRTも可能な放射線治療機器である。

1.低侵襲固定
 ガンマナイフに代表される金属フレームによる頭蓋固定の侵襲がなく、分割照射も容易に行うことができる。

2.ロボットアームによる多方向照射
 当施設で導入しているG3では、最大1,200方向からの照射が可能である。アイソセンターを必要としない照射が可能であるため、形状に沿った照射野を作成し、最適な方向からの治療を行うことができる。極端な接線方向からの照射でも可能である。

3.動体追尾・位置補正システム
 Skull TrackingやXsight Spine Tracking、Synchrony呼吸追尾システムなどの機能を用いて病変、患者の動きを検出補正することで高い位置精度を実現している。これらの特徴によって、重要臓器に対する有害事象を軽減し、病変に対する治療効果を高めることを可能にしている。
 当院では2009年1月よりCK治療を開始し、2010年10月よりXsight Spine Tracking Systemを加えて、頭蓋病変・頭頸部病変・脊椎脊髄近傍病変を主な治療対象としている。これまでのCK治療の臨床経験を中心に頭頸部腫瘍および疼痛緩和について述べることとする。

頭頸部腫瘍
 頭頸部腫瘍は、手術、放射線治療、化学療法を組み合わせた集学的治療が必要となる症例が多く、それぞれの治療内容も多様化している。初回治療としては60~70Gy程度の高線量放射線治療が広く行われている。CKは放射線治療歴を有する患者の局所再発病変、頸部リンパ節転移などの局所転移病変に用いられている例が一般的であり、広範囲な照射領域が必要となる初回治療には適していないと考えられてきた。最近では高齢者や難治性腫瘍、boost目的など、初回放射線治療としてのCKの有用性を考えての選択も増えてきているように感じられる。

1.総合青山病院CKセンター
 当施設で2009年1月~2012年8月までにCK治療を行った頭頸部病変(脳神経外科領域の頭蓋底腫瘍を除く)は98名、170例であり、全例が腫瘍であった。男性65名、女性33名、平均年齢は67.3(31~95)歳であり、80歳以上が16名(16.3%)、90歳以上が4名(4.1%)であった。他院からの紹介率は86名(87.8%)である。

2.初回放射線治療としてのCK治療
 98名中の46名(46.9%)が初回放射線治療または初回放射線治療に続いてのboost照射であった。治療病変は図1の如く多様である。

図1 総合青山病院CKセンターにおける頭頸部腫瘍(2009年1月〜 2012年8月)

初回放射線治療としてCK治療を選択した理由としては以下のような内容であり、複数の理由が存在する症例も多い。
①高齢者や全身状態の悪い患者(図3)
②標準的放射線治療抵抗性腫瘍(図4)
③標準的放射線治療による強い有害事象が予測される患者(図4)
④手術困難な患者(図245)
⑤境界明瞭な病変(図3)
⑥標準的放射線治療拒否を含む患者の希望(図26)
 通常は辺縁線量30~35Gy・3~5分割で治療を行っており、頸部リンパ節転移を伴っている場合は可能な限り同時に治療を行っている。初期治療効果は非常に高く、無効例はほとんどない。悪性黒色腫や腺様嚢胞癌などの放射線治療抵抗性腫瘍(図4)や、放射線治療効果が不明瞭な腫瘍(図5)でもPR以上の効果が得られている。巨大病変など治療効果の予想が難しい腫瘍では2期的、3期的治療を行なっている(図5)。
 鼻腔・副鼻腔癌や眼窩MALTリンパ腫は、近接する眼球、視神経に対する影響を懸念しての治療依頼である。鼻腔・副鼻腔癌は周囲骨構造が存在するため、治療範囲の設定は比較的容易であるが、線量低下による眼窩周囲での再発が当面の課題である。眼窩MALTリンパ腫は4例経験しているが、放射線感受性が高いため、辺縁線量20Gy・5分割で視機能障害を起こすことなくCRが得られている。
 外耳道癌は手術の侵襲が大きいため、特に高齢者ではCK治療のよい適応となる場合がある。小病変であれば低線量で大きな有害事象もなく、長期効果が得られている(図3)。
 舌および下顎腫瘍に対しては、動きを抑制するためマウスピースを使用している。口腔外科にマウスピース作成を依頼し、装着した状態でCT、MRI、PET検査を行っている。粘膜病変は腫瘍の同定が困難な症例もあるため、各症例で有用な画像を選択し、治療計画に用いる必要がある。
 頸部リンパ節転移はPET検査を加えるとかなり小さな病変まで探しだすことが可能である。PETで陽性所見であっても、CTやMRIで確認できない病変は治療対象としていない。有痛性病変に対する除痛効果は高いが、画像的にCRとなる病変は必ずしも多くない。

