見直された国民線量

2012.09.27

見直された国民線量
放射線医学総合研究所緊急被ばく医療センター
鈴木敏和
 
 生命の誕生に紫外線や放射線のエネルギーは大きな役割を果たし、人類も放射線とかかわりながら進化を続けてきた。そして、化学物質や活性酸素、紫外線などと同じくDNAに損傷を与える放射線についても、ヒトはその損傷修復機能を獲得してきた。
 このように深く人間生活とかかわる放射線であるが、ごく最近まで、我が国で放射線と言えば、レントゲン撮影、原爆、原発程度の連想しか与えない存在であった。
 それが、福島第一原発事故を契機として身近な存在として認識されるようになると、量的判断基準を持たない多くの国民は、錯綜する情報や不正確な報道により不安感を煽られる結果となった。
 そのような中、2011年12月に19年ぶりの国民線量見直しが行われた。
 国民線量とは、日本国民1人当たりの年間平均実効線量である。これは「医療被ばく」「自然放射線」「諸線源による被ばく」「核実験フォールアウト」「職業被ばく」「原子力・RI関連施設による公衆被ばく」の6カテゴリ合計の線量で、その99.8%を「医療被ばく」と「自然放射線」が占めている。
 本章はその数値と算出根拠を取りまとめたもので、放射線に対するひとつの判断指標を与えることを目的としている。
 
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