3.再発症例に対するCK治療
 頭頸部腫瘍の125例(73.5%)は、CKまたは他放射線治療後の再発症例である。再発症例に対するCK治療では救済手術や化学療法などが既に行われている例が多く、長期的予後が得られる可能性は低いため、局所症状の改善によるQOLの向上が目的となる。通常は辺縁線量18~30Gy・3~5分割で治療を行っている。一時的には治療効果が得られるが、初回治療例に比べて境界不明瞭な病変や広範囲な病変が多く、これらでは周辺部再発が高率に認められる。初回治療と同様にfollow-upにPET検査を含めている。再発病変の放射線感受性が悪く、再照射による中心部壊死の発生など、初回治療時に比べて難治性となる例が少なくない。

4.有害事象
 最も多い有害事象は口腔粘膜炎であった。通常は治療後1~2週間で発生し、1~2ヶ月で改善する。口腔外科領域では長期化する例もあり、サルコイドーシスを合併した硬口蓋癌では改善に1年を要した。唾液腺障害で重篤なものは両側舌根部腺様嚢胞癌の1例のみであった。皮膚直下病変であっても接線方向の照射を用いることによって重篤な皮膚障害は回避できている。放射線治療歴のない症例においては、①唾液腺障害、②視機能障害、③皮膚障害を軽減できることが大きな利点であると考えられた。口腔粘膜炎も限局性であるが、化学療法との併用例などでは強く起こることも少なくないため、経過観察は丁寧に行う必要がある。CK治療では照射が終了してから有害事象が発生することがほとんどであるため、患者へのインフォームドコンセントだけでなく、紹介先の主治医に対する情報提供と十分な経過観察を依頼しておくことが重要である。

5.PET検査
 頭頸部腫瘍の治療においてPET検査は重要である4、6)。PET検査は可能な限りCK治療前に行い、治療計画に取り込み、fusion画像として直接活用している。CK治療では治療対象の描画が必須であるため、CTやMRIで造影効果が貧弱な腫瘍や境界不明瞭な病変では、FDGの集積が描画においての生命線となる。内視鏡検査で発見された喉頭癌の2例においては、PET検査では鮮明な高集積が認められるが、CTやMRIではほとんど判別できなかった。他臓器転移の検索、特に頸部リンパ節転移の有無を知るためにも、治療前にPET検査は実施しておくべきである。当院はPET検査機器を有していないため、PET施設に協力を依頼している。特に舌~下顎領域の腫瘍では、CK治療用の背板にマスクを装着した状態でPET検査を実施している。治療後も可能な限りfollow-upにPET検査を活用している。通常は年2~3回程度行っている。頭頸部腫瘍治療においてPET検査は有用であるが、特に口腔外科領域では齲歯や顎骨壊死などによる偽陽性所見に注意する必要がある。

6.自験例紹介
[症例1(図2)]
 67歳、女性。上咽頭癌。3年前に脳幹部出血の既往あり。低分化扁平上皮癌(T3以上N0M0)。標準的放射線化学療法を勧められるが希望せず。CK治療前PET検査にて2ヶ所の頸部リンパ節転移を指摘された。原発巣および頸部リンパ節転移にCK治療を実施。TS-1内服治療も併用。3年8ヶ月の経過で、原発巣は、治療後一部瘢痕状に残存しているがPR状態を維持しており、FDG-PETでも再発を認めていない。2ヶ所の頸部リンパ節転移はCRとなったが、初回治療から5ヶ月後、10ヶ月後、2年9ヶ月後、3年3ヶ月後にそれぞれ新たなリンパ節転移が出現し、CK治療の追加にてコントロールされている。2012年9月現在も上咽頭癌による症状は認めていない。長期的有害事象は認められていない。

図2 症例1 上咽頭癌 (左からa、b、c)
a 治療前:MRI-造影SPGR。b 3年8ヶ月後:MRI-造影SPGR。
c CK治療計画:体積42cc。辺縁線量30Gy・3分割・最大線量55.6Gy。

[症例2(図3)]
 84歳、女性。外耳道癌。T1N0。腎機能障害にて造影剤使用不可、手術化学療法も不可。CK治療を行いCRとなった。耳出血、聴力障害は改善した。治療後3年間再発はみられない。有害事象はgrade2外耳道皮膚発赤のみであった。頭頸部腫瘍としては(リンパ節転移以外では)、当院でCK治療を行った最小病変である。

図3 症例2 外耳道癌 (左からa、b、c)
a 治療前:MRI-T2強調画像。b 3年8ヶ月後:MRI-T2強調画像。
c CK治療計画:体積0.28cc。辺縁線量24Gy・3分割・最大線量35.3Gy。

[症例3(図4)]
 42歳、男性。上顎癌。腺様嚢胞癌
(T4aN0M0)。抗癌剤治療後NCであるため、摘出手術を実施。放射線治療は実施せず。2年8ヶ月後に再発を認めた。視機能温存を患者が希望、眼窩皮膚陥凹があるため皮膚障害回避、腫瘍の点在再発、放射線治療抵抗性腫瘍であるためCK治療紹介となる。1ヶ月の間隔を空けた分割CK治療を行った。6ヶ所の病変はCRまたはPRとなり、初回CK治療から1年間再発を認めていない。有害事象は一時的な眼乾燥感のみであった。

図4 症例3 腺様嚢胞癌 (上段左からa、b、c。下段左からd、e、f)
a、b、c 治療前:MRI-造影SPGR。d、e、f 4ヶ月後:MRI-造影SPGR。
左眼球隣接腫瘍CK治療計画
1回目CK治療:体積6.2cc。辺縁線量20Gy・5分割・最大線量40Gy。
2回目CK治療(1ヶ月後):体積4cc。辺縁線量20Gy・5分割・最大線量30.8Gy。

[症例4(図5)]
 37歳、女性。耳下腺多形腺腫。3回の摘出術後の再発。化学療法は原発、肺転移共に効果なし。肺転移により全身麻酔困難であり摘出術は不可、標準的放射線治療では効果期待できず、患者は美容的改善を希望しての紹介であった。間隔を空けての3回分割でのCK治療を行いPRとなった。顔面痛も消失した。皮膚障害は発生せず、一過性の口腔粘膜炎、口腔内乾燥、眼乾燥感が起こったが治療を必要とせず改善した。3回のCK治療で350ccの体積が150ccと縮小した。初回CK治療から8ヶ月後左眼窩下部に再発病変が出現し、追加治療を実施。その後肺転移が進行し、初回CK治療から1年後に他界した。当院でCK治療を行った最大の腫瘍である。

図5 症例4 耳下腺多形腺腫 (上段左からa、b、c。下段左からd、e、f)
治療前:a 腫大した左顔面腫瘍、b MRI-造影SPGR、c FDG-PET。
8ヶ月後:d 腫瘍退縮、e MRI-造影SPGR、f FDG-PET。
CK治療計画
1回目:体積354cc。辺縁線量20Gy・10分割・最大線量 39.2Gy。
2回目①(1ヶ月後):体積307cc。辺縁線量12Gy・6分割・ 最大線量23.5Gy。急激な体積減少のため治療計画 再作成。
2回目②:体積193cc。辺縁線量8Gy・4分割・最大線量 15.7Gy。
3回目(2ヶ月後):体積144cc。辺縁線量20Gy・5分割・最 大線量33.7Gy。

[症例5(図6)]
 64歳、男性。舌癌。扁平上皮癌。摘出手術を希望せず。仕事を継続できる治療を希望。PET検査にて頸部リンパ節転移1ヶ所と重複癌(大腸癌)が認められた。原発巣および頸部リンパ節転移はCRとなり、3年6ヶ月再発を認めていない。大腸癌は後日、内視鏡的摘出術を施行。有害事象としては、一過性の唾液分泌低下と、治療後2~3週で口腔内粘膜炎による経口摂取困難がみられた。口腔粘膜炎は4週以降改善していった。

図6 症例5 舌癌 (上段左からa、b、c。下段下からd、e、f、g)
a 治療前。b 3週間後:粘膜炎増悪期。c 3ヶ月後:回復期。
治療前:d MRI-造影SPGR、e FDG-PET。
21ヶ月後:f MRI-造影SPGR、g FDG-PET。
CK治療計画
舌癌:体積7.5cc。辺縁線量30Gy・3分割・最大線量41.7Gy。頸部リンパ節転移:体積1.1cc。辺縁線量33Gy・3分割・最大線量46.5Gy。

疼痛治療
1.放射線治療

 放射線治療は多くの癌に伴う局所の症状改善に有効な手段である。癌疼痛治療における放射線治療としては、有痛性骨転移に対する有効性が最もよく知られている。日本では30Gy・10回分割が広く使われているが、20Gy・5回分割や8Gy・1回照射でも疼痛緩和効果は同等である8)。通常の放射線治療による症状改善は照射開始後1~2週で出現し、4~6週で最大効果が得られる2)。骨転移以外でも痛みの原因が局所の腫瘍による場合は放射線治療の適応となる可能性がある。脳転移による頭痛、神経や軟部組織への腫瘍の浸潤に伴う痛みなどは責任病巣が明確であれば、放射線治療にて改善が期待できる。オピオイドが効きにくい神経因性疼痛や突発痛にも放射線治療は有効である2)。

2.サイバーナイフ治療
 疼痛に対するCK治療は、以下の点が通常の放射線治療に比べて優れている点と考えられる。
(1)早期に治療を開始することが可能であること。
(2)治療開始から短期間で治療効果が得られること。
(3)標準的放射線治療の効果が不十分な症例でも効果が期待できること。
(4)治療期間が短いこと。
(5)放射線治療歴がある再燃病変でも照射可能であること。
 問題点は、①1回の治療時間が長いこと、②長期的には再燃例もみられること、③治療期間が終了してから有害事象が生じることである。自験例や報告例などから考えると、癌による疼痛の緩和におけるCK治療の最大の利点は数日レベルの早期治療効果である。

3.脊椎腫瘍
 当院では、脊椎・脊髄腫瘍に対しては152例・183病変の治療を経験した。はっきりとした疼痛を認め、その責任病巣が明確であったものは79病変であった。病変部位は頸椎(20例:25.3%)、胸椎(34例:43.0%)、腰椎(6例:7.6%)、仙骨・腸骨(11例:13.9%)、脊髄(8例:10.1%)であり、治療は1~5分割で実施した。治療最終日までに疼痛が軽減したものは全体で71病変(89.9%)であった。有害事象としては、化学療法を併用していた多発脊椎転移の2例においてCK治療が終了してからの骨髄抑制が認められた。
 Leeらは、CKによる脊椎転移に対しての治療で、治療開始から7日以内に88%の病変で疼痛が軽減し、51%では疼痛が消失したと報告している5)。Ryuらは、CK以外の機器で脊椎転移に対する1回照射の定位放射線治療(10~16Gy)を行い、平均14日(最短24時間)で46%の疼痛が消失し、1年後の疼痛緩和率は84%であったと報告している7)。定位放射線治療の早期治療効果は自験例のみならず、論文報告からも示されている。

4.頭蓋底腫瘍
 脳腫瘍による強い脳浮腫に伴った頭痛の多くはステロイドなどの抗脳浮腫薬でも改善が期待できるが、頭蓋底腫瘍や頭蓋底骨転移による激痛に対する効果は期待薄である。
 中頭蓋窩~海綿静脈洞腫瘍では強烈な顔面痛を訴える症例が少なくない。自験例では強烈な顔面痛を伴う中頭蓋窩転移性脳腫瘍の5例に対して、辺縁線量23~33Gy・1~3分割でCK治療を実施した。2例はオピオイドが既に処方されていた。4例で数日以内の顔面痛の消失が得られたが、膵臓癌原発の1例は消失までに1ヶ月近くを要した。
 頭蓋底骨転移では後頭顆症候群(頭痛+舌下神経麻痺)などの頭痛と神経症状が合併したような症例でも、CK治療により短期間で両症状の改善が認められる。後頭顆症候群を呈した自験例転移性頭蓋底腫瘍4例中2例はCK治療終了時に頭痛は消失しており、1例はVAS=5に軽減し、1ヶ月後には全例頭痛は消失していた。舌下神経麻痺も3例は治療終了時には改善傾向がみられ、1ヶ月後には全例回復していた。標準的放射線治療では頭痛の改善は期待できるが、舌下神経麻痺の改善は難しいと報告されており3)、CK治療では神経症状の回復も期待できることが示された。
[症例6(図7)]
 68歳、女性。乳癌よりの両側後頭顆転移。症状は回旋時に増強する強烈な頭痛、呂律難、嚥下障害、両側舌下神経麻痺(後頭顆症候群)。両側転移巣に対するCK治療を3日間で実施。治療最終日には頭痛は消失し、嚥下と呂律難も少し改善。1ヶ月後には舌下神経麻痺は回復し、嚥下、呂律難とも正常となった。

図7 症例6 頭蓋底骨転移(後頭顆症候群)  (上段左からa、b、c。中段左からd、e、f。下段左からg、h、i)
治療前:a、b、c、両側舌下神経麻痺による萎縮。 1ヶ月後:d、e、f、両側舌下神経麻痺改善。
g 治療前CT:骨融解を伴う両側後頭顆転移。
h CK治療計画(左後頭顆):体積1.1cc。辺縁線量33Gy・3分割・最大線量46.5Gy。
i CK治療計画(右後頭顆):体積7.5cc。辺縁線量30Gy・3分割・最大線量41.7Gy。

5.皮下腫瘍
 CKでは多方向からの自由度の高い照射が可能であるため、接線方向の照射を用いて皮膚線量を下げることができる。疼痛に関してはCK治療終了までの早期の効果が得られた。皮膚穿孔による出血例では、低線量照射により一時的ではあるが止血が可能であった。
[症例7(図8)]
 67歳、男性。神経内分泌肺大細胞癌頭皮下転移。脳転移に対して2回のガンマナイフ治療、3回のCK治療、2回の開頭腫瘍摘出術を行っている。1ヶ月程度で頭頂部が急激に膨隆し、激しい疼痛を伴うようになった。頭皮下転移に対してCK治療を5日間で実施。2日目にはVAS=8となり、最終日には疼痛は消失した。

図8 症例7 転移性頭皮下腫瘍  (左からa、b、c)
治療前:a 頭皮膨隆、b MRI-造影SPGR、c CK治療計画:体積35.6cc。辺縁線量25Gy・5分割・最大線量51.0Gy。

6.放射線治療無効症例
 初回放射線治療のboost照射目的で紹介された頭頸部腫瘍8例中、2例は標準的放射線治療無効例であった。共に原発不明癌の強い痛みを伴うリンパ節転移であった。
[症例8(図9)]
 82歳、男性。原発不明癌。頸部リンパ節転移。50.4Gyの通常照射および抗癌剤を使用するが外観上はNC。激しい疼痛と皮膚穿孔直前の腫大がみられ、コントロール困難で紹介となる。5分割・7日間でboostとしてCK治療を実施。治療最終日にはVAS=6程度に疼痛は減弱。1ヶ月後には疼痛は消失した。腫瘍自体は縮小したが、皮膚障害が認められた。

図9 症例8 頸部リンパ節転移 (上段左からa、b。下段左からc、d)
治療前:a MRI-造影SPGR、b 右頸部隆起性腫瘍。
1ヶ月後:c MRI-造影SPGR:腫瘍縮小、d 腫瘍縮小、皮膚潰瘍(+)。
CK治療計画 体積194cc。辺縁線量15Gy・5分割・最大線量27.3Gy。

結語
 頭頸部腫瘍および疼痛緩和におけるCK治療について述べた。更なる治療データの蓄積と共有によって、CK治療が個々の患者にとって有益な選択肢となることを期待している。

<文献>
1)Adler JR et al: The Neurotron 1000:A system for frameless stereotactic radiosurgery. Perspectives in Neurological Surgery 5: 127-133, 1994
2)Agarawal JP et al: The role of external beam radiotherapy in the management of bone metastases. Clin Oncol(R Coll Radiol) 18(10): 747-760, 2006
3)Greenberg HS et al: Metastasis to the base of the skull:clinical findings in 43 patients. Neurology 31(5): 530-537, 1981
4)Kovalchuk N et al: Deformable Registration of Preoperative PET/CT with Postoperative Radiation Therapy planning CT in Head and Neck Cancer. Radiographics 32(5): 1329-1341, 2012
5)Lee S et al: Pain relief by Cyberknife radiosurgery for spinal metastasis.Tumori 98(2): 238-242, 2012
6)Rajagopalan MS et al: Role of PET/CT imaging in stereotactic body radiotherapy. Future Oncol 6(2): 305-307, 2010
7)Ryu S et al: Pain control by image-guided radiosurgery for solitary spinal metastasis. J Pain Symptom Manage 35(3): 292-298, 2008
8)Wu JS-Y et al: Meta-analysis of dose-fractionation radiotherapy trials for the palliation of painful bone metastases. Int J Radiat Oncol Biol Phys 55(3): 594-605, 2